

家人の父が江戸の文化、風物、経済などに造詣が深いこともあって、当時の食関連の本を大量に譲ってもらった。ザッピングしながら眺めているが、日々新しい発見があって楽しい。
深川飯の話をしよう。
いまでは駅弁に給食に冷凍食品にと、江戸時代から受け継がれた東京名物・深川飯を端的にいうならば、「あさりの炊き込みご飯」だ。たが江戸時代の深川飯はちょっと様子が違ったようだ。
元祖・深川飯は、江戸前のアサリやバカ貝(アオヤギ)のむき身を、ネギ、油揚げ、豆腐とともに味噌仕立てで煮込み、それを白米にぶっかけて喰う、つまりは猫まんまのような汁かけ飯だったという。当時の深川は漁師町であるから、仕事の合間にサクッと腹ごしらえするファストフードのような立ち位置だったんだろう。
江戸では米は朝に炊き、昼と夜は冷や飯を食うのが習わしだから、冷えた飯に熱々の汁をぶっかけるというのは合理的な食事だ。もっといえば、18世紀頃の江戸ではアサリの販売を1月~3月末と規制していたというから、寒さが底をつく冷たい海で働く者たちにとって、さぞ五臓六腑に染みわたる食べ物だったんだろうと想像できる。
深川飯が食べたいが、さて、アサリの猫まんまを夕飯のメインに据えるのはどうだろう。「炊きたての飯が食いたい」と家人が言うのは目に見えているし、自分だって熱々の現代版深川飯が喰いたいと思う。
ということで、まずはあさり飯を炊いた。砂を吐かせたアサリをじっくり茹でて口を開かせ、その出汁で米を炊き、煮えたところにアサリのむき身を散らす。アサリの出汁を吸った米がマズいわけなかろうに。夢中でかき込んでしまった。残った飯はラップにくるんで冷凍だ。
満を持して、今朝はぶっかけ深川飯のチャンス到来。寝起きで味噌汁をつくるのも手間なので、出汁でちゃちゃっと済ませよう。
秘蔵のあさり飯をチンして茶碗に盛り、鰹出汁に塩と隠し醤油で整えた汁をかける。浅草海苔が定番だが、うちは大森の一品を刻んで天にのせる。
ぶっ飛んだ。旨すぎた。冷え切った身体に染みいる出汁。内臓がほっこりと目覚めていくのがわかる。光の速さで胃に流れ込んでしまった。
朝の温活要員としては、うどん、蕎麦、ラーメンを常食としていたが、この「ネオ深川飯」もラインナップに加えていこうと思う。
あさり飯

材料
| アサリ | 2パック | 水200ccに塩小さじ1の塩水で砂出しする |
| ●日本酒 | 大さじ2 | |
| ●濃口醤油 | 小さじ1/2 | |
| 米 | 2合 | |
| 新ショウガ | 親指半分ほど | ごく千切り |
| 油揚げ | 1/2枚 | トースターで軽く焼いてみじん切り |
| トッピング | 適量 | 紫蘇、ネギ、ミツバ、海苔etc |
| 調味液 | 360cc~ | アサリの出汁に水と昆布、もしくは鰹出汁、薄口醤油とみりんを各大さじ1を加える。吸いものよりも少ししょっぱいくらいが目安 |
| 昆布(option) | 5cm角 |
つくりかた
- 砂抜きしたアサリを重ならないように鍋に並べ、酒とひたひたの水を加えて点火。弱火でじっくりあたため、口があいたものから引きあげる。あら熱がとれれば、身を取り出す。ティースプーンで貝柱をひっかけるようにするとポロリととれやすい。醤油をまぶして下味をつける。
- アサリ出汁をさっと沸かしてアクをとり、茶こしで漉す。
- アサリ出汁に鰹出汁(もしくは水)、薄口、みりんを加えて、360ccの調味液をつくる。
- 洗って水切りした米に調味液を加え、油揚げ、新生姜を散らす。調味液に水を加えた場合は、昆布を加えるといい。炊飯する。
- 炊きあがればアサリのむき身をもどし、蒸らして出来上がり。
