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へたっぴドラえもんと「テケレッツのパア」

 数日前のこと。北海道の藤子ファン仲間・さとちゃん氏が、『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』で多くの人の心を揺さぶったへたっぴドラえもんの自作フィギュアをお贈りくださいました。

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 なんと、ありがたいことでしょう! ひたすら嬉しい限りです。

 へたっぴドラえもんが、二次元の映画(および絵画)の世界から三次元の世界へ飛び出してきてくれたのです。


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 おかげさまで、家に帰るたびにへたっぴドラえもんが待っていてくれる生活が始まりました😄 本当に癒やされます。


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 劇中のへたっぴドラえもんはのび太と対面してすぐ「テケレッツのパア」という不思議な言葉を発します。この言葉を聞くとただちに思い出すのが、『ドラえもん』の一編「魔法事典」(てんとう虫コミックス37巻収録)で魔女っ子ノブちゃんが唱える呪文です。魔女っ子ノブちゃんは、のび太が観ているテレビ番組の主人公。彼女は魔法を使うとき親指・人差し指・中指の3本を立てた右手を上げて「テケレッツノパー」と呪文を唱えるのです。へたっぴドラえもんが言った「テケレッツのパア」は、映画制作陣が「魔法事典」のその一コマをオマージュしたものです。f:id:koikesan:20250516191615j:image
・『ドラえもん』「魔法事典」(てんとう虫コミックス『ドラえもん』37巻、初出「小学二年生」1982年6月号)より引用

 

 そもそも、この「テケレッツのパア」なる呪文は、落語『死神』の中に出てくるものです。落語好きの藤子・F・不二雄先生が『死神』に出てくる呪文を借用して魔女っ子ノブちゃんに言わせたのです…。というのはファンの間ですでによく指摘されていることですが、ここでは、この「テケレッツのパア」なるフレーズが落語『死神』の呪文として使われだす以前から別の形で使われていたことを紹介したいと思います。これからの話は書籍『落語『死神』の世界』(西本晃二・著、青蛙房、2002年発行)を主な参考文献にして進めていきます。

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 落語『死神』がつくられたのは明治時代のことです。はっきりとした年は確定できませんが、明治20年代ごろ(明治19年の可能性もあり)ではないかということです。
 創作した人物は(100%の確証はないものの)三遊亭円朝と言われています。『死神』といえば、先述した呪文のフレーズが印象的なわけですが、じつは、創作されたばかりの最初期の『死神』には呪文がまったくなかったのだそうです。(完全な証拠があるわけじゃないため、絶対になかったとも言い切れないそうですが)

 そして、「テケレッツのパア」というフレーズは、もともとは『死神』の呪文ではなく、明治時代に活躍した四代目立川談志が噺を終えたあとの余興の踊りで中国語の発音を茶化して言っていたものでした。その踊りが談志の芸として大いに当たったため、そこから「テケレッツのパア」というフレーズが『死神』の噺の中に取り込まれ、呪文の言葉になったのです。

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 落語『死神』の呪文の基本形は「アジャラカモクレン、〇〇〇、テケレッツのパア」です。これを見れば『ドラえもん』ファンの中にはピンと来る方も多いかと思います。「テケレッツのパア」が『ドラえもん』に出てくるように、「アジャラカモクレン」もまた『ドラえもん』に出てくるんですよね。
「アジャラカモクレン」が出てくるエピソードは「時限バカ弾」(てんとう虫コミックス41巻)。時限バカ弾の破裂によってバカ化したママが叫ぶ奇声の一部として「アジャラカモクレン」と発せられるのです。
『落語『死神』の世界』は、この「アジャラカモクレン」が「亜闍利か目連」と聞こえるとし、仏教を取り込んたものと解釈しています。

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・『ドラえもん』「時限バカ弾」(てんとう虫コミックス『ドラえもん』41巻、初出「小学三年生」1985年7月号)より引用

 

『死神』の呪文「アジャラカモクレン、〇〇〇、テケレッツのパア」の〇〇〇に入る語は、噺家によって違っています。落語とは同じ演目でも噺家によるアレンジで変化する話芸なのです。たとえば、六代目円生は「エヴェレスト」、その弟子の円楽は「アルジェリア」、十代目小三治が「キュウライスウ」といった具合です。さらに言えば、「アジャラカモクレン、〇〇〇、テケレッツのパア」とはまるで異なる呪文もあり、落語『寿限無』の子どもの名前を唱えるとか、「エヘン」一つでおしまいといった例もあるそうです。


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 私の好きな詩人、谷川俊太郎さん(昨年他界されました)が「新潮」2023年3月号で『死神』という詩を発表しています。この詩にも「アジャラカモクレンテケレッツのパー」が出てきます。ラジオから柳家小三治の声でその呪文が聞こえてくるのです。

 また、シンガーソングライターの米津玄師さんにも『死神』という曲があり、歌詞に「アジャラカモクレン テケレッツのパー」が使われています。


『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』でへたっぴドラえもんが発したことで注目を浴びることになった「テケレッツのパア」。そのフレーズを少し探究するだけでも、こんなに興味深い話に遭遇できるのですね。

 

 

【追記】
 アニメ『ポコニャン!』のエンディングソングの一つ『ポコニャラ音頭』の作詞者は、原作者の藤子・F・不二雄先生です。この曲、藤子F先生どうしちゃったの?というべきか実に藤子F先生らしいというべきか、ひたすらオノマトペばかりが続くナンセンスな珍歌詞になっています。曲を聞けば聞くほど妙な中毒性にやられていきます。
 そんな歌詞の一節に「レッツ パーパー テケレツ パーパー」とあります。これも落語『死神』の「テケレッツのパア」をベースとしたフレーズですね。藤子F先生は「テケレッツのパア」という語感をたいそう気に入っておられたのでしょう😄




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