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『ひどい民話を語る会』からメロディーガスの話へ

 京極夏彦さん・多田克己さん ・村上健司さん ・黒史郎さんの共著『ひどい民話を語る会』(角川書店、2022年10月28日発行)が本年10月に文庫化されたようです。
https://www.kadokawa.co.jp/product/322505000522/


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 民話と妖怪を愛好する4名がひどい民話を紹介し語り合う本です。ひどい民話のそのひどさを味わい楽しむスタンスです。
 前に読んだとき特に印象的だったのは、「桃太郎」の類話にひどいのがいろいろとあって、それがじつに面白かったこと。爺さん婆さんを他界させてしまう桃太郎、素行が悪くて家から追い出され仕方なく鬼退治に向かう桃太郎、鬼に負けちゃう桃太郎などなど😂f:id:koikesan:20251108112039j:image

 それを思うと、『ドラえもん』の「 ぼく、桃太郎のなんなのさ」(てんとう虫コミックス9巻)は、ひどくない側の「桃太郎」類話といえそうです。

 ご存じのとおり、「 ぼく、桃太郎のなんなのさ」は映画化され1981年の夏に公開されています。

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 中編の夏休み映画ということで映画ドラえもんシリーズから外されることが多い作品です。


(以下、お下品系の話題になるので苦手な方はお気をつけください)

 

 

『ひどい民話を語る会』を読むと、昔話の中には「オナラでよい音色を奏でる話」と「オナラの噴射力で飛ぶ話」がそれぞれ多様に存在するんだと知ることができます。そうした昔話は『ドラえもん』の「メロディーガス」(てんとう虫コミックス4巻)の源流と考えることもできそうです。「メロディーガス」には「よい音色」「飛ぶ」どちらの要素も含まれていますから。

「メロディーガス」の作中でドラえもんのび太のために出すひみつ道具は音楽イモ。見た目はほぼサツマイモで、これを食べるとお尻からオナラ…ではなくメロディーガスが出て口を閉じたまま歌をうたうことができます。結局のび太は音楽イモを食べすぎてうまくうたえなかったのですが、その前にドラえもんが「ポッポッポ ハトポッポッ♪」と見事にうたってのび太にお手本を示しました。ドラえもんが発するメロディーガスの歌を聴いたのび太は「いつものドラえもんのどら声じゃないぞ。そよ風みたいにさわやかな声だなあ」とうっとり。
 すなわち、それが「メロディーガス」の作中で見られる「オナラでよい音色を奏でる話」の要素です。

 そして、音楽イモを食べすぎたのび太は最後にバボンとガス爆発を起こし、屋内から空へ飛んでいってしまいます。メロディーガスがジェット噴射のように噴き出したのです。
これが「オナラの噴射力で飛ぶ話」の要素になりますね。

 

 といったところで、『ひどい民話を語る会』を参考に、「オナラでよい音色を奏でる話」「オナラの噴射力で飛ぶ話」としてどんな昔話があるのか、その具体例を見ていきたいと思います。

『ひどい民話を語る会』の中にある多田克己さんのコラム「もっと放屁の話」でこのように書かれています。

 日本の民話にはゲームのような魔法使いは登場しないし、神か天狗の助けがなければ空を飛ぶこともない。(略)ところが特殊能力を持つ者の話はある。その代表が「屁の力」の能力者だ。
「屁ひり娘」とか「屁ひり嫁」、「屁ひり姫」などのタイトルの昔話で、若い女性の一発の放屁が大砲のような威力をもち、人をふっ飛ばしたり、家を破壊してしまうような話だ。

 ここで紹介された「屁ひり娘」「屁ひり嫁」「屁ひり姫」などの昔話は、若い女性の一度のオナラが爆発的な威力を持ち、家族など近くにいる人をふっ飛ばしたり家を壊してしまうパターンが多いのですが、なかにはオナラをした女性自身が自分のオナラの威力で外へ飛んでしまうパターンもあるそうです。自分が飛んでしまう話の具体例として、多田さんはこう書いています。

 結婚式の日に、花婿が花嫁にムリに放屁をするよううながしたところ、嫁は噴射で実家のある里の方向へ飛んで行ってしまい、二度と帰ってこなかったという話もある。

 また、コラム「もっと放屁の話」とは違うページですが、村上健司さんが、お嫁さんが自分のオナラのガス圧で家の破風を破って家の外に飛び出す話を紹介しています。そのお嫁さんが放物線を描いて飛び込んだ先は池だったのですが、そのまま亡くなってしまうのだとか。

 若い女性が自分のオナラの噴射力で遠くへ飛んでいくだけでもひどい事態ですし、その結果二度と帰ってこないとか亡くなってしまうとか、まさしく“ひどい民話”ですね😂


「メロディーガス」には「オナラでよい音色を奏でる話」と「オナラの噴射力で飛ぶ話」の両方の要素が含まれていると先述しましたが、いま紹介した2つの昔話の具体例は「オナラの噴射力で飛ぶ話」のほうになりますね。

 もう一方の「オナラでよい音色を奏でる話」にはどんな事例があるかといいますと…

 コラム「もっと放屁の話」から多田さんの文章を引用しましょう。

 いっぽう「屁こき爺」や「屁こき婆」の昔話は、屁の威力よりもこの音色や臭いに焦点が当てられる。

「鳥呑爺」の昔話は、鳴き声の良い小鳥を食べたら、音色の良い屁をするようになった爺の話だ。

「屁ひり婆」の話では、婆は鶯の鳴き声のようなすばらしい屁をして殿様から褒美をもらうが、隣の欲張り婆は「わたしこそ日本一の屁ひり婆じゃ」と言いながら糞を出してしまい、殿様は怒って牢屋にぶちこんでしまう。

 そのように「屁こき爺」「屁こき婆」といった昔話に「オナラでよい音色を奏でる話」がいくつもあるようです。
「メロディーガス」では音楽イモを食べることで「オナラでよい音色を奏でる話」になりますが、ここで紹介された昔話では鳴き声のよい鳥を食べていますね。


ドラえもん』におけるオナラの噴射力ネタといえば、「メロディーガス」のほかに「野比家が無重力」(てんとう虫コミックス32巻)が思い出されます。
 この話は単行本収録時にけっこう描き足し・描き換えがあって、初出時10ページ・60コマだったものが、単行本収録時12ページ・77コマになっています。そのさい、のび太のオナラの噴射力がパワーアップしています。

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↑画像1枚目が描き換え前、2枚目が描き換え後。
野比家が無重力」の初出は「小学四年生」1978年10月号ですが、私は同誌を所有していないので、上掲の描き換え前コマ画像は「小学四年生」1979年6月号の別冊ふろくに再録されたもの(サブタイトル「重力ちょうせつ器」)から引用しました。描き換え後のコマ画像は、てんとう虫コミックスドラえもん』32巻(1985年1月25日初版第1刷発行)より引用しています。 

 

 描き換えによって擬音が「ブス」から「ボム」へ。水玉化したオシッコも大増量しています😅
 描き換え後のほうが、のび太の放屁噴射力がアップしているように見えますし、このコマにおけるお下品表現が増してよりインパクトのあるシーンになっています。

 

※追記:「おれさまをグレードアップ」(てんとう虫コミック44巻)では、ラストのコマでジャイアンが自分のオナラの噴射力によって飛んでいってしまっていますね😂 (ザオザルさん、ご指摘ありがとうございました)

 また、「ロケットガム」(初出「小学一年生」1972年3月号)でものび太がオナラの力で飛んています。




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