足を運んだのはもう1ヶ月も前のことですが、「ぐりとぐら展」が名古屋駅のタカシマヤで2月17日から3月2日まで開催されました。


会場に入ってすぐのところにでっかい卵が置いてあって、即座に『ぐりとぐら』の空間へ誘い込まれました♪
途中、でっかい毛糸玉やでっかいカボチャも置いてあって、自分がぐりとぐらのサイズになったかのような感覚に(笑)
展示品の中心は原画でした。『ぐりとぐら』以前の作品、『ぐりとぐら』本編7作品、『ぐりとぐら』の広がる世界というふうに3つのコーナーにわかれ、その筆致や色彩、世界観を楽しめました。

・私が持ってる『ぐりとぐら』の絵本。

・「ぐりとぐら展」のチケット。卵型でかわらしかったのですが、入場時に端がもぎられてしまいました(笑)

・「ぐりとぐら展」図録は2冊セット。
会場内では、中川李枝子さんと宮崎駿監督の対談映像も流れていました。ジブリで『ぐりとぐら』アニメ化の準備をしたこともあったとか。
宮崎監督は『ぐりとぐら』について、こんな意味のことをおっしゃっていました。ふつう大きな卵を見つけたら「誰の卵だろう?」「この卵の親が探してるかもしれない」「卵が割れて出てきた子をどうやって育てよう」といった発想になることろを、『ぐりとぐら』では卵を見たとたんカステラにして食べちゃおうとする…。そこがすごい、と。
そんな大きな卵を作者の中川さんはどのように発想したのか。保育園に勤めていたときの出来事がもとになっていたのだそうです。園長先生が子どもたちにご馳走しようとホットケーキを焼いてくれたことがあって、そのときの子どもたちの喜びようがすごかった。それを見て、当時最も高価なお菓子というイメージだったカステラが思い浮かんで、カステラの材料として大きな卵を登場させたのだとか。
中川さんはホットケーキで子どもたちが大喜びした理由のひとつとして、「同じ物を大勢の友達と分け合って食べたこと」と語りました。『ぐりとぐら』シリーズって、第1作めに限らず“大勢の仲間たちが一緒に食事する”場面がよく出てきます。楽しそうで、賑やかそうで、おいしそうなステキな場面です。そんな場面の原風景が、保育士時代の中川さんの実体験にあったわけですね。
「ぼくらの なまえは ぐりと ぐら このよで いちばん すきなのは おりょうりすること たべること」という文章があるくらいですから、『ぐりとぐら』のメインテーマは「食べること」だと言っても過言じゃなさそうです。
仲間たちと共に食事する場面がとても魅力的なシリーズもの、という点で、私は「大長編ドラえもん」と通じるものも感じました。
大長編ドラえもん第1作『のび太の恐竜』の時点で、すでに“仲間たちと共に食事する場面”が描かれています。白亜紀の世界ヘ行ったいつもの5人が焚き火を囲んで、ドラえもんが出したコンク・フードを食べる場面です。でも、このときの皆はあまり楽しそうじゃありません。コンク・フードはおいしくて栄養たっぷりなのだけど、それだけでは物足りない…といった雰囲気なのです。むしろ、その後の、白亜紀の世界で食材を収穫する場面のほうが楽しげです。海に潜ってカキを見つけたリ、ピー助に魚を捕ってもらったり。森ではクルミやイチジク、ブドウなども採れました。集めた食材を「万能加工ミニ工場」で調理して、保管のため缶詰めにします。ソテツの実のパン、シダのサラダ、魚介類は刺身やフライやムニエルに。白亜紀の動植物を食材にした料理に漂うすこし・ふしぎ感がたまりません。
第2作めの『のび太の宇宙開拓史』では、楽しそうな食事場面が描かれます。コーヤコーヤ星でクレムが作ってくれたケーキを食べる場面です。チャミーに「地球ニコンナオイシイ物アル?」と訊かれたドラえもんは、どら焼きを出してチャミーに半分あげます。チャミーは「オイシイ!!」と跳び上がります。コーヤコーヤ星と地球という、とてつもなく離れた星の住民が、それぞれの星のおいしい食べ物を相手に食べてもらうことで友情を深める…。ステキなシーンです。
第3作めの『のび太の大魔境』になると、楽しそうな食事場面がますます念入りに描かれます。アフリカのジャングルへ冒険に出かけた一行がムードたっぷりに昼食を楽しめるよう、ドラえもんは「植物改造エキスI 」を出します。これを使うと、各人の食べたい料理が、木の実の中にできあがるのです。ドラえもんは皆から食べたい料理を訊きます。たとえば、のび太はカレーライスと答えました。ドラえもんがカレーライスのアンプルをそこらへんに生えている木に注入すると、花が咲いて実がなって、収穫した実を割ると中身がカレーライスになっているのです。そんなふうにして、ホットケーキの実、カニピラフの実、ラーメンの実、ドラやきの実、ドッグフードの実と、各人が食べたいと言った料理の実がなるのです。植物ができあがった料理を実らせる!もうそれだけのアイデアで、読んでいる私もウキウキ気分になります。
その後ドラえもんは「植物改造エキスII」を出して、大木のてっぺんを変形させ見晴らし台のようにして、そこで全員で食事できるようにします。すばらしい眺めのなかで食べる料理は、さぞかしおいしいことでしょう。
4作めの『のび太の海底鬼岩城』は、歴代大長編ドラえもんのなかでも最もたっぷりと“仲間たちと共に食事する場面”を描いています。冒険の舞台は深海。これから昼食にしようというとき、ドラえもんは『大魔境』と同様に皆から食べたい料理を訊きます。そして、「海底クッキングマシーン」を使って各人から注文を受けた料理を作りだし、テーブルに並べるのです。これらの料理はぜんぶ海中に生息するプランクトンを加工したものです。それを聞いた皆は、これがプランクトン!? どう見ても本物だけどな、と驚きます。読者である私も、食卓に並んだお子さまランチやパンケーキ、カツどん、フィレミニョンステーキ、どら焼きがすべてプランクトンでできている、という情報にセンス・オブ・ワンダーを感じ、深海という舞台を効果的に活かしたその料理方法に感嘆しました。昼食を食べ終えたのび太は寝そべりながら「晩ごはんが待ちどおしいね」と言います。本作では晩ごはんの場面もしっかり描かれるのです。昼食はテントアパートの室内で取りましたが、晩ごはんはテント外の庭でバーベキューです。昼食と同じくプランクトンを材料にして、牛肉・ネギ・ピーマンを作りだします。そして「水中キャップファイア」! 水中で不思議に燃え上がる火を囲んだバーベキュー場面に目を奪われます。ジャイアンのおいしがる様子が抜群!
その後の大長編ドラえもんでも、印象深い食事場面がいろいろと描かれていきます。“帰らずの原”で美夜子さんが出した「北風のくれたテーブルかけ」を使って皆が食べたい料理を食べた『のび太の魔界大冒険』、鏡面世界の無人スーパーマーケットから持ってきた食材を使って空き地でバーベキューパーティーを開いた『のび太と鉄人兵団』、七万年前の日本で「畑のレストラン」を栽培し、実った料理(カレーライスやハンバーガーセットなど)を食べる『のび太の日本誕生』(『日本誕生』では、ヒカリ族の宴会で野性的なごちそうを食べる場面も印象的)などなど… 1作1作すべてを振り返っていると止め処なくなるので、ここでストップしておきます(笑)
大長編ドラえもんにおける“仲間たちと共に食事する場面”の魅力や意義は非常に大きい、とあらためて感じました。異世界冒険の途中の憩いの時間として機能しており、皆がとても楽しそうで、何より料理がおいしそうでおいしそうで。腹が少しでも減っているときに読んだら、食欲を刺激されてたまらなくなります(笑)