
ざっと数えてみると、我が家には土鍋が13台ほどある。にもかかわらず、また土鍋が届いた。しかも一瞬で3つ増えた。何かしらの病気なんだろうか。土鍋依存症?
暇さえあれば、ヤフオクをパトロールするのが日課となっている。ある日、目に飛び込んできたのは、3台セット売りのタジン鍋だった。
タジン鍋はすでに持っている。だがしかし、強烈にそそられた。素朴な手描きの模様はすべて異なり、白地にゆったりした青いラインは、なんとなくチュニジアを思い出すブルー。
問題は、この鍋が直火で使えるか否か。出品者によれば、「預かり品のため、詳細不明」とある。
便利な時代だ。画像で検索してみると、まったく同じ柄のタジン鍋にヒットした。れーこ (id:taijose412ouen)さんのブログだった。はてなの民である。
gagamama.jp
彼女の投稿によれば、このタジン鍋は亡き夫のもので、遺品整理の際に18+1台のタジンが発掘されたのだという。床に雑然と並ぶ18台のタジン。なかなかに狂気じみた光景である。
なぜ夫氏が職人にタジンをつくらせたのか、実際に鍋として使えるのか。結局わからずじまいのまま、タジン鍋は業者に引き取られた、という顛末だ。その業者がヤフオクに出したのだろう。3台のタジン鍋と、一回り小さい7台を、別々に出品していた。
さすがの自分でも、タジン19台はやばいだろう、と思うが、人のことは言えない。もしこれを購入すれば、我が家も土鍋が16台になる。夫氏はASDとADHDを併発していたという一文に、少しヒリヒリする。
寝ても覚めても、あのタジン鍋が頭から離れない。落札されていないタジンを確認し安堵してから朝が始まり、眠りしなにも入札状況を確認。ますますなくてはならない物のような気がしてくる。使えるかどうかはわからんが、最悪インテリアにすればいい・・・と謎の言い訳でもって、入札完了。
数日後、タジン鍋が届いた。ナイスなことに、家人は会議中。段ボールをそそくさと運び入れたところに、「なに買ったの?」と背後から声。危うく落としそうになったではないか。ちっ。ばれたなら仕方ない。家人の目の前で箱を開封。「なんで・・・3つも・・・土鍋・・・」呆れているんだろうか。諦めたんだろうか。

鍋は分厚く重い。内側だけ釉薬がかかっており、蓋は素焼きのまま。鍋を肴に一献やりたくなるほど、ほれぼれする。まずは一日1台ずつ、冷飯で目止めを試みる。出所不明ゆえ直火にかけられるか心配だったが、第一関門、突破。火のまわりは早く、煮立てばごく弱火にしないとあっという間にふきこぼれる。
油と玉ねぎを敷いて、ありったけの野菜にモロッコ的なスパイスまぶし、火にかける。スパイスは少量の水と混ぜたほうが、やはり馴染む。
野菜とミートボールのタジン(ケフタタジン)が出来上がった。しっかり、タジン鍋として機能している。


これで一人1台タジンの夢が膨らむ。次はハンバーグをタジンでつくってみた。大きなミートボールタジンのような形だが、付け合わせの野菜とソースを同時に調理するのが狙いだ。湯がいたパスタをのせれば、ハンバーグ定食になる。肉汁が野菜のソースに溶け出し、パスタに絡まって、最高だ。


タジン鍋は、コレクション棚の最上段に鎮座した。すべてが丸く収まった気がする。土鍋、鉄鍋、アルミ鍋、銅鍋。壁一面の鍋だ。どれも個性的で、機能的で、美しい。
「いっそのこと熱海鍋博物館でもつくったら?」
やけっぱちにしては、悪くないアイデアじゃないか、家人よ。
拝観料はいくらにしようか?