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最後の太夫 「術を語る」 

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中尾集落から別府地区に戻り、車を走らせること40分ほど、神池地区にひとりの老人が暮らしていた。年齢は当時97歳。いきなり訪ねたにもかかわらず、老人は元気な声で私を迎えてくれた。 「わしが最後じゃろうな、しっかりと修行したのは。昔は村の中に行場(ぎょうば)があって、真冬に滝に打たれたりして、精神的な修行をしたもんじゃよ。今じゃ誰もやらんな。精神を磨かんで、ただやり方を形だけ真似るようじゃ、法を使っても効かないんじゃよ。昔の行者は、岩を割ったりそうしたことができたんじゃ」 昔は各集落に2、3人の太夫がいたというが、時の流れの中でその数はどんどんと減っていた。

人の心を扱ういざなぎ流では、人の心の闇も扱ってきた。私は呪いを行う太夫の存在についても尋ねた。

「それは人間の常じゃけんね。人を呪ったりする太夫もおったよ。わしも頼まれたことがある。わざわざ東京から訪ねてきてな。わしらは呪いを防ぐために呪いの掛け方も知ってなくちゃならん。だから人を呪おうと思えばできるんじゃ。だけどな昔から、人を呪わば、穴二つてな、相手の穴だけでのうて、自分の穴も掘らなきゃいけんのよ。結局は自分に返ってくるんじゃ。この世の中じゃ人を殺したら罪になる。呪いも同じじゃ、神様が見てるんよ」 かつて、人々は闇を畏(おそ)れ目に見えないものを敬い生きてきた。それゆえに太夫の言葉や祈りといったものが、人々の病を治してきた。時代が移り、一見テクノロジーの進化とともに太夫の存在価値は薄れている。ただ、人間の心の闇は消えることはない。昨今のネット社会を見ていると、むしろ闇が広がっているようにも思える。 人間の心の表も裏も、美しさも、汚らしさも見つめ続けてきた太夫は、穏やかな口調でしみじみと言う。 「人間が一番難しいぞよ」

 

 

いざなぎ流の一流に伝わる呪詛返しの秘法。

いざなぎ流にはそういう陰を専門に扱う流儀もある。

相手の魂を呼んで叩き切る。

呪詛は還っていくが相手が死ぬこともあったらしい。

この術はじめ一括して法友から私も教えていただいたが、これを伝えた太夫は晩年「すい臓がん」になったが治療はせずに亡くなったという。

「見えないと場所から沢山の人を斬ってきた。これは業だから受け止めていく」と。

霊的刺客道だ。

こういう術は知っていても使えば、真剣を抜くのと一緒なのだ。

剣術を知っているのと、それで現実に人を斬るのでは次元がまるきり違う。

 

 

 

 

 

 




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