魔法少女ノ魔女裁判(以下まのさば) をプレイしたので雑に感想を残す
友人に勧められる形で購入し、一気にガーッとプレイした
元々逆転やロンパは通っているのですんなりと受け入れぬるっとクリアまでいけた
1.全体を通したざっくりの感想 と、2. バレ有感想 、3. がっつり終盤を含めた感想…という感じで書いていく
逆転裁判・ダンガンロンパとの比較が多めの内容になると思いますので、まのさばが推理ADV初プレイのユーザーの参考にもなれば幸いです。
いちおうこの手のゲームは前情報が一切ない方が楽しめると思うので、レビューを読む前の購入を勧めておきます

1.ざっくり感想
ダンガンロンパすぎる
購入前の予想の百倍くらいダンガンロンパだった
殺人が発生し、裁判が始まると「裁判なんかやる意味なくね?だってこいつが犯人じゃん」「私は殺してない!」「喧嘩はやめてくださ~~い!」みたいな下りが発生した時に既視感がえげつなくて爆笑してしまいました
とはいえプレイしていると、これはダンガンロンパではないなと感じていくことになる。独自性はかなりあると思うのでそれも後述していきます
ストーリーが想像以上に面白い
プロモーションの雰囲気だったりタイトルだったりの要素で、発売前の印象はそこまで惹かれるものはなかったというか、あまり自分は客層ではなさそうだなというのが正直な印象
また、序盤が結構タルいのでこれどうなるんだ…?と思ったら右肩上がりでシナリオが面白くなる。話の面白さはかなり保証できます。(保証?)
全体的な総評としては、食べやすくなったダンガンロンパ
ゲーム性はダンガンロンパに比べて著しく低く、テキストの完成度もそこまで高いとは思わない。演出に関しても不足しすぎている感じがあり、割と全体がアッサリしている。
キャラもダンガンロンパほどアクが強いというわけでもなく、全体を通して不快感のある描写も殆どない。これは良くも悪くもという感じで、プレイ中に疲れることがほとんどなく、ぬるりとプレイできるダンロンという印象が強かった。
2.細かいネタバレ有感想
ここから軽めのネタバレがあります。また、主に不満点を語ることになりますが、最終的にその不満は7割くらいひっくり返るのでご安心を
初手の印象はかなり最悪に近く、デスゲームに囚われたキャラクターたちの心情描写がかなりアッサリしており、事件もぬるっと発生し、フワッと証拠品を回収して、なんか犯人もすぐ分かってしまい、面白さを掴むのが難しかった
青春をロンパと逆転に捧げた人生だったので、オマージュゲームとして演出不足は痛すぎる。テキスト切り替わり時の効果音や、カメラワーク、ロンパ時の演出などがかなりアッサリしていたため、"謎と解き明かし議論を進めている感"があんまりない
ゲーム性に関して
ゲーム性に関してはかなり問題があるように思えます。テキストがふんわりしているせいで、"今、私は何を問われているのか"そして"そのために、何を答えるべきなのか"がわかりづらいです。これはオマージュ元になったロンパ逆転にはなかった欠点で、ユーザビリティの欠如を感じました。
逆転裁判シリーズではこのように、原則的に「問題文」と「解答」が1画面で完結するように作られています。
結果的にこの前2作は、推理ADVでありながらプレイヤーは事件の推理をする必要がなく、眼の前に現れた問題文に対して矛盾する証拠をつきつけていればストーリーが進行する作りになっています。
この手のゲームではどうしても、キャラクターが議論を進めていくストーリー上、プレイヤー側の勘違いや思い違い、テキストを忘れるなどの要因によって推理が困難になることがあります。また、先にプレイヤー側が3手先の答えが分かってしまった時なんかに、今ゲーム上でつきつけなければいけない証拠がわからなくなったり…などもよくある光景です。ですので、こういったゲーム側からのストーリーの舗装は必要不可欠だと思います。
まのさばはこういった部分が非常に整備不足であり、戻ることのできない数画面前のテキストを覚えておく必要があります。なんなら証拠品のテキストの記述も不足していて、事件発生前から裁判中の台詞に至るまでの全てをプレイヤーが覚えている必要があります。その整備不足を補うための手段は「体力ゲージがないから何回間違えても大丈夫」です。いくらなんでもゴリラすぎる気がしました。事件現場の写真の拡大もできないため、自分で証拠品とにらめっこして考えるみたいな時間があんまり発生しませんでした。
ただ、誤った証拠品を突きつけた際のテキストが数パターン用意されており、「惜しい解答」だった場合に正答に誘導するようになっていたのは、明らかにロンパ・逆転よりも優れているポイントだと思いました。
また、間違った指摘をした時のテキストが面白く、思わず間違えてしまいます。この辺は「逆転裁判」に通じるところもありますが、百合萌えゲーならではな雰囲気もあり、独自の魅力です。
バッドエンドが複数用意されていましたが、これは正直よくわかりませんでした。突然ネットのしょうもないホラーSSとかハーメルンのマイナーカプSSみたいな感じの展開になって戻されるので、これは…何?みたいな感情になり続けました。
ストーリーに関して

最初にゴクチョーが「魔女化が進行すると殺意が抑えられなくなる」とか言った瞬間にメチャクチャ不安になったのですが、その予想通りおおむねの事件が魔女化の進行による衝動的な殺人であるのも、動機のドラマが欠けている感じがして不満ではありました。「事件」と「裁判」以外のパートも割とアッサリしているため、そもそもキャラクター内で起きるドラマが少ないように感じます。
ダンガンロンパでは、裁判の中で明確に「事件が全くわからないおバカキャラ」と「ほとんど真相を掴んでいる頭脳キャラ」に分かれて進行しますが、本作はキャラクターの頭脳のレベルがほとんど一定にとどまっている感じがあり、また、基本的にほぼ全てのキャラが善性を持っていることを早い段階でプレイヤーは知ることになるため、「得体のしれないヤツ」とか「こいつ頼りになる」とか「こいつうるさすぎる」なんかの感情を抱くことがほぼなく、それもなんとなく淋しいと感じたりなど
また、何回も言っていますが演出が非常にアッサリしているため、脳裏に常にロンパがチラつきます。
テキスト自体、というか裁判自体はかなり面白いはずなのに、キャラクターが面白い行動をしたり議論が面白い方向に転がった時にそれらしいリアクションがないため、面白さが削がれているように感じます。
例えば、最初の事件の裁判でシェリーがボウガンを事前に回収していたことを突然事後報告する下りなんかは顕著で、シェリーがとんでもないことをやらかしているのに対してキャラのリアクションも効果音のリアクションもBGMのリアクションも薄すぎます。この展開は明らかにスーパーダンガンロンパ2の第一章のオマージュだと思うのですが、せっかくケレン味とハッタリに満ちたビジュアルのゲームなのですから、そこらへんはもっとメチャクチャ大げさにやってもいいんじゃないかと思いました。
ここから更にネタバレ増やします
プレイ中に評価が変わってくる
散々ボロカス言っているように感じますが、しかしこのゲームの正体はそこにはありません。
中盤のどんでん返しポイントが特に顕著ですが、このゲームの評価はプレイ中に右肩上がりに上昇していきます。

さすがにオマージュ元をプレイしているのもあって、何かしらのギミックが作動してヒロのパートになるのは想像できました。というのも、序盤がアッサリしているのもあって、明らかに「全ての殺人が終わった後」にもボリュームがありそうな気配があったからです。即死するヒロのキャラ性が異常に強かったというのもありますが。
しかし想像できなかったのは、ヒロが主人公になってからの裁判がメチャクチャ面白いというポイントです。あいかわらず演出はアッサリめではありますが、ここに来てまのさばは本来の面白さを見せてきます。ここから、ダンガンロンパでは見たことのないゲームが始まった感覚があり、改めてOPが流れてタイトルロゴが出てきて、「魔法少女ノ魔女裁判始まった感」はメチャクチャありました。

なんというか、前述した通りこのゲームのキャラクターの"頭の良さ"はほぼ一定であるため、嘘をつくヒロの裁判進行は魔女裁判自体をメチャクチャにします。ヒロにはエマにはない行動力があり、裁判中に無理矢理嘘を突き通そうとしたり、また、巧みな話術で自分のペースに裁判を持っていこうとしたり、それを他のキャラに阻まれたり、挙げ句の果てに他のキャラまで嘘をついていきたりします。
結果的にヒロが「どうせこんな裁判、心象の勝負でしかないんだから自分が犯人ではない感じの雰囲気に持っていけば勝てる」みたいなことを言い出した時は、マジで魔法少女の魔女裁判始まったな感を感じました。いや実際、ダンガンロンパだってそうであるべきなんです。所詮、ガキが10人ちょい集まって誰を殺すか話し合うなんて狂気的な状況、どうあってもムチャクチャになるし、ムチャクチャであるべきです。
ヒロ編の裁判は、事件の出来の良さや予想のつかなさみたいな部分とは別に、単に議論がクソ面白いです。前主人公にロンパされるという体験もかなり盛り上がり、おお…おお…おもしれえ…!!!ってなりました
なんならもう事件の捜査パートも全カットされます。そうです。このゲームに捜査とかは必要ありません。誘導も舗装も必要ない。
殺人の決意が固まった主人公を操作するパートがあるのも、かなり新鮮な体験であり、また、殺人者の視点で裁判に参加するのもメチャクチャ新鮮でした。

また、ここまでプレイしていくと、このゲームの味が分かってくるというのもあります。
このゲームの演出は確かにアッサリしており、事件もアッサリしていて、ゲーム性の整備も不足しています。デスゲームの絶望感や、仲間が死んだことに対するショックの描写も軽く、キャラのアクも強くない。しかし、それ故にスルスルとゲームを快適にプレイできます。これは現代性というか、今の時代にダンガンロンパ的な刺激物を出したところでユーザーの共感を得られないというのは、ロンパチームの新作群が明らかにしている事実です。棘をある程度抜いて食べやすくしたダンガンロンパ…というのがこのゲームへの最終的な評価になり、そして、それはそれで結構面白いなというのが、私個人の感想になりました。

こっからもう最終盤含めたバレとか関係ない感想になりますので悪しからず
3.最終盤:再び逆転する感想

ここまで、序盤の印象は最悪だったが徐々によくなってきてメチャクチャ楽しんでる感を書いてきましたが、この感情は終盤のパートで一気に下落します
というのも、最終盤のサバトパートが全然受け入れられなかったからです。禁忌への接触からの魔女化の進行による再逆行、13人の魔女によって大魔女を召喚…とかになってきて、ついにこのゲームは裁判とか関係ない感じになっていき、独自のストーリーを展開し始めます。
ここのトラウマ解放→メルルの治療 のパートもかなり…うーん…って感じではあったのですが、問題はこのゲームが再び「魔女裁判」へと回帰する最終盤パートです。
大魔女が召喚され、人類への処刑が執行されるタイミングで、「異議あり!」高らかなオマージュ宣言と共に再び「魔法少女ノ魔女裁判」が始まる最終盤。全ての人類を処刑したい大魔女に対し、人類の罪について議論するという壮大な裁判が開始されます。

結果としてこの裁判は、もうほとんど気づきかけてる大魔女の背中をそっと押すだけの議論ではあったのですが、それにしたってこの裁判は納得できません。
というのも、これまでの全ての事件と、そうして歩んできた彼女らの道程が、「500年募った種族間の復讐劇」と結びつかないと感じたからです。
というか、特にヒロに関しては、未遂だっただけで殺人に至りかけたり、裁判で偽証を行い続けるなど、到底「正しい」道のりを歩んでいません。というか、2周目パートは彼女が「正しくない」ことを認めるためにありました。エマとヒロは、これまでの凄惨な事件と裁判の中で、少しずつなにかを積み上げてきたはずです。しかしそれが、「人類は愚かで断ずるべき存在なのか」みたいなテーマと全く無関係に感じます。これまでの事件の多くが魔女化の進行による殺人衝動が原因だったこともあり、人間の罪みたいなものとは縁遠い感じがします。
あの、もう、なんか思うところが多すぎて、ちょっとムチャクチャなことを書いていきますここからは
いや、というか、彼女らは実際になにかを積み上げているんでしょうか?かなりその場しのぎ的に事件の冤罪を防ぎ続けただけで、一つ一つの死が、彼女たちに前へ進むためのなにかを生み出していたようには思えません。彼女らに、魔女と人間という種族間における差別と虐殺に関する罪を語るだけの物語はないように感じます。
というか、私が後半パートになるにつれてまのさばの面白いと感じたポイントはそういうところです。すべてが滑らかであり、ヒロはその場しのぎでメチャクチャな嘘をつき、統制のとれない裁判の中で真犯人を見つけていく…。そしてすぐ次の事件が…といった、なんか、積み重ねがあまりないところも含め、このゲームの味なんだと感じていました。2周目の終わり、ヒロは自分が「正しくない」ということを認めます。私は、それを肯定するべきだと思いました。しかし、500年前の虐殺に対する復讐は、彼女にかなり関係がありません。もちろんエマにも

だからこそ、そういった壮大な議論は必要ないんです。なにかの魔法が発動して、一気に世界が過去のビジョンに切り替わり、エマとヒロとユキの3人で、かつて自分たちがいた高校で、学級裁判をするべきなんです。3人だけで、自分たちの思い出を語り合い、その時あった出来事を詳らかにして、すれ違いを解消して、共に前に進むことを決断し、「ユキ」の罪を断罪する必要があるんです。お前たちは、魔法少女でもなんでもなかったあの頃の姿で、あの頃の景色の中で、「審問」をすべきだ。
これまでの事件が全て復讐劇だったり因縁についての物語だったのなら、それか、これまでの事件の中で彼女たちが「人の過ちも認めて前に進むこと」についての学びを得続けてきたのなら、それか、ヒロやエマが裁判の中で、「相手を信じ切ること」を貫き通していたのなら、少なくともここまで最終盤に不満が募ることもなかったでしょう。彼女らの歩んできた物語と、大魔女が歩み終える物語には、関連がない。

苗木誠が最後まで希望を信じて絶望に打ち勝つことができたこと、それにプレイヤーが納得できた理由は、それまでの裁判で彼が希望を捨てず、周りの人間を少しずつ希望に導いていく様が、その片鱗が描かれ続けたからこそだったのではないですか?
そんな疑問の中、ついに最大のオマージュとして最後に「それは違うよ!」の台詞を聞いた時、なんかもう、ムシャクシャしてしまいました。途中評価が上がってきたのも含めて、このゲームはもっと輝きを放てたのではないかという惜しさが心に残ります。
このパートは、それ以外にも、個人的な禁忌を踏んでいます。
デスゲームで死んだ人間が生き返るのはもちろんご法度ではあるんですが、ヒロの時間遡行で擬似的にその状況が生み出されます。まあ、そこは全然受け入れられます。
しかし、みんなの持っている魔法が強化されて色々起きた結果、彼女らが全ての事件の記憶を思い出してしまう。これは、到底受け入れられません。いや、魔法について納得できないのではなく、記憶を持ったままの生きている全員が揃う というのが受け入れられない。
ラスボスに対して、これまでの事件であったことや会話したこと、積み上げた関係値が維持された状態の全員で挑むことができるのなら、どれだけよかったでしょう。そうあってほしい、でもそうならない。失ったものは取り戻せないから。だからデスゲームって悲しくて面白いんじゃないんですか?みんながゲーム全体を通した物語を終えた状態で集合してラスボスを倒す…、そんな、そんな理想の状況が訪れることが、許されていいんですか?それが、ユーザーの「推しを殺さないで下さい」というQ&Aに「ありがとうございます。殺します」という残酷な解答をするゲームの答えなんですか?
このゲームはこの終盤によって、このゲームが積み上げてきたものとは無関係の方向に発射され、ついに自分はこのゲームの自分の感想がわからなくなりました。
総評
非常に面白い推理ADVです。逆転裁判・ダンガンロンパといったオマージュ元を踏襲しつつもオリジナリティと現代化に成功しており、プレイフィールも悪くなく、個々のキャラも程よい塩梅のゲームです。ロンパの人を選ぶポイント(露悪さ、重さ、難しさ)などを解消しており、棘を適度に抜いて食べやすくしたダンガンロンパのようなゲーム…という総評です。
最終盤の展開が個人的に合いませんでしたが、シナリオ全体としては圧倒的に期待を越えてくる完成度のゲームでした。しかし、演出がいくらなんでも不足しすぎている感は否めません。
好きなキャラは圧倒的にヒロです。