”「万が一の可能性」も潰す。
それが私たちの仕事なんです”

1~3話までの設定紹介編を経て、展開編へと突入の『ウルトラマンアーク』。
昔ながらの人情味を色濃く残した星元市の商店街における、ユウマ&リン先輩と
お弁当屋のおばちゃんとの何気ない会話……から始まっての、不意の停電騒ぎが
予期せぬ怪獣事件へと繋がっていくことに。
この「地に足の着いた」描写ですとか、戦闘そのものを旨としない対怪獣組織の
そのまた「分署」と言うミニマムさゆえに、毎回の異常事態への対応に関しても
融通の利かないお役所仕事ではない、よりスピーディーに小回りを効かせた対応を
可能とする、『アーク』世界ならではの設定の楽しさとリアリティ。
地域密着型と言いますか、行政における「怪獣すぐやる課」的柔軟対応と言いますか。
こう言うより身近な「対怪獣対応チーム」と言う事ですと、円谷プロ作品では既に
シリーズの原点『ウルトラQ』における民間レベルでの怪獣事件との対峙であったり、
1972年放映『緊急指令10-4・10-10』の電波特捜隊(毛利チーム)などと言った
優れた先例がありますので、それらとの類似点や差別化、発展性などをも比較しつつ
今後の展開を噛みしめてみるのもまた一興かと……
……って、すぐにそうやって過去作品との類似性などを持ち出して比較したがるのが
なまじ年だけ食ったファンの短所でもあるんですが(苦笑・赤面)。
で、そう言った「より身近で、地に足の着いた世界観」の中だからこそ
SKIPにおけるユウマの先輩職員である夏目リンさんの気さくで前向きな明るさと
仕事に対する責任感の強さも単なる設定上のお題目にとどまらず、より確かな
手ごたえを伴って視聴者たる我々の胸にも響いてくることとなり……
そんな人々の暮らす日常がしっかり描写され、かけがえのないものとして在るからこそ
明るく楽しい日常に鋭い亀裂を入れて来る怪獣の存在感と異質さも、よりくっきりした
キャラクターとしての輪郭を伴っての確かな輝きを放ちます。
で、そんな今回のゲスト怪獣たるネズドロン。
電気をエネルギー源とする新種のネズミが星元市内・カワミ重工の内部に
巣を作って住み着き、同社の新型エネルギー炉における電力発生源である
ダイモード鉱石(この文芸に思わずニヤリとしたウルトラファンも多いんじゃ
ないでしょうか)と細胞レベルでの融合を果たすかたちで巨大化……
「電気+ネズミ」と言う設定から、やはりどうしても国民的人気ゲームの
あの人気キャラが思い浮かんでしまったり、最初に発表されたスチールでの
愛興味のあるルックスなどが相まって、やけにソフィスティケートされた
「可愛い」イメージの強かった怪獣ではありましたが、なかなかどうして
本編中での丁寧な演出と描写によって醸し出されてくる、架空静物としての
「らしさ」と怖さはなかなかのもの。
それでいて背中に融合したままの電力供給ケーブルが幾度となく突っ張って
その長さ以上には前進できず幾度もすっ転んでみたり、ただ単に生々しくて
「怖い」だけではない愛興味の絶妙な盛り込み具合もまた、土曜日の朝に
家族揃って見る番組に相応しい節度で好印象です。
そして、そんなネズドロンを倒すため……
かねてよりその存在がアピールされていたアークの新装備、太陽の力を秘めると言う
ソリスアーマーが初登場!
ネズドロンの突進をものともせず、怪力によってこれを押し返す……と言う描写が
より一層の説得力とカタルシスを伴って響いてくるのは、とりも直さずその前段となる
アークとの戦いにおいて、アークのキックやチョップをまともに受けてもびくともせず
逆にアークの方が痛みを感じてしまうほどの「固さ」や、アークの張った光のバリアを
ことごとく突進によって粉砕してしまうと言う「パワー」の描写がしっかりとなされ
ソリスアーマー登場の際の前振りとしてしっかり効いていればこそ。
ヒーローの強力さや新能力・新技のインパクトなどを視聴者に実感されてくれるのは
文芸面での設定や数値などではなく、ひとえに各パートでの連携で仕掛けられた
描写の丁寧さと綿密さである、と言うことでしょう。
それはさておき、アークが「想像力を解き放」って様々な驚きの技を見せる前段階、
ヒーローが体ごと首を大きく傾げる仕草は「アークトリッキーテクニック」と言う
公式設定がついているそうなんですが……最初は正直違和感を禁じ得なかったコレも
4話まで見続けると、だんだん慣れて馴染んでくるもんですね(笑)。
「おお、いよいよアークの反撃来るか!? 待ってました!!」的な高まりもあり、
また同時に子どもさんたちのごっこ遊びに取り入れやすい明快さもありで。
「想像力」と言うキーワードでの飛翔を、最高のときめきとカタルシスで描くがため
逆説的に、地に足の着いた日常描写や怪獣描写の丁寧さが光る『アーク』。
本編の基調たる明るい前向きさを決してお題目だけの上滑りなものにせず、同時に
本作での怪獣たちをより魅力的に見せる意味でも、これは喜ばしい傾向だと思います。