

寒く、厳しいのは、もはや毎度のことである北海道の冬。
降り積もり、永遠にその場所にありつづけるかのようにも見えた雪の壁も
3月も半ばに差し掛かると、目に見えて急速に溶け去りつつあった。

そう、暦の上だけのことではなく……
北のさいはての地も、ようやく名実ともに春を迎えることとなったのだ。

そんなわけで、ここ・千歳市ほんわか町5丁目にある「宙マンハウス」もまた
何時にも増して、のんびり、ゆったりな空気に包まれていた。
だが、その一方で……
航空防衛隊・千歳基地の動きは、俄かに不穏な慌ただしさを見せていた。

爆音を響かせ、編隊を組んで、次々に飛び立っていくジェット戦闘機。
その勇壮な飛行っぷりは、「宙マンハウス」の庭先でも容易に見てとれた。

ピグモン「あっ、防衛隊のヒコーキなの!」
ビーコン「訓練飛行っスねぇ、やってるやってるっス!」
落合さん「でも……それにしては、しょうしょう仰々し過ぎませんかしら?」

宙マン「うん、それは私もそう感じたよ。
何て言うのかな……殺気がこもってる、って言ったらいいかな?」
ビーコン「殺気……つーことは、今感じても、さっき!?」
落合さん「(ジト目)おバカなこと仰ってるんじゃありません、ビーコンさん。
それはさておき……ではまた、どこかに怪獣出現の気配が!?」

宙マン「かもしれないね。
……気になるんで様子を見て来る、夕飯までには戻るよ!」
ビーコン「おりょりょ、唐突っスね、アニキ!」
落合さん「お気をつけて行ってらっしゃいませ、お殿様!」

穏やかな春風の中、全速力の宙マン・ダッシュ!
自動車をも上回るスピードで駆け抜け、戦闘機隊の向かっていった方角へと
疾風のように突っ走っていく我らがヒーロー。

そして、そんな宙マンの向かった先……
千歳市郊外の山中で、今まさに怪獣軍団の悪企みが始まろうとしていた。
そう、「悪い予感」はまさに的中したのであった!

イフ「さぁ、今こそ立ち上がれ、怪獣軍団の勇猛なる戦士よ!
北海道を最初の足掛かりに、地球を征服する時は今ぞ!
行け! 行け、行けーいッ、宇宙凶険怪獣ケルビムよ!」

ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
怪獣魔王の不気味な声が響き渡るとともに……
山奥の原野に、時ならぬ局地地震が沸き起こる。
大地を引き裂き、煙を吹き上げ、地中から巨大な姿を現したのは!?

「グァウウウ~ッ!!」

イフ「おおっ、元気いっぱいではないかケルビム、実に良いぞ!
早速だが、今、お前が成すべきことは……」

ケルビム「グァウウ~、判っておりますともさ、魔王様!
このケルビム様の力で、今度こそ千歳の街を瓦礫の山に――」
「おおっと待った、そうはさせないぞ!」

ケルビム「(驚き)グァウッ、だ、誰だ!?」

不意に響いてきた凛たる声に、慌てて振り返るケルビム。
体操選手顔負けの空中回転とともに現れたのは……
勿論この男・宙マンだ!

ケルビム「ちゅ、宙マン、どうしてここに!?」
宙マン「胸騒ぎがして来てみたら……案の定、またまた怪獣軍団か!」

宙マン「いい加減に懲りて、大人しく暗黒星雲に帰ったらどうなんだね。
(ボソッと)……どうせ、今回もまた失敗する悪企みなんだし!」
ケルビム「グガァーッ、こいつムカつく! 「どうせ」とか言いやがったぞ!?」

ケルビム「そうまで言われちゃ、俺様も黙って退くわけにはいかねェんだよ。
オラ、さっさと巨大化しやがれ、ケルビム様と勝負しろィッ!」
宙マン「ああ、いいだろう、受けてやる!
宙マン・ファイト・ゴー!!」

閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
さぁ、今日もまた正義の味方のお出ましだ!

ケルビム「グガァーッ、出たな! ギッタギタにしてやるぜ!」
宙マン「なんの、今日もまた返り討ちだ――
夕飯までには帰る約束だからね、そう悠長にもしてられないんだよ」
ケルビム「ナメてるな? ナメてんな、この野郎っ!?」

ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ!

真っ向激突、宙マン対ケルビム!
北海道の原野を舞台に、巨大な両者の攻防戦が凄絶なる火花を散らせる。

持ち前の獣性を全開に、荒々しく宙マンに迫ってくるのはケルビム。
その牙を、爪をかいくぐりながら、宙マンは務めて冷静さを保ちつつ
相手の隙を伺い、果敢に敵の懐へと飛びこんでいく。

ケルビム「グァウウウ~、どうよ宙マン!
これでもまだ、さっきみてェな軽口が叩けるか!?」
宙マン「いいや、まだまだ……その程度で倒れる私じゃない!」
ケルビム「(ムカッときて)……野郎っ!!」

鋭い舌鋒でケルビムを挑発し、相手を怒らせる――
そこに生じた隙を突くことこそ、もとより宙マンの狙いなのだ。

猛然と怪獣めがけて躍りかかり、反撃へと転じる宙マン。
だが――そうやすやすと叩きのめされるようなケルビムではなかった!

ブァウンっ!
破壊的な威力を秘めた、ケルビムの“超音速クラッシャーテイル”が唸る!

星球状の物騒なコブが、二度、三度と宙マンを叩きのめし……
ついに、全身に受けたダメージで地面に倒れこんでしまうヒーロー。

宙マン「う、うわぁぁぁぁ……ッ!」
ケルビム「グァウウウ~、どんなもんだィ宙マン!」

スライ「ほほう……なかなかやりますねェ、ケルビム君!」
ジャタール「今度こそは……期待してよさげな感じ、ですかねぇ!?」
イフ「よしよし、その調子だケルビム!
今度こそお前のその力で、恨み重なる宙マンにとどめを刺すのだ!」

宙マン「(苦悶)うう……う、ううっ!」
ケルビム「グァウウウ~、お前のドタマ、かち割ってやるぜ!」

とどめの一撃を、宙マンめがけて叩きつけんと迫るケルビム。
だが、そんな危機切迫の中でこそ……
我らがヒーローの闘魂もまた、メラメラ燃え盛る!

「なんの……負けて、たまるかっ!」

空間そのものを湾曲させて形成する防御壁、宙マン・プロテクション!
“超音速クラッシャーテイル”の一撃を、見事に無力化してみせる。
ケルビム「グァウウウ~、野郎っ、味な真似を!」

ケルビムの口から、断続的に吐き出される“弾道エクスクルーシブスピット”。
だが宙マンは、三千度の火球攻撃をひらりとかわして大空へ!

ケルビム「ぐ、グァウウウっ!?」
宙マン「正義の刃、受けてみろ!
秘剣・スーパー滝落とし!!」

ザシュウッ!!

スーパー剣を抜き放ち、刀身にエネルギーを集中させ……
豪快な空中回転とともに、真っ向から振り降ろされる光の刃!
宙マンの「滝落とし」が、大怪獣ケルビムを唐竹割りに切り裂いた。

ケルビム「グァウウウ~、ムカつくほどに……強すぎるぅぅ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!

ジャタール「ああっ、ケルビムが!」
グロッケン「惜しかった、あと一歩のところだったのによォ!」
イフ「ぐぬぬ……おのれ宙マン、次はないぞ! 覚えておれ~っ!!」
……などと言う、怪獣軍団の負け惜しみはさて置いて。

かくして、我らが宙マンの活躍によって、山奥に出現したケルビムは
その野望もろとも粉砕され、千歳襲撃は未然に防がれたのであった。
そして、ケルビムとの戦いを終えた宙マンの前に姿を見せたのは……。

「あれれっ、誰かと思ったら宙マンさんじゃないですか。……
……この近辺に怪獣反応があったので出動したんですが、お怪我は!?」
宙マン「ご心配なく、怪獣ならもう私がやっつけてしまいましたよ。
お仕事、いつもお疲れ様です!」
「(苦笑)たはは……ご丁寧に、痛み入ります!」

航路を変更し、そのまま千歳基地へと帰還していく戦闘機隊。
遠ざかるそれらのシルエットを、静かに見送りながら――

宙マン「よしっ、私も帰ろう。
……ふふ、今夜のおかずは何だろうなぁ~!」

瑞々しい生命の萌え出ずる季節……
だからって、悪い怪獣はご勘弁。
頼むぞ宙マン、さァて次回の活躍は!?