”……未来を犠牲にしてどうする!?
今、多少の犠牲を払ってでも、
未来を生きる、あの子たちのために……!!”

採取された怪獣細胞が海外に横流しされている……
日本固有の怪獣であるシャゴンの細胞が横流しの過程で押収されたことで事実が発覚し
その裏にSKIP本部職員の関与が疑われる……と言うことで、防衛隊情報部の依頼により
リン先輩がかつての恩師でもある山神サトルに接触を図り、そんな再会の過程において
哀しくも残酷な事件の真相を知ることになる――と言うのが今回の大筋。
現在のSKIP職員としての道を開いてくれた山神に、リンが単なる同分野の先達としての
尊敬の念だけではないほのかな思慕と好意を抱き続けていたこと、そんな山神の本質は
怪獣細胞の外部流出と言う形で道を誤りはしたものの、初めてリンと出会った頃から
決して何も変わってはいなかったこと、それが故にお互いがすれ違い、ラストでの
「美しくも悲しき別れ」に至らざるを得なかった「今」の残酷さ。
それら登場人物の思いについては明確な説明台詞こそないものの、山神が嘘をつく時の
「自分の顎に手を触れるクセ」の描写や、演者である水谷果穂・池田努両氏による
表情の隅々にまで神経が行き届いた繊細な演技、それらを的確に掬いあげてみせる
湯浅演出によってメイン視聴者たる児童層にも分かりやすく提示され、リンと大神の
それぞれの「心の襞」や、時として万事めでたしのハッピーエンドだけでは終わらない
現実の世界の理不尽さや難しさなどを「怪獣のいる世界」ならではのドラマとして
視聴者に垣間見せてくれました。
「さよなら、リン」。
今回のこのサブタイトルは、他でもないリン自身が自らに向けたことば……
優しく、幸福だったひとつの時代との訣別を強いられ、それでもしっかりと前を見据え
歩いていかねばならない「今」の自分へのひとつのけじめだったんでしょうね。
で、一人涙するリンに対して慰めと励ましの声をかけるのが、AIロボであるがゆえに
人情の機微とか、空気を読むとかを一切しなくても許される立場のユピーなのが
今話の場合、また良いんですよねぇ――
……あ、これ、かなり褒めていますよ(笑)?
で、そんなっ見ごたえある人間ドラマの一方では、どうしても今回のゲスト枠である
ネロンガとパゴスの存在は一歩後方に引く形となりますが……逆に今回の主眼である
「リンと山神の再開と別れ」のドラマに注力する上で、その生態だったり設定などを
ゼロから掘り下げていく必要がない既存怪獣がセレクトされるのは、半世紀超に渡る
シリーズ作品の積み重ねをも武器に出来る「ウルトラ」ならではの特権ですし……
また、そんな感じでドラマの後方に一歩引いたからこそ、変な設定の「盛られ方」や
道化めいた演技、あるいは新怪獣や新武器のための「噛ませ」に堕することもなく
ネロンガもパゴスも、このアンバランスな世界観における自然のサイクルの一部として
いぶし銀とも言うべき渋さの堂々たる存在感を放っていたのは嬉しいところでした。
で、そんな風に…
ある意味では『アーク』が強く意識し、随所でリスペクトを捧げている『帰マン』的な
人間ドラマ志向の極めつきとも言える今回で、もう一方の本質「空想科学ドラマ」の
独自の楽しさをも乖離させず、むしろ登場人物らの日常台詞の中へ巧みに盛り込んで
視聴者のイメージを心地よく膨らませ、くすぐってくれるのが本作の良いところ。
小学館学年誌の特集記事を彷彿させる「怪獣の力を社会に役立たせるための研究」や
ネロンガに過充電を起こさせて捕獲する作戦の決め手となったのが4話ネズドロン回の
ダイモードの存在であったり、パゴス、ネロンガ、ガボラ、マグラらの怪獣たちの祖は
同一の怪獣である(!)らしいということが分かりかけていると言う下り、更に1話の
鎧甲殻獣シャゴンが日本固有の怪獣であると言うユウマの台詞で、台詞中に込められた
イメージの豊潤さと情報量は「ドラマより怪獣派」でも耳が離せません(笑)。
「怪獣のいる世界」にもそれぞれの人生があり、笑顔もあれば涙もある。
そんな事実を様々な形で突きつけながら、順調に話数を重ねている『アーク』……
だからこそ、次回もまた目が離せないのです。
……えぇ、なんたって次回は待望のノイズラー回でもあることですし(笑)!!