「きらら4コマ」と呼ばれる漫画ジャンルは、「漫画」や「4コマ漫画」とは明らかに違ったメソッドで描かれているにも関わらず、そのハウトゥーに成り得る資料はインターネット含めどこにも殆ど転がっていません
漫画創作にハウトゥーやチュートリアルが必要なのかはさておいても、とっかかりになる資料めいたものが欲しいと思ったので書きます

この記事は「まんがタイムきららMAX」にて、「ぬるめた」という日常系ギャグ・コメディ4コマを連載中(現在6年目)の自分の現在の視点から書いています
明日には考え方が変わっているかもしれない
別に自分の描き方が基礎的で応用が効きやすいとか微塵も思ってないけどこういうのは極端な例でもないよりあったほうがいい
自分は連載初期に何をどうしたらいいのかわからず、とにかくコマをセリフで埋め尽くしたり、キャラを大爆笑させてみたり、オチをぶん投げてみたり、などと様々に藻掻き、諸々考えた末に現在の形式に落ち着いています
きらら作家を目指している / 描いてみたい などと考えたことがある稀有な若人の足がかりになればうれしい
また、「きらら4コマ」という言葉を用いますが、普通にまんがタイムきらら系列ではない作品を例に出すことがあります。それらも「萌え4コマ」という近似の概念として…あしからず!*1
本稿では3つのワードを分けて使用します
- 「きらら4コマ」: まんがタイムきらら関連雑誌及びその系列の雑誌に掲載されている4コマ漫画
- 「4コママンガ」: きらら4コマを含む、新聞4コマなどを含んだすべての4コマ漫画
- 「ストーリー漫画」: 一般的なコマ割りの漫画
「きらら4コマと4コマ漫画に明確な違いがあるの?」「ストーリー漫画って一括りにしていいの?」みたいな疑問がボコボコ出てくるがそこまで言い出すならもう普通に漫画のハウトゥー本を買った方がいいので今すぐテキトーにアマゾンで検索して雑に買い漁って下さい
ちなみに明確なストーリーのないギャグ漫画なんかでも、コマ割りが4コマでないものはざっくり「ストーリー漫画」という言葉で雑に括っていますので、あしからず
拙作の概要

いちおう読んだことのない人のために、可能な限り客観的に拙作について説明します
「ぬるめた」は、4人の主要人物からなる会話劇主体のコメディであり、人造人間の魚住くるみを、その所有者である宗円千明が魔改造し、それを幼馴染の鴉越咲樹菜と友達の高田詩雪に見せびらかす、といった典型的なアンドロイドギャグ風の展開を中心に描かれている
形式は「日常(あらゐけいいち)」や「らき☆すた(美水かがみ)」のようなオーソドックスであり、会話劇は「キルミーベイベー(カヅホ)」や「ゆゆ式(三上小又)」のような湿度やテンポを重視したものとなっており、ごった煮ハイブリッドな味わいのある漫画である
たぶん。
タルい前置きはここまでにしてさっさと本題に移ります
画面の話

きらら4コマは読者に求めるカロリーが通常の漫画の10倍以上ある
まず、最もきらら4コマが他と異なるのは、読者に求めるカロリー、読者にかかる負荷の量です
ストーリー漫画に対して1ページを読み終わるまでにかかる時間が10倍どころではないほどあります
そしてその1ページには様々な創意工夫がなされており、文字は小さく、絵も小さいため、読むのに体力を消費します。この令和の時代において、スマホで読むのが困難です
通常の漫画において、読者には「ページをめくる」というインタラクトがあり、それに応じて「次の展開に移る」という報酬が、漫画から与えられます
これはゲームにおける「Aボタンを押す」と「ジャンプする」みたいなものと同じで、インタラクトと報酬のイタレーションが短ければ短いほど、読者の脳に快楽物質が流れ込みます
これがきらら4コマになると、常に一定のコマ数で進むために「4コマから次の4コマへ進む」ことと、「ページをめくること」に差がなく、これらが等価です。結果的にインタラクトにおける報酬がほとんど存在しないことになります。
そういう意味で、きらら4コマというのはかなり他の漫画に対して不利な媒体です
そしてそれこそがきらら4コマの魅力であるとも言えます
コマが小さすぎる
キャラの作り方とかやりとりを面白くする方法ではなく、まず絵の話をする
というのもなんだかんだこれが一番重要だと自分は感じているため
きらら漫画はマジでコマがクソ小さいです
以下に私がこれまで連載で描いた「きらら4コマ」と「ストーリー漫画」を添付します


現在、ストーリー漫画において一般的とされるのは1ページに5~6コマという説が有力*2であり、両ページ合わせて12コマの見開きページを用意しました
対してきらら4コマは4コマ×4レーンで16コマあり、単に数が多いだけでなく、ストーリー漫画のようなコマの大小が存在しないため、均一に配置された16コマは非常に小さい
更に、基本的にきらら漫画はコマすべてを基本枠*3に収めるため、現在の一般的なストーリー漫画に対して扱える描画領域が狭い (現在は週刊少年ジャンプの影響かストーリー漫画でタチキリまで絵を描くのはかなり一般化している印象があり、よりきらら4コマのコマの小ささを実感する)
きららにおいても創刊からしばらくの間は特にこれでも問題なかったんですが、「きらら系」のブランドが確立していく中で美少女の描き込みにストーリー漫画と同等かそれ以上のクオリティ・密度を求められるようになり、*4それにともなってセリフややりとりの密度も加速度的に増えているような気がなんとなくしています
密度の高いやりとりを成立させつつ、高クオリティなコマを16コマ敷き詰め、かつ見やすくなくてはならない
どうするべきなのか
- がんばって描く
- 3Dモデルを使う
- キャラの配置をパターン化する
- キャラデザを極端にわかりやすくする
- ぶち抜かない
- コピペしろ
- クリスタのトーンアセットを買いまくれ
1.がんばって描く
とにかくがんばって16コマ描こう
ちなみにきららの連載は1ヶ月で8pが基本です。64コマ!毎月64枚の美麗美少女イラストを描こう(狂気)
2. 3Dモデルを使う

キャラクターに使うのではなく、あくまで背景に
これはストーリー漫画でも、特にWeb雑誌では顕著だが背景を完全に3Dで出力している漫画は昨今珍しくない
別に3Dじゃなくて写真でもいいのだけれど、とにかく「キャラクター」と「背景」の筆致を完全に切り分けられることに3Dを用いる一番大きなメリットがあります。手抜きではありません。
できれば3Dで完全出力し、専用のペンでハッチングしたりすると尚良い 楽ちん!
とにかくきらら4コマは読者にカロリーを要求します。キャラと背景が全く異なる筆致で描かれていれば、それだけでパッと見でのキャラ認識のしやすさが段違いに変わるため、3Dの使用に関してはかなり推奨派 ムチャクチャ原稿ラク~~!
これは手抜きではありません
最強の3Dモデルです。もう学校を舞台にした漫画では体感7割くらいこの廊下が出てきます。G-BLACK氏には足を向けて寝られません。
3. キャラの配置をパターン化する

このように、キャラクターの配置をある程度パターン化しておく
こういうパターン化テンプレートみたいなものをわざわざ用意する必要はないと思うが、なんとなく頭の片隅に入れておく
基本的にそのテンプレートのキャラ位置をちょっと上下したり、ちょっと変えたりした差分だけで漫画をガンガン構成していく
これも2と同様、作業のコストカットというよりは、4コマがかなり見やすくなるので結構推奨したい
というか連載していく中でだんだんテンプレートが出来上がってくるので、最初から意識する必要はないのかも…?
なんとなく読者としても「その漫画で見慣れた画面」があると安心するような気がします
とはいえ1見開きに最低1コマ以上はマスターカット*5が必要なため、そういうコマはメチャクチャ気合で3Dをグリグリ回転させまくることでなんとか描き切りましょう
これは本当に自分の個人的な感覚だけど、きらら4コマにおいてイマジナリーライン*6はそこまで考えなくて良いと思います。さすがに連続して越え続けると違和感ありますが、4コマは読み手の読み進める速度がストーリー漫画に比べてかなりゆっくりなため、コマ間でイマジナリーラインを跨いでもひっかかりを感じづらい印象があります
4. キャラデザをかなり極端にする
これはストーリー漫画と特に変わらない
主に日常系4コマのメインキャラクターは2人~5人の構成になっています
2人なら片方は黒髪、片方は白髪/金髪。3人目は色のついた髪色にする、といった方法で、「髪をベタ処理するキャラ」「髪を塗らないキャラ」「髪をトーン処理するキャラ」という風にもう作業工程レベルでバッサリ分ける
4人目が入ってくる場合、髪の毛のハイライトの処理をガッツリ変えるなど…
そこまでする必要がある?という感じはあり
もちろん自他ともにきらら4コマでそこまでバッサリキャラデザインを分けている漫画もそんなに多くはない
きらら4コマは他漫画に比べてもトーン処理が細かく、ほぼグレースケールでの制作になりがちなため、グレーの度合いなんかでキャラを差別化している漫画も多い
ただ…

これは連載初期のエピソードの1ページ
ちゃんと読めばここで「ゆき」と「くるみちゃん」という2キャラが会話していることは誰にでも明らかなわけですが
デフォルメの強い絵柄とトーン処理の少なさが相まって、この2キャラの区別に若干の弊害を感じる
「ぬるめた」は、他の漫画とは異なり、Web(Pixiv , ニコニコ静画)のアマチュア・カラーマンガを商業化したものであるため、キャラクターデザインが全然モノクロマンガに適していないという問題がありました

モノクロになった時、白髪の「ゆき」と金髪の「くるみちゃん」は両方ホワイトによる処理になる。
キャラクターの区別をつけやすいのは目と頭頂部(くるみにはアホ毛があり、ゆきには猫耳らしきものが生えている)になるのだが
4コマはコマがクソ小さいので頭頂部が描画されないことも多い
すべての読者がちゃんとセリフや絵をしっかり読んでくれるというのは幻想でしかなく、こういったキャラクターデザインによるキャラの区別には特段慎重になった方が良いと考えています
なんならキャラ2人とかの方が圧倒的にいいです 4人はそもそも会話の処理がメチャクチャ大変になります
5人とかになるとマジでネーム切ってる最中に一人マジで一切喋ってなくてあれ!?ってなって8コマくらいかきなおすことになったりします
2人で漫才するのがなんだかんだ安定するんですが、まあ、2人で8p喋り続けるのはだいぶ大変なので3人とかが丸いのかな
ちなみに今ぬるめたには20人くらい名前つきのキャラがいます なんで?自分以外誰一人として名前把握できてないという前提で描いてます
5.ぶち抜かない
「ブチ抜き」というのは、「キャラクターがコマよりも手前に配置され、コマを跨いで描画される」というのを表す語です
ストーリーマンガにおいても多用され、特にアクションや勢い重視のマンガではぶち抜きのない画面を見る機会の方が少ない

では、きらら4コマにおけるブチ抜きがどういったものかというと…

こういったものがわかりやすいですね
では、なぜ「ぶち抜かない」のか
ストーリー漫画は比較的作者側で画面の比率やコマの大小をコントロールしやすいが、4コマ漫画となるとそれはかなり難しい
基本的に読者は「4コマの枠」を想定して読むため、そもそもコマ枠の上になにか物体があるだけでもそれは異物になり得ます
(いやさすがにこの参考画像みたいな例は問題ない気がするが…)
これは極端な「漫画は読みやすくあるべき」という思想による意見であり、実際にはブチ抜きが多少あるだけで漫画の画面は華やかに見え、また、「きらら」とは華やかであるべきという考え方も存在するため、ここには多種多様な意見があると思いますが、ぶち抜かないことを前提に4コマを組むことは非常に重要です
同様に「突然ストーリー漫画になる」「突然5コマになったり3コマになったりする」みたいな"技"もかなり慎重になった方が良いポイントです
これは「やらない方がいい」というより「やるのが難しすぎる」という話であり、技術というのは実践しなければ上達しないのでナンボでもやりまくればいいんですが、うまくいかなかった時の漫画の読み味はかなりメチャクチャ悪くなるというのが理由です
4コマ漫画はその形式上、常に画面が一定のテンポを保って進行します
ストーリー漫画は「コマ枠」「ページ数」「話数跨ぎ」「見開き絵」などを用いてイントロ、Aメロ、Bメロ、サビ、Cメロ、ラスサビ、のようなJ-Pop的な盛り上がりを創り上げるのに対し、「常に同じ形のコマが」「常に同じ数あり」「常に8ページで1話完結する」きらら4コマは一定のトラックの中でリズムをキープするという意味でかなりHiphop的なモノです
トラックの上にどのようにフロウを乗せるのか、Hookはどのように作るのか、という部分に創意工夫があります
コマ枠を弄りすぎると読者がどのようなリズムを基本フォーマットとして用いているのか分からなくなってしまうため、ブチ抜きやコマ変形に関してはやはり慎重になるべきなのかなと
ペン入れ中にここエッチだな…とか思ったらぶち抜いてよりエッチにする、くらいがなんだかんだ一番丸い
再三になるけど、きらら漫画はそれだけで読者に求めるカロリーがストーリー漫画の10倍くらいあるので、できる限り読者の負担を減らすように描くことができればそれが一番いいんですが、読者にかける負荷を更に高めより濃密な漫画体験にすることで「きらら」が進化してきた側面もあるっちゃある*8
というか、単行本1冊の値段が他雑誌の漫画に比べて高いため、濃密な体験を用意すべきという意見の方が正しいのかもしれない。ちょっと言っててどっちかわかんなくなってきました。
まあ、できる限りフォーマットに則った描き方を心がけることで、崩した時の味が強くなるというのも大事なところだと思います。すべてはコントラストでしかありません。

一例として、自分のマンガでは毎話8pのうち1ページだけワイド4コマを用いることで、キャラクターたちの会話のヒートアップを演出する…というのを基本フォーマットにしています。もともとストーリー漫画形式であったWeb連載版のぬるめたときらら4コマ版のぬるめたの読み味の差異をなくすための苦肉の策でした。

たまにこういうこともします
これは、ページにおける左のレーンが4コマではなくキャラクター同士のチャットのやり取り画面になっており、4コマの方と時系列が共有されています。こんなムチャクチャ読むの大変な漫画描いてはいけません
こういうのはひたすらに客層を狭める
楽しく読んでいる読者からしてみれば意味がわからないかもしれないけど、自分のマンガの「絵」とか「雰囲気」とかに惹かれなかった読者がこの画面を見ても、「うっダルッ」てなると思います
突飛な演出さえなければ、絵や雰囲気で惹かれなかった読者もたまたま読んでみてハマる…なんてことがあったかもしれないのに、そういう可能性を潰してしまいます
とはいえ、客層を狭める代わりにディープな魅力を持てるのなら、こういうアプローチも悪いわけではありません。なにより、楽しく読んでいる側からするとこんな楽しいことが発生したら嬉しすぎますからね。
ただしそれは、打ち切りにならない程度に読者人気を確保できていたら、という前提の上での話になります。
これ描いてる時は普通に打ち切りだろこのマンガと思っていたのでクッソ好き勝手描いてました なんとこの手法を使うことで1pに描く4コマが半分になります 凄まじい手抜きです
手抜きではありません
余談として、「星屑テレパス」は信じられないほどコマ変形やブチ抜きなどを始めとしたメタ演出が凄まじくすごいので参考になるかと思います。すごすぎて1年に1回出てくる神アニメみたいな読み味になっています
6. コピペしろ

この4コマ、よく見てみると左の4コマのうち3コマはほとんど絵を使いまわしています
これは手抜きです
これは手抜きではありません
これは通常の4コマ漫画でもよく用いられる手法であり、一部をコピーペーストすることで4コマのテンポを等間隔に調整することができます
アニメにおける同ポを用いたテンポ管理*9にも似たようなニュアンスがあり、絵やセリフの密度の高さからテンポアップ・テンポダウンのコントラストが激しい4コマ漫画において、読者がリズムを取り戻すためにこういった手法は大変有効です
原稿がメチャクチャ楽になります
7.クリスタのトーンアセットを買いまくれ

CLIP STUDIO ASSETSには大量のトーンが売っています。中には無料のものも結構。
そちらを利用することで背景をトーン処理でうまいこと誤魔化しましょう
全コマ背景がピッチリ描かれているとそれはそれで読んでいる側にも体力を要求します
スマホで読んでいるユーザーを考慮するまでもなく、4コマはあまりにも画面が小さすぎて、描き込まれた背景を楽しむのにも限度がある…*10
4コマは小さいというだけでなく、すべてのコマでレイアウトが常に同じという特徴もあります
背景を様々に描くというのにも限度があり、もちろんそこに創意工夫の余地があるとは思いますが
トーン処理をうまく扱えば、みっちり詰まった見開き16コマの白黒バランスをうまく取りつつ、更にキャラクターの感情をより抽象的に表現することができます
常にレイアウトが同じ比率という意味では、実は"映像"と近いニュアンスも持っているため、背景を使い回す、トーン処理を使い回す、などにも味の出し方が存在するはずです。ここにも創意工夫の余地が無数にあります
実際きらら4コマは「TVアニメ」に最も近い娯楽フォーマットだと思います。*11

例えばこのワイドコマでは、右側にいる「千明」の感情の変化を彼女の裏に敷いてあるトーンを使い2コマで表現すると共に、彼女以外のキャラクターが彼女とは異なるトーンの上で会話することで、「誰一人として千明の側に立とうとしない」という残酷な会話が演出されています
されてるか?これ
今テキトーに考えました
まあでも見栄えはよくなります
比較として1巻と5巻の原稿を貼っておきます


じゃあなんのトーン買えばいいの?という話になりますが
なんでもいいから買いまくって使いまくる以外に方法はないです
とりあえずIC-SCREENが出しているアナログ時代から使われているトーンに関してはザッと一覧していい感じっぽいと思ったもの全部買うといいです
それ以外で個人的に使い勝手が良いものをいくつかリンクしておきます
いきなり全然きらら関係ないんですけどこのデジタルトーン処理に関して自分が最も卓越してると思うのは「ダンジョン飯」です。そういう意味でもかなりオススメです。おそらく7巻以降がデジタルのトーン処理だと思います。
普通にグレースケールで塗ってトーン化する場合、トーン線数は70がオススメです(これはかなりなんとなくでずっと統一しています)
まあだいたい絵について自分が考えたのはこれくらいです
次はキャラや設定、ストーリーなどのはなし
キャラクター・設定の考え方
とはいいつつ、ここに関して特にいうことはないんだが…雑に…
- キャラ
- 場
- ストーリー
- 起承転結
- 最強の1コマ
- 2巻乙
- 「!?」
1.キャラ
Moe Archetype Identification という海外memeがあります

これは日常系(Slice-of-Life)におけるキャラクターの定型を海外読者が分類分けした画像です
私が作ったわけではありません。
かなり強引な分類にも見えますが、これが結構参照しやすく便利です
- Boke(Wise-Guy)
- ボケ役 / 賢く聡い者
- Tsukkomi(Comparative Straight-Man)
- ツッコミ役 / 愚直な者
- Moe Through Helplessness
- 可愛くて非力な者
- Seemingly "Perfect" At First Glance
- 一見完璧そうに見える者
ようするに、ボケとツッコミとザコと天然 そしてだいたいの場合、この中で最も賢くグループ全体を俯瞰できているのはボケ役を務めている人物です
概ね多くの一般的な日常系ギャグ・コメディに置いて、この4人は"鉄板"であり、まずはこの類型からキャラクターを形作るとなんかそれっぽくなりやすいです
一人のキャラクターが複数の役割を持ったり、一部の役割を代替可能な人物がいる場合もあります
現実においても4,5人のグループが形成された時、それぞれの人間がこの類型の中に収まりがちな印象があり、私の中ではかなり正解だと感じている分類分け
この4役が確定した段階で、「誰か一人いない状態」「2人だけの状態」をかなり想定しやすくなるため、あらゆる状況を描く際に対応可能であり、この4役はかなり便利です
あなたが個人的に好きなきららマンガのメインメンバーをこれに当てはめようとしてみると、だいたいうまく行くんじゃないでしょうか。また、「この枠にうまく収められないキャラが1人いる」とか、「この枠の役割以上に働きがあるキャラが1人いる」「最初はこの枠だったけど、だんだん別の枠になったキャラがいる」などの問題が出る場合、そこにそのマンガの魅力の秘密が隠されているかもしれません。
ちなみに、ここに一人「めっちゃおかしい人」*12を加えて5人にするケースもあります。
また、例えば「ぼっち・ざ・ろっく!」のように、激しすぎるギャグやドラマチックなストーリーが為されるマンガが、それでもしっかりと「きららマンガ」だと感じられるのは、メインのメンバーがしっかりこの4役を担っているからだろうと私は考えています。
あと話をひっくり返すようで悪いですがおそらくこの画像の存在を知った上で当てはめるようにキャラクターを考えた作家は一人もいないと思うので、とりあえずテキトーにきららっぽい4人を作ってテキトーに喋らせていると自然とこの形になるんだと思います
ということで、キャラクターはテキトーに作ればいい、という結論になります
なんかそれっぽくなんねーなと思ったらこの類型の事を思い出してみるともしかしたらなんか道が開けるのかもしれません
個人的には、実在の人物や友人をベースにキャラクターを作るのが(日常系ギャグでは特に)良いと思います。「ぬるめた」の登場人物にはおおむねモデルになった友人がおり、友人たちと自分を同じ鍋に詰め込んで煮込んでそれぞれのキャラに流し込んでいる感じです。
友人ではなくとも、「グループ系Youtuber」「アイドルグループ」「別ジャンルの漫画・映画」なども参考になるでしょう。実はあらゆるところに隠れているんです。Moe Archetype Identificationが…
2."場"
例えば「ラビットハウス」、「結束バンド」、「情報処理部」、「泉家」といったように
日常系のキャラクターは概ね高校生や中学生であることが多いですが、「学校」という多くの人間が集まる世界の中から、描くキャラクターたちのグループだけを抽出して描く際、専用の場を設けるというのは一つの手段です
「けいおん!」などを筆頭に「部活モノ」がありますが、部活動自体を描くことというより、わかりやすい形で"場"を設けられるという点で部活モノは強い設定です
「けいおん!」」が「軽音部」という(寛ぎスペースとして魔改造された)学校内部室を場として設けていたのに対し、「ぼっち・ざ・ろっく!」はライブハウスという完全に学校から(精神的にも物理的にも)離れた位置に場を設けていたり、「ゆるキャン△」はキャンプという趣味全体*13を場として設けていたりと、"場"をどこに設けるかがその日常系を大きく決定づけるといっても過言ではないいや過言かも普通に今メチャクチャテキトーに喋ってる
3. ストーリー
2015年~2020年ぐらいの間に、きらら4コマで非常に増えた(気がする)のが、ストーリーのあるきらら漫画です
ストーリーがある/ストーリーがない と明確にそれぞれの漫画を区別することはできませんが、明確が始まりがあり、そこからゴールに向かって動く流れが物語性であり、各漫画はその物語性の大小のグラデーションの中にあります。
例えばある漫画の1話が「キャラクターAとBが出会うまで」を描いた1話であるならば、最終的にその漫画は「主人公AがBと出会ったことで出会う前とどう変わったか」を最後に明確にすることが目標になるため、例えギャグが単話完結型であったとしても、それぞれの話は物語の線により連続性を持ちます。
近年はこの「物語性」の強い作品が、以前に比べて非常に多くなりました。
主人公が内面に問題を抱えていて、それが出会いによって回復しようとしていく…というのは定番であり、他にも完全に世界自体に問題があってそれを解決するために物語が稼働するような漫画もあります。
そして、ストーリーの考え方/ストーリーを用意するかどうか に関しては、私はなんでもいいと思っています
なぜ私が「4コマのやり方」とか「キャラの作り方」とか「ストーリーの考え方」とかを話す前に「絵」の話をしたかというと、マジでまんがタイムきららにはありとあらゆる漫画が存在するからストーリーをどう描けばいいとか存在しなさすぎるからです。
本当に、この雑誌は、なんでもやります。バトルも、鬱も、ギャグも、萌えも、エロも、ファンタジーも、歴史モノも、恋愛も、SFも、あります*14
「きらら」は自らが築いてきたブランドイメージに対する執着がなく、むしろブランドイメージは結果からついてきたものでしかないため、なんでもやります
「きららアニメ」と呼ばれるアニメをざっと2つ3つみたことある人と、「まんがタイムきらら系列雑誌」を購読している人では「きらら」に対するイメージが完全に異なるものだと思って下さい
なのでストーリーに関しては何も言うことがありません。
個人的な意見ですが、私は誰かが内面に抱えた問題を物語の力によって解決しなくても関係が継続していくというような事さえ自然に描き得るのが日常系/きらら4コマの魅力だと考えています
が、こういった仕草さえも「きらら」における多様性の一つでしかありませんので、各々好きなものを描けば良いのではないでしょうか。
4. 起承転結
4コマ漫画は起・承・転・結によって構成されるという話がありますが私は普通にメチャクチャ無視しています
ギャグとして一切オチていなくても、「萌え」が4コマ目に来るだけできらら4コマは自然に読めるし、何もオチていないと思ったら次のレーンの1コマ目がオチになっていることもある
きらら4コマは1話が基本8ページ単位で構成されるため、新聞などに載っている4コマ漫画とは作り方が結構変わります
なんなら、毎回ギャグが綺麗にドンッドンッと落ちているとそれはそれで物足りない印象を感じたり、など、ここはかなり書き手のバランス感覚に委ねられる部分です
しかし、4コマ目には引力が存在します
4コマ目に「なにか」がないと、漫画の読み味が腑抜けた雰囲気になります。とにかく、なんでもいいのでその場の会話が一旦区切られるような「なにか」が発生しなくてはいけません
レイアウト比率が固定されているという点で4コマと映像はアプローチが似ているという話がありましたが、4コマ目、というのは4コマ漫画にしか存在しません
アニメで言うなら、いまギャグシーンですよ~という感じのBGMが終わるのが4コマ目です
作者ががギャグを切り上げてなくても、BGMはそこで終わる みたいな感覚があります
そのために繰り広げられる会話劇を「落とす」というのは一つの手段にすぎず、各々が描く漫画の雰囲気によって千差万別の「なにか」があるはずです
これも前項の「ブチ抜き」の話と同じで、4コマ目が必ず区切りとなることを徹底していれば、たまにオチない4コマなんかがいいアクセントになったりするので、基本的には「4コマ目で区切る」というのを意識していれば問題ないんじゃないでしょうか。
4コマ目さえ「なにか」のあるコマであれば、それ以外は割となんでもいいです、例えば

この2レーンなんですが、右4コマの「1コマ目」「2コマ目」「4コマ目」、左4コマの「1コマ目」「4コマ目」はすべて「4コマ目」として使用可能なコマです。読み味は少し落ちますが、左3コマ目もおそらくは。
つまりそれらのコマにはぬるめたにおける「なにか」があり、その他のコマにはそれがありません
昨今の…といっても、もうここ10年くらいのきらら漫画では「全コマが4コマ目」みたいな勢いの漫画も少なくありません。古典的な起承転結に則れば、4コマ目こそがギャグのボケとツッコミを行うべき場所になるわけですが、別にどのコマでもボケ・ツッコミ応酬をしていいんです。むしろ、前項で説明したようにプレイヤー(読者)のインタラクションと報酬のイタレーションが長いきらら4コマであるからこそ、開いたページに大量の面白を用意しておくことは非常に重要です。チンタラ起承転結なんかやってるとキリがありませんから、ずっとひたすらボケつづけてひたすらツッコミつづけましょう。
ある程度以上に1~3コマ目でボケ・ツッコミが成立している場合、4コマ目がオチていなくてもなんか成立したりしますし、4コマ目の会話自体はオチてなくてもなんか効果線とかフキダシの描き方とかをそれっぽくしたらなんかオチた感だけメチャクチャ出て成功みたいなパターンもあります
ぶっちゃけテキトーです
次のコマが最も面白くなるように描き続けるだけです本当は
むしろ巧い人になってくると4コマ目のオチの強度を調整することで回全体に緩急を齎し、ものすごい読みやすさにしている漫画なんかもあります。「ひよ&びびっど!」はその典型例です。
5.最強の1コマ

オハヨウゴザイマス🌅
『#ななどなどなど』第4巻
発売日の朝ですよ小町ちゃん! pic.twitter.com/i5s57b0ejZ— まんがタイムきらら編集部 (@mangatimekirara) 2024年12月24日
これはまんがタイムきららMAXで連載中の宇崎うそ先生による「ななどなどなど」の1コマです。
もう、この1コマだけでだいぶ面白いです。
4コマ漫画はそのフォーマット上、SNSとの相性が非常に悪く、「◯◯が◯◯する話」として投稿しても、画面が小さすぎて誰も読んでくれません。
そのため、SNSバズ、グッズ化、話題性、様々な点において、その1コマだけを切り抜いても面白い1コマを作ることは非常に重要になります
本日もう1つのご紹介は「ぼっちちゃんの肝臓売らなきゃコインケース」!なぜこのイラストをコインケースにしてしまったのか。いざこのケースの中のお金を取り出そうものなら…?という緊張感を帯びています。ちなみに裏面は大分造形の崩れた感じのイキってすいませんなぼっちちゃんです。#きらら展 pic.twitter.com/goROpv2emQ
— まんがタイムきらら展 (@kiraraten_jp) 2019年9月23日
前後のコマとの文脈上のつながりを無視して面白いコマを作る能力
私は、これがまったく出来ません
5年も連載しておきながら、全くバズったことがなく、前のコマと次のコマが常に何かしらの形でつながっているせいで、切り抜いても面白くありません
非常に、宣伝にこまる漫画です。すいません。
これってどうやったら身につけられる能力なんですか?
6. 2巻乙
きらら漫画をよく読む人間にとっては非常に聞き慣れた悪夢の単語「2巻乙」
これは連載している作品が打ち切りになった場合、だいたい2巻で完結することに由来する言葉です。
この項はあまりにも「実際にきらら各誌で連載する場合」を想定した話になりますので、かなりディープな話になります。あくまで趣味できらら的な漫画をやりたい場合や、他雑誌で4コマを描く場合には無視していい項目です。
きらら漫画はだいたい、以下のようなチャートを辿ります

クッソテキトーに今つくったフローチャートです。
たいていの場合、自分で持ち込むか、掲載のお誘いがあり、描き始めることになるでしょう。
ゲスト連載を越えるのはそれなりに大変ですが、なんとか本連載が開始したとしましょう。
だいたいの場合、2巻乙になると思って連載を組んだ方がいいです
アニメ化している作品が有名になっていて、たくさんあるように見えますが、当然ながらアニメ化せず2,3巻乙している漫画が最も多いです
そして、他の雑誌と異なり、きららは「アニメ化」に大きく依存した雑誌連載形態であり、アニメ化せずに人気を出し続けるのはかなり難しいです
きらら4コマは読者に求めるカロリーが通常の漫画の10倍以上あるため、きらら漫画というのは思っている以上に他雑誌に比べて読者の数が少ない、というのが理由です。打ち切りにならないレベルで売上を出すのは至難の業であり、それを破壊する手段は「アニメ化」しかありません。
雑誌の中で人気が出なければ連載を継続するのが難しいのですが、雑誌内の読者にのみ人気が出ても売上が不足するため、雑誌の外にも届くような漫画を描かなければならないのですが、普段4コマを読まない層に4コマを読ませるのはあまりにも難しい
これは漫画を描くユーザーの多くが辟易する話かもしれませんが、正直なところ、話題性を生みやすい作風を頑張って構築して連載するよりは、イラストを描き続けてXのフォロワーを増やす方がはるかに売上に直結しやすいです。
これ結構面白いしなんか話題にもなっているぞ…という漫画でも、行っても3巻とかで終わります。
とはいえ4コマは密度が非常に高く、1巻を出すのに1年かかるため、連載期間でいうならそれでも結構な長旅ではありますが…
あなたの漫画がゲスト連載で終了した場合、作風の時代性か、もしくは作画か、ギャグが、その全てかに問題があります。しかし、あなたの漫画が2巻、3巻で乙した場合、その全てに問題がない可能性は十分あり得ます。
私が愛読しているきらら4コマの多くは2巻乙作品です。どれだけ面白くても、2巻で終わることはあります。
私は萌え4コマでは「特に大きな出来事も起こらず、淡々と日常が続いている」みたいなものは十分求められていると思っているのですが、現代ではなかなかその作風で連載を続けるのは難しいです。

そして、それらを全て破壊する「アニメ化」とかいうナゾの現象についてですが…
はっきり言いますがアニメ化は運です。
長年きららを読んでいる人間であればあるほど、それがよく分かるでしょう。*16
もちろん、本当は運などではなく、複雑に様々な事情が絡み合った結果、アニメ化というナゾの現象が発生します
自分も立場上気になるため、担当編集やアニメ化経験のあるきらら作家さんから色々お話を聞いておりますが、アニメ化とかいう現象は、「人気が出たから」「雑誌側が推したいから」「面白いから」「アニメ化に向いてそうだから」とかいう理由で発生するものではありません。
"アニメ化する方法"など存在しません。アニメ化することになったら、アニメ化することになるし、アニメ化しなかったら、アニメ化しません
だからもう知ったこっちゃないんですよ好きなように好きなもん描けばいいんですよ

「え?でもお前の漫画、アニメ化してないのに5乙突破してるやん」という疑問が発生します
もちろん、普段応援してくださっている読者の皆様のおかげです。ありがとうございます。
しかし至極真面目に答えると、全くわかりません
雑誌内アンケートの結果が良いとか、単行本がすごく売れてるとか、ネット上でバズってるとか、言われたことがありません
本当にわかりませんすいません
こういうことも発生します。
私は常に、「あ、次の巻で終わりです」って言われてもいいように連載の予定を立てています。
これは「ぬるめた」が日常ギャグ・コメディなのでどうとでも最終回をでっち上げることができるためですが、ストーリーを主軸に据えて連載を始める場合は、ある程度の計画性を持ってスタートした方が良いでしょう。
2巻で完結しても大丈夫なようにストーリーを組んでいる(かどうかは知りませんがメっチャクチャ綺麗にまとまっている)ストーリーのあるきらら4コマとしては、あfろ先生の「シロクマと不明局」、器械先生の「スクール・アーキテクト」、谷津先生の「ホレンテ島の魔法使い」などが参考になるかと思います。
7.「!?」

左"キルミーベイベー 13巻" 右"キルミーベイベー 7巻"
なんでいきなりキルミーベイベーの画像が…という感じですが、私の漫画よりはるかに分かりやすいので…
これはかなり余談になりますが、「!?」の用い方などを考えると、きらら4コマを描くのはかなり楽しくなります
この2つのコマはどちらもキャラクターが爆発フキダシで叫んでいるわけですが、左のソーニャは「嘘つけ辛すぎだろ!」とエクスクラメーション込みで叫んでいるのに対し、右のやすなにはエクスクラメーションがありません
これを意識してキルミーベイベーを全巻読むとかなり良いと思います。なんというか、キルミーベイベーはエクスクラメーションの扱いが常にメチャクチャ適正であり、なぜ爆発フキダシにエクスクラメーションのない端的な台詞が詰まっているとクソ笑ってしまうのか、そしてなぜ、エクスクラメーションのあるフキダシも存在するのか、というのが明確で、どの回もリズム感がめちゃくちゃ良く、マジでありえないほど笑ってしまいます
言葉のニュアンスというのはきらら4コマにおいてとても重要です。「は?」と「はあ?」の違い、「?!」と「!?」の違い、「しね」と「死ね」の違い、「うるせー!」と「うるせえ!」と「うるせぇ!」の違い、などなど、考えるとすごく楽しいです。
参考になるきらら漫画
以上踏まえた上で完全に主観で「きらら4コマ的な漫画を描く際に」参考になる漫画たちを紹介させていただきます。

”アキタランドゴシック 2巻 25p”
技術的なステータスが完璧なヘキサゴンを形成しているきらら4コマです。秋田県、角の生えた女の子、ゾンビ、FPS、カフカ、などの突拍子もない奇天烈な要素たちが、一切の無駄なくビッチリ活躍している上に、4コマが常に面白く、唸ります。何回読んでも面白いです。本当に凄まじい一作です。
また、4コマの経験を元に「オムニバス・きらら漫画」とも言うべき特殊な形式で進みながら「日常系4コマきらら漫画」に関して嫌味ないメタ・フィクションなストーリーテリングを綺麗に2巻でまとめあげた後作「スクール・アーキテクト」も合わせて、器械先生の漫画は一度読んでおくべきでしょう

”平成生まれ3 30p”
ハトポポコ先生による「平成生まれ」「平成生まれ2」「平成生まれ3」の三部作からなる本シリーズは、4コマ漫画を面白くする小ネタに満ち溢れつつも、同時にキャラクター同士の関係性に現代的な萌えを忍ばせており、2025年の現在においても変わらずオススメのシリーズです
特に「平成生まれ2」の後半あたりから作風が完全に確立し、シンプルな処理の中に小技が綺麗に挟まっており、作画処理面で大きく参考になるでしょう

"平成生まれ3 93p"
また、「描かない」という手法を効果的に用いることで、エモーショナルな漫画体験を生み出しているという側面では、4コマ、ストーリー漫画問わず、平成生まれシリーズ以上に完璧な演出は見たことがありません。

"星屑テレパス 2巻 93p"
大熊らすこ老師による、見事アニメ化され現在も連載中の本作は、ほぼ全てのページで独自の特殊なコマ処理が施されており、きらら4コマの中でもありえない読み応えになっている1作です。擬音の一つ一つに拘りが見え、キャラクターの心情を追いかけるための演出の手腕の数に限りがありません。コマ枠自体がガタガタになったり、コマ枠が薄く背景に溶けていったり、コマをキャラクターの細かな芝居にのみ用いたりなど、大胆でありながら繊細な描写に圧倒されます。

"星屑テレパス 1巻"
4コマ漫画でシリアスに物語を展開する場合、コマが小さい・ページの密度が一定・4コマ目の引力 などによってシリアスさが読者に全く伝わらない…などの問題は発生しがちです。
4コマの合間にストーリー漫画ページを効果的に挿入する「ぼっち・ざ・ろっく!」とは異なる手法で、4コマの枠組みを活かす形で感情を伝えている「星屑テレパス」のアニメ映画的な読み味は、これもまた驚異的な作品であり、両者合わせて参考になるでしょう。
"シメジシミュレーション 3巻 123p-124p"
シメジ シミュレーション | 作品紹介 | コミックキューン
こちらはコミックキューンで連載された、つくみず先生による4コマ漫画です。こちらも星屑テレパスと同様に、コマに用いられている演出の幅に制限がなく、また、4コマのフォーマットの上であらゆる場所・前後左右にコマを割り、非常に情報量が多いため、凄まじい読み応えがあります。また単に、このペンタッチ・画風でここまで読みやすい画面が成立していることはかなり異常だと思いますので、何の参考になるかと言われると全くわからないのですが、まあ4コマはここまでできますよという一例としてオススメです。

"棺担ぎのクロ。~追憶旅話~ 4巻 25p"
また、きらら4コマの中でストーリーを描きたいというのであれば、きゆづきさとこ先生による本作を一読する必要があるでしょう。きららの歴史の中でも比較的初期の段階で、4コマのフォーマットを軸に旅物語を描いた作品です。背景やオブジェクトに関する一級品の描画力と、4コマの読み味を「絵本」のように捉え直したストーリーテリングは、他に類を見ません。
きゆづきさとこ先生は、「GA 芸術科アートデザインクラス」」という、まさしく最初期における「日常萌えきらら4コマ」も連載しており、こちらも含めて、現代においても最高レベルのクオリティの2作です。「GA」と「クロ」を読むだけで、きらら漫画の日常と物語の両極を垣間見ることができるでしょう。しかし現実的な話、もうこのレベルの絵が描ける作家を現代で見つけるのは困難を極めるだろうと思います。

"勤しめ!仁岡先生 4巻"
月刊少年ガンガンにて連載されていた、尾高純一先生によるギャグ4コマです。結構な量の登場人物がいるにも関わらず、読んでいるうちに自然と名前を覚えていきます。なんというか、連載開始は2006年のはずなのに、読み味はかなり現代のきらら漫画に近いです。大量のキャラクターが、常時爆発フキダシで、全コマ叫んでいます。ギャグを面白くするためのキャラ作りなどに非常に参考になると思います。

"ななどなどなど 3巻 p16"
本稿で軽く言及しましたが、宇崎うそ先生によるきらら4コマです。こちらもアキタランドゴシック同様、4コマのステータスが完全なヘキサゴンを形成しています。ありえない作画クオリティと、かなり鋭いギャグ。この2つは単に魅力であるだけでなく、2つの魅力のレベルが高すぎるが故に読んでいる時のギャップが凄まじく、それが魅力になっています。デジタル作画における現代きらら漫画の画作りとしては最も参考にしやすい漫画なのではないでしょうか。

"ななどなどなど 3巻 p39"
また、きららな日常の中で、アンドロイドのななどを起点に動き出すはずの物語が、動き出しそうで動かなかったり、ちょっと動いたりする塩梅が非常に愛おしく、そういったバランス感覚を含めてあらゆる意味でおすすめの漫画です。

"またぞろ。 2巻 78p"
幌田先生のまたぞろ。もまた、「きらら」が描いてきた女子高生の日常の中にある物語を、異なる視点から描ききった1作です。着せ替え回、水着回、調理実習…といった、きららなフォーマットの中を、不器用なキャラクターたちがゆっくりゆっくり歩んでいきます。それが例え、正しく"きらららしい"ものではなかったとしても。
個人的には、ここ数年のきらら漫画では最も2020年代の時代感にクリティカルな漫画であったと思います。きららに対するアプローチの一つとして、「スクール・アーキテクト」と同じくオススメの作品です。

"ひよ&びびっど! 1巻 50p"
ゆとりーぬ先生によるひよ&びびっど!に関しては本稿でも言及していますが、4コマ一つひとつや1コマごとの演出ではなく、8pをテンポ良く読ませるための工夫が詰まっており、他作品とは異なる点で非常に参考になります。とにかくキャラクターの行動が素早く、全てのキャラが縦横無尽に移動しつづけているような印象を抱く作風で、1冊を読み切る速度はきららの中でも最速かもしれません。読みやすさ・楽しさという点で、飛び抜けた作品だと思います。

"ご注文はうさぎですか? 12巻 69p"
なにをいまさらお前如きがKoi大先生のご注文はうさぎですか?をオススメしとるんだ という感じですが、敢えて。Koi大先生による現在連載中の「ご注文はうさぎですか?」は、"王"であり、きらら4コマが到達すべき理想の中の作画クオリティを毎回カラーページ込みで描ききり現実のものにしつづけています。王は、未だ誰よりも王であり、クオリティは各誌の中でも明らかに飛び抜けています。最高級のプロの仕事を鑑賞することは非常に大事なことだと思います。
”キルミーベイベー 12巻”
もうこのコマの時点で面白すぎるからやっぱり読んだ方がいいと思います
片っ端から紹介し続けてもキリない
この辺でおわり
さいごに: 無視しろ
これ漫画とかにおけるハウトゥーやチュートリアルの全てに言えるんですが無視してください
なんかとっかかりというか、とりあえず描くためになんか参照できるものがあるというのは大事だと思うんですが、どうせ最終的に我流になるし、、
あと別にこの記事を参照したから漫画が売れるというわけでもありません。というか、別にぬるめたはそんな爆発的に売れてる漫画というわけでもありません。つまり、このチュートリアルを書いているのは"別にそんなに売れてない作家"です。
ちなみにマジで売れてる作家のハウトゥーをガチ参照しても売れるかは普通に別の話です。はあ?
この記事で言われているようなルール感に近いのに2巻乙した漫画も全然あるし、この記事で言われているようなルール感に全く則っていないのにアニメ化している漫画も全然あります
しかも、この記事を書いている私は正直なところ、こういうことを意識して漫画を描けていません
は?
かなり後付でこれまでやってきたことを無理矢理言葉にしているだけで、ほとんどの部分は「勘」と「ノリ」と「締切ヤバいからなんか急いで考えよう」みたいな感じだけで形成されています。
いちおうぬるめたは5巻刊行しており、6巻も刊行予定です。誌全体で見れば比較的かなり長生きな漫画になるかと思います。微妙な立場の作家ではありますが、それが良くも悪くも参考にしやすいのではないでしょうか。ていうかチュートリアル一切ないの怖すぎるんだよ
自分が連載始まった時マジでワケわかんなかったし、編集に聞くのも苦手だったし、作家友達いなかったし、、、、
まあなんかぜひ皆さんも私の考えた最強のきらら漫画を錬成してみてください
おわり
補遺(2025/06/10)
思っていたより多くの人に記事を読まれ、なんか反響まあまああったので、そっからいくつか追記
ストーリー漫画ときらら4コマは逆方向に成長している
記事中では「きらら4コマは通常の漫画に比べて読者に要求するカロリーが10倍」と言っていますが、厳密に言うのであれば、15年以上前くらいはそこまできらら4コマとストーリー漫画の消費カロリーに差はなかったと思います
昔の漫画はコマ数も多く、殆どの漫画が基本枠に収めて描かれていました
ストーリー漫画が漫画ユーザーの要望に答える形でどんどん読みやすく、どんどん1ページあたりの情報量を減らし、どんどん文字を大きく少なくし…と変化してきた中、ガラパゴス化していたきらら4コマは真逆の方向に成長し、結果的にどんどん1ページあたりの情報量が多くなり、文字が多くなり…と変化してしまった
結果、現在のきらら4コマの在り方は外から見れば異形であり、そしてなにより、それが現代きらら4コマの魅力でもあるわけです。
異形化・先鋭化した文化って面白いんですが最終的に自己言及しかしなくなって結局なんか全部同じじゃんみたいになって消滅しがちなのでちょい怖いですね
まあなんというかストーリー漫画もきらら4コマも、そのまま行っても未来がなさそうではある
また、細かい傾向として、「まんがタイムきららMAX」だけ明らかに文字数が多すぎる気がします。私はMAXが好きです。
ハウトゥーの必要性について
「ルールを破壊することで傑作が生まれるのでハウツーは読まなくていい」的な言及が未だにちょくちょくありますが守破離とかないまま暴れても基本的に無様なだけじゃないの
毎回思うけどこれワナビが言うならまだしも読者が言うのはなんかちゃうくね感ある
私のハウトゥーなんかよりもっとこういうのを参照した方がいいですよみたいなことができればいいんですが殆どネット上に存在しないので半ばヤケクソで書きました
まあでも私もマンガの原理読んでゾワゾワしたんでそもそもハウトゥーってなんかそこはかとなくキショいよなという気持ちはわかります
ハウトゥーってゴミかも
絵の話補足
きらら4コマに求められる絵と、ストーリー漫画に求められる絵は結構異なります。萌えか萌えじゃないかとは関係なしに、コマサイズの違い故に描ける絵の種類が全く異なる
4コマの1つを埋められる絵を描けたとして、それをストーリー漫画に転用はできないし、逆もしかり
なんというか絵の密度とかトーンの量とか、全然違うんですよね うまくいえない
自分はきらら4コマ誌の後にストーリー漫画誌で連載しましたが、全て学び直しだなと思いました
また、漫画の絵には速度の概念が存在すると思っているんですが、なんか話がかなり逸れる気がするのでそれはまた別の機会に
あの漫画に関する言及がないぞ
うるせえ キリねえって言ってる
私だってゆゆ式とか空の下屋根の中とかの話もしたい 本稿の趣旨に最も合う漫画を選んでいる
あと私はGAとかひだまりとかがあった時代以降のきらら4コマしか殆ど知らないし、それ以前にあった萌え4コマ・ストーリー4コマについてはほぼ把握していません。勉強不足
無料で公開していいのか/手の内を明かしていいのか
私はエンジニアじゃないけどソースコードを公開しているゲームが好き

草
マジやん
テュートリアルって言います
*1:「らき☆すた」や「あずまんが大王」は視点によってはきらら前史的な立ち位置と考えることもまあできるだろうということで
*2:ネットとか本とかで2,3回見たことあるしなんかみんなそれくらいで描いてるから多分そうなんだろうというかなりテキトーな認識
*3:一部の漫画を除き、漫画は紙面全体に対して一回り小さい枠の中にすべてのコマとセリフを収めるように描かれている
*4:ムチャクチャ諸説ある
*5:舞台となっている場所のレイアウト・キャラクターの立ち位置・オブジェクトの大小が分かるカットのこと
*6:主に対話シーンなどでキャラクターの位置関係を保ち、観客に混乱を与えないための画面上の仮想の線。説明がムズイのでググろう
*7:全然関係ないのですが、漫画はモノクロであるため、必然的にメインの2キャラクターは「黒ベタ処理」と「ホワイト処理」になりがちです。黒ベタは黒髪キャラになりますが、ホワイト処理は金髪キャラクターなどになることが多く、また、日本のIPの出発点はマンガであることが多い(ソースなし)ので、結果的に黒髪と金髪の組み合わせってメチャクチャよく見るし、歴史を感じるので好き
*8:これはつまり、「きらら漫画はカロリーが高い」→「読者はカロリーを消費する覚悟と準備を持ってきらら漫画を読んでいる」という理論に当てはめるのなら、よりハイカロリーで面白いものを提供した方がいい、という説に繋がります
*9:同ポ: 同じ背景画を2つ以上のカットで使い回すこと。これがテンポ感に作用する例としては、ゲゲゲの鬼太郎4期105話「迷宮・妖怪だるま王国」などが分かりやすい
*10:とかいいつつ、棺担ぎのクロの背景描写を堪能しているわけですが…
*11:個人的に、アスペクト比の関係から、4:3時代のアニメ演出との親和性がより高いのでは…と感じているのですが、どうでしょう…
*12:古のインターネット言葉ですいませんが、いわゆる"クレイジーサイコレズ"です
*13:ゆるキャンにおける"場"は学校外すべてであるとも言えます。場の中で個々人が孤立することができるというのは他の部活モノにはあまりないポイントで、尚且つ彼女らはグループチャットを通じて常につながることができます。ある意味で、ゆるキャンにおける場はあのLINE風のチャット画面の中なのかもしれません
*14:流石に歴史のある雑誌なので、本当に探せばなんでもあります。また、きらら漫画においては多少読者人気を獲得できなかったとしても連載開始した以上は2巻まで刊行されやすいため、おおよその作品がそのテーマを完遂しきっています。
*15:実際にこのコマはX上に非公式で投稿され、知る限り2回ほどバズっています。これが作品の宣伝につながるのか?と疑問の方もいるかもしれませんが、バズり直後はそこまで部数に繋がらなくても、人の記憶の片隅にその漫画が宿るだけで、今後の宣伝や売上に響いてくるのだろうと、私はなんとなくそう思います
*16:この世界は最初から全て間違っているんです 私は、「平成生まれ」がアニメ化しなかった時に、それを知りました。「セカイ魔王」も、「またぞろ。」もアニメ化しなかった世界線に、私達はいます。この世界は間違っています。最初から。
*17:学校内社会が描かれそこに立ち向かおうとする小町、学校内システムの中でドロップアウトしたことちゃん、学校の外でチームワークに立ち向かうぼっち、学校内にいるのに繋がらない千明、2020年代前半のきららでは、"陰キャ"などといったワードでブランドイメージ上の"きらら"を改めて俯瞰的に捉え直すような作風が目立ったように思えます
