4月27日のことです。
名古屋古書会館の古書即売会で買い物をしてきました。




「欲しいな」と思った品はいろいろとありましたが、結局お迎えしたのは一点につき200円〜400円の範囲の品ばかりとなりました。古書を買い物するさい「安い!」というのはやはり大いなる魅力なのです。


映画『ヴェラクルス』のBlu-rayが300円だったので購入しました。『ヴェラクルス』といえば、『まんが道』で満賀道雄と才野茂が手塚治虫先生と一緒に鑑賞した西部劇映画としてとても印象深いです。
そこで、『まんが道』で描かれた『ヴェラクルス』についてちょっと見てみましょう。
満賀と才野が本格上京した初日のことでした。手塚先生が2人の上京祝いで池袋駅前の劇場へ映画を観に連れて行ってくれます。そのとき観た映画が『ヴェラクルス』だったのです。
この映画のラストに1対1で銃を撃ち合う決闘シーンがあります。『まんが道』では、負けたほうのガンマン(バート・ランカスターが演じるジョー・エリン)が倒れる寸前ニヤリと笑う演出が賞賛されます。手塚先生と満賀&才野のあいだで、こんなやりとりがおこなわれるのです。
手塚「どうだった『ヴェラクルス』は?」
満賀「はい!とってもおもしろかったです!」「特にラストの決闘のところがよかったです!」
才野「バート・ランカスターが拳銃をホルスターへ入れてニヤリと笑ってバタッと倒れるところが!」
手塚「うん!あそここってるよねえ」「あそこはモチロンクーパーが勝つことに決まってると観客は思ってるよね」「ところが撃ち終わった後ランカスターがホルスターへクルクルッストッと拳銃を入れてニヤッと笑うと観客はあれっ!?クーパーが負けたのかな……とビックリする」「ところが次の瞬間ランカスターがバタッと倒れる!すると観客はああやっぱり!と満足するんだ!」「あれがもしガガーンと撃ち合ってすぐバタッと倒れたらまるでつまらない決闘シーンになっていただろうね」「あのランカスターがニヤッと笑ってバタッと倒れる5 6秒のショットが『ヴェラクルス』という映画を傑作にしてるんだよ!ぼくらもまんがを描くときにこういった点を忘れちゃいけないな!」
このように、手塚先生は「あのランカスターがニヤッと笑ってバタッと倒れる5 6秒のショットが『ヴェラクルス』という映画を傑作にしてるんだよ!」と分析し賞賛しています。私にとってみれば「『まんが道』のこのシーンが『ヴェラクルス』という映画を(それまでそういう映画があることすら知らなかったのに)とても印象深いものにしてるんだよ!」と訴えたくなるところです(笑)
購入した『ヴェラクルス』のBlu-rayでひさしぶりにこの映画を観返してみました。
『まんが道』を読んだ印象だと、ランカスターが倒れる寸前ニヤリと笑ったときその顔がアップになるイメージですが、じっさいにこの映画を観ると、撃ち終えた直後のランカスターの姿はけっこう遠くのカメラから映されており、ニヤリと笑った彼の顔はアップになっていません。『まんが道』で描かれたイメージとちょっと違うのです。
劇場の大スクリーンであれば、遠くから映されたランカスターのニヤリ顔でも観客にしっかり伝わるかもしれませんが、私のPCのような小さめの画面だと「言われてみれば白い歯が見えてて笑ってるな…」という感じでしか彼の表情を認識できません。
公開当時この映画を劇場で観た人たちには、アップで映されたに等しいほどランカスターのニヤリ顔が強烈に記憶に刻まれたということなのでしょう。
あるいは、こんなことも思いました。決闘で銃を抜く直前にはランカスターの顔がアップになっており、そのとき彼は前歯を見せて笑っていたので、その印象が非常に強いがゆえに、銃を抜いて撃ち合ったあともランカスターのニヤリ顔がアップになったかのように記憶が残りやすかったのかもしれないなと。
『まんが道』で描かれた『ヴェラクルス』とじっさいに観た『ヴェラクルス』とで印象が違うなと感じた点がもう一つあります。『まんが道』だとランカスターはうつ伏せに倒れるイメージなのに対し、じっさいの映画ではランカスターは後ろに(仰向けに)倒れているのです。
こういうところにも藤子Ⓐ先生による独自イメージが表現されているのですね。
藤子ファン的に『ヴェラクルス』のことを言うなら、藤子・F・不二雄先生が『のび太の宇宙開拓史』における“のび太vsギラーミン”の1対1の決闘でこの演出を取り入れたこともまた重要ポイントです。
Ⓐ作品でもF作品でもこの映画のニヤリ顔演出が取り上げられているわけです。
ギラーミンつながり?で、このパンフレットも買いました(200円だったので)。



ジョン・ギラーミン監督の『キングコング』(1976年)のパンフレットです。
『のび太の宇宙開拓史』のギラーミンのネーミングは、『キングコング』のギラーミン監督から採ったのかな、と思ったり思わなかったり。
そして、『ウエストワールド』のDVDが300円だったので購入。さらに、『ソイレント・グリーン』のパンフもゲットしました。


この2作品が並ぶと、これらの映画を観た藤子・F・不二雄先生がご自分の作品である『休日のガンマン』と『定年退食』にそれぞれ似ていることにショックを受け、安直にマネしたと受け取られるかもしれないか絶対に盗作などではないと訴えておいでだったことを思い出します。
藤子F先生の該当コメントを引用しましょう。
「話はガラリと変わりますが、かねて機会があれば言いたかった弁解を一つ。収録作品中の「休日のガンマン」と「定年退食」についてです。「休日のガンマン」は昭和四十八年、『ビッグコミック』に発表した物ですが、書き終えて間もなくユル・ブリンナー主演「ウエスト・ワールド」の試写を見ました。そして、あまりの類似にゲッソリしたものです。単に作品として発表した部分だけでなく、アイディアとしてはあったのですが頁数の都合で省略した時代劇ブロックまでが、映画にはちゃんとあるのです。もちろん偶然の一致です。試写を見るまではこの映画の存在も知りませんでした。参ったなあと思っていたら、次は「ソイレントグリーン」です。これ又、少し前に書いた「定年退食」にそっくり。安直にマネしたと、読者に受け取られても仕方のない状況でした。今もそう思ってる人達に声を大にして言いたい。絶対に絶対に盗作などではありません!」『愛蔵版 藤子不二雄SF全短篇 第1巻 カンビュセスの籤』(1987年2月20日、中央公論社発行)

そんな藤子F先生の発言がなかなか印象深いので、私のなかでこの2つの映画はワンセットで記憶に刻まれています。それゆえ、『ウエストワールド』のDVDと『ソイレント・グリーン』のパンフレットを同じ日同じ場所で安く買えたことに妙なラッキー感をおぼえるのです。

こんな本も購入しました。どんな中身かは気にせず、完全に表紙買いでした。200円なので買いやすかったです。
※『ソイレント・グリーン』と『キング・コング』については過去に当ブログで書いていますので、参考になさっていただければ幸いです。
■映画『ソイレント・グリーン』がテレビ放送
https://koikesan.hatenablog.com/entry/2019/06/11/181316
■キング・コングと藤子作品