「校長室に呼び出されちゃったよ、、、。」
今日、放送で校長室に呼び出されちゃったよ、、、。
学校から帰ってきた息子がいきなり物騒なことを言う。
「いったい何をやらかしたのか?」、いや、そもそも息子は素行が悪いタイプではない。「何があったの?」と聞くと、意外な答えが返ってきた。
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ビデオプロダクションの先生の授業中の発言についての聞き取りだった
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具体的には、その先生が授業中にNワードを言ったかどうかの確認だった
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自分以外にも同じ授業の生徒が数名、個別に呼ばれていた模様
「えっ、授業中に教師が生徒にNワード!?そりゃまずいんじゃない」、というのが私が息子の話を聞いてぱっと思ったこと。
Nワードについては、補足は必要ないかもしれないが、いわゆる黒人に対する差別的な表現だ。ここでの詳述はあえてさけるが、知らない方はこちらのリンクをどうぞ。
先生に下された「一発レッドカード」
その先生は、長年ビデオプロダクションの授業を担当していた大ベテラン。だが、結局その一度の失言が致命傷となり、残念ながら先生はしばらくの謹慎期間を経て、あえなく解雇となってしまった。まさに「一発レッドカード」である。
確か一学期も終わっていない時期の出来事だ。テーマの特殊性からかその後正教の先生が配置されることはなく、だましだまし代教の先生が代わる代わる来て授業を進めたらしいが、授業の体はなしてなかったとの息子談。
また、授業時間中にガンモーション(銃を打つジェスチャー)をしたフランス語の先生が3ヶ月停職処分後に復帰はしたものの、ある日忽然と姿を消してしまった、という話も聞いた。教員の問題行動での解雇は、アメリカではどうやら珍しくない話のようだ。
「差別教育」への世代間格差
子供の頃からアメリカの教育を受けている娘と息子が声をそろえていうのは、アメリカの人種差別の歴史に対する授業は、現代の若者の視点からすると過剰とのこと。色々な物語を散々読まされ、いかに人種差別はいけないことなのかを、熱っぽく、徹底的に教え込まれるらしい。毎年同じような授業を同じような熱量で受けている生徒からすると、「もうわかっているからいいよ」という感じらしい。
そのくらい社会として差別に対して敏感で、教育現場でも力をいれているというのは素晴らしいこととは思う。が、息子と話していると、黒人の生徒同士では「What's up, Nigga」のような表現はよく交わされている模様。一周回って市民権をえた印象を受ける。先生も時代の変化に流され、口が滑ってしまったんだろうか。
アメリカの「ゼロ・トレランス」
アメリカ企業ではコンプライアンス違反で社員が一瞬で消えたように解雇されることは時として見るシーンであるが、それは学校であっても同じ模様。アメリカには「ゼロ・トレランス」という言葉があるが、まさにそれだ。差別的な発言を一度でもやったら即退場。事情も意図も情状酌量の余地は一切ない。
が、先生が解雇された後、まともな授業がされることはあまりなく、「ゼロ・トレランス」のとばっちりで、生徒は無為な時間を過ごすことになってしまった。
私が小学生の頃の昔話
そんな、息子のエピソードを考えながら、ふと自分の子どもの頃の出来事を思い出した。私は中学受験をするために、小6の時に塾に通っていた。その際の算数の先生が熱血指導で、痛いげんこつを頭にくらうことがしばしばあった。おまけに、先生はそのげんこつに「ヘッド」という技名までご丁寧につけておられた。先生が生徒を前に呼びだして、「ヘッド!」と叫びながら頭にげんこつを浴びせる、今からは想像できない光景が日常的にあり隔世の感がある(なお、無事志望校に合格し、合格体験記に「先生の痛いげんこつも今となっては良い思い出です」と書いたが、一般に公開された合格体験記には「先生の厳しい指導も今となっては良い思い出です」と修正されており、大人の世界の理屈もあわせて学んだ)。
まとめ
物理的な暴力行為にまで今の時代に及んだ場合は流石に情状酌量の余地はないが、生徒同士が日常的に使うNワードを、先生が生徒に使ったら一発退場というのは、私は厳しすぎると思う。
「ゼロ・トレランス」は「差別を絶対に許さない」という社会の意思の表れではある。が、それが「断固たるリーダーシップの証」のように捉えられ、「容赦なく処罰しさえすれば良い」と形骸化してきている、というのが何度となくそういうシーンを見たり、話を聞いたりした私の実感だ。学校教育においては一番大事なのは、教育現場から差別を無くし、どの子どもにも質の高い教育を受ける環境を整えることではないのか。処罰の結果、授業がまるまる自習時間になっては本末転倒だ。
締め付けが必要以上に厳しくなったり、その反動でやたらとゆるくなったり、いったりきたりするのはアメリカ社会でよくあること。それでも、一歩づつ住みやすい社会に前進していると願いたい、息子の学校の話を聞いたり、民主党と共和党政権で揺れ動くLGBTQなどを見て、そんなことを考えた。