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雫の冠

 

 

『まゆ、Wake Up,Girls!らしさって何だと思う?』

 

 

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 「水の輪が広がってく わたしの心のなか」

 弦の音色が響く。二人ずつ、花道をゆっくり歩みながら丁寧に声を重ねて繋いでいく。

 会場全体を見渡す。広いなあ。照らしてくれる光よりも、暗闇に視線が吸い寄せられる。わたしたちの力じゃ、ここを満天の星空にはできなかったな。

 今年で4回目となる冬の幕張。恒例、だけど当り前じゃないこの景色。 

 ふと、この1年間の出来事が頭を巡りだす。これが走馬灯ってやつ?まさかね。

 新章という光を目指して、信じて、前だけを見て、ただ只管にみんなと駆け抜けた2017年が、蘇る。

 

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 「アイドル、やらせてください!」

 アフレコブースのマイクの前、震える手で台本を持ちながら発したセリフ。これがわたしのはじまり。舞台「青葉の記録」により、わたしたちの2017年は原点回帰から始まった。舞台は初挑戦となるメンバーもいたけど、全員が自分のキャラクターともう一度向き合って、今しかできない七人のアイドルを届けることができた。わたしたちの名前が初めてエンドロールに流れた劇場版が公開されてから約3年。あれから変わったところも、変わらなかったところもあったけど、やっぱりわたしたちは7人でWake Up,Girls!なんだって改めて実感させてもらえたな。声だけじゃなくて全身で島田真夢ちゃんを演じることで、あの頃は見えなかったことに気付けたり、より深く彼女に向き合うことができた気がする。これが、新章に向けてわたしたちの最初の助走になったんだ。

 

 「憧れの方へ」

 声優ユニットとしてWUGが切り拓いていった新しい挑戦、アニメタイアップの道。WUGが作品を離れてアーティストとして他のアニメ作品の曲を歌うことに、最初は凄く不安だった。それでも変わらずに受け入れてくれたワグナーさんに背中を押され、今はこれも『わたしたちらしさ』なんだと思えている。

 今年、美海からバトンを受け取ったのは吉能。日替わりのプリンセスです~なんて歌っていたWUGちゃん、実際にみんながそれぞれ自分の強みを見つけて活かして、毎日どこかで輝いて、その中でワグナーさんの輪も少しずつ広がっていくのを実感できたんだ。

 そんな風に繋いでいったタイアップのバトン、最後に受け取ったのは、まさかまさかのMay’nちゃん!凄いよね!あのMay’nさんと、MVでお揃いの衣装で一緒に歌って踊って。中学生の頃のわたし、見てる!?奇跡レベルの出会いに沢山恵まれた一年を象徴するビッグサプライズでした。

 そういえば、Wake Up, May’n!としてアニメロサマーライブでもステージに立つことができました。

 そう、アニサマね。WUGとしては2年ぶりに返ってこられたSSA。セトリをどうするか、みんなとの話し合いの結果、最後に歌ったBeyond the Bottom。この曲しかないんですよ。わたしたちの切り札。今しかない、その一心で歌ったんだ。

 もうWUGとして、この聖地に立つ夢は叶わないかもしれないけど、だからこそ、アニメWake Up,Girls!が紡ぐ物語を、想いを、この場所に遺すことができて、本当によかった。この一瞬に悔いなし!

 

 「むすんで ほどいて 途切れないように」

 そしていよいよ4thライブツアー!この1年間のわたしたちの集大成。今回、初めて私たちメンバーが主体となって、セトリから衣装から考えて提案することに決めたんだけど。これが本当に大変で。毎日のようにスタッフさんや愛理たちと会議室に籠もっては話し合って。そんな中、ツアーのテーマを考えたときに、TUNAGOという曲が挙がって。

 アニメがない期間もユニットWake Up,Girls!としてワグナーさんを繋ぎとめようという想いで活動を続けた2年間。コンテンツの原点、震災復興を忘れないために東北とワグナーさんを繋いだチャリティーイベントやタイアップ。WUGの今までを全部抱きしめながら、このツアーでアニメ新章に繋ごう!

 こうしてツアーへの想いが固まって、私たちの一番熱い夏が走り始めたんだ!

 大阪、仙台、埼玉、福岡、沖縄に広島。そして東京。

 

 『Wake Up,Girls!らしさって何だと思う?』

 

 アニメから離れて一人になっとき、何度もその問いかけが頭をよぎり、時に応えられず迷って不安になって苛立ったりもした。

 でもみんなと駆け抜けたこの夏のツアー、千秋楽のあの時に、わたしは自信をもってこう言えたんだ。

 

「これがWake Up,Girls!だ!」

 

って。

みんなのおかげだよ。

ありがとう。

 

 ー そして、ツアーの熱が冷めやらぬ10月、沢山の人たちの期待や不安のなか、いよいよアニメ新章が始まった ー

 

 

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「きみから受けとった言葉 こたえられずに通り過ぎた」

 

『WUGはWUGである』

 あの日、確かに答えたその問いかけに、今、自信をもって応えられない自分がいる。

 会場の温かい光に照らされながら、ここでこの景色をあと何回見られるだろうかと思ったら、ふいに視界が滲んできた。決断の時は、刻一刻と迫っている。

 WUGは来年で5周年を迎える。アニメタイアップ、東北ろっけんツアー、5周年ライブなど、年度内の予定はすでに決まっているが、その先はどうなるだろうか。新章が終わる今、私たちはこれからどこに向かって進めばいいんだろう。何を信じていけばいいんだろう。

 無数の声優ユニットが、生まれては消え、忘れ去られていく。ここに私たちが立っていたことを、いったいどれだけの人が覚えていてくれるのだろうか。

 

 忘れないで

 ここにWUGがいたことを

 

 頬を伝って落ちたひと雫が、ステージに打たれ一瞬の冠をつくる。せめてこの小さな輝きが、誰にも気付かれないまま消えていく光が、どうか、あなたに、わたしたちに、贈られますように。




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