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ひとくち感想『ヒグマ!!』- 怪獣特撮の革命児? 闇バイトVSヒグマの限界バトルから薫り立つ「ゴジラ」の息吹

往年のゴジラファン曰く、怪獣特撮映画の醍醐味の一つは「人が抱えるインモラルな衝動を叶えてくれること」なのだという。だとすれば、この『ヒグマ!!』は思った以上に本格的な「怪獣特撮映画」なのかもしれない。

 

引用:鈴木福がピンク髪ホスト役!?映画『ヒグマ!!』本編映像 - YouTube

 

映画『ヒグマ!!』は、父の死がきっかけで闇バイトに手を出してしまった少年・小山内が、闇バイトの元締めとヒグマの脅威によって窮地に追い詰められていく様を描くモンスターパニック・アドベンチャー。 

そのコンセプトから薫り立つイロモノ感・B級感の通り全体的にヘンな部分が目立つ一方、非常に社会的なテーマを描いてもいるのが特徴で、闇バイトという「一度手を出したら戻れない絶望」のリアルな描写はもちろん、その恐怖とヒグマが浮き彫りにする「生きてさえいればやり直せる」というメッセージは、間違いが許されない令和の現代人にささやかな希望をくれるもの。闇バイトVSヒグマという一見荒唐無稽なコンセプトや、悪人を殲滅していくヒグマの姿にも「人間が獣に堕してはいけない」というテーマが込められているのでは……とついつい深読みしたくなってしまう作品だ。 

これらの点について考えていきたいのは山々だけれど、特撮オタクとしてはやはり本作の「怪獣特撮」としての側面に触れない訳にはいかないだろう。

 

 

本作は、前述の通りモンスターパニック・アドベンチャーないしスリラーに分類される映画だけれど、それ以上に紛れもない「怪獣特撮」だった。そう断言できてしまうくらい、本作には怪獣特撮……とりわけゴジラ』に対する愛が溢れ返っていたように思う。

 

 

第一に、本作に登場するヒグマはなんとほぼ全編が着ぐるみで、アクターの動きやすさよりも「本物の熊としてのリアリティ」を優先した結果であろうディテールはかなりのもの。特に「熊としてのリアリティを逸脱しすぎず、それでいて凶悪でカッコいい」面構えは作り手の怪獣愛を感じずにはいられない仕上がりになっており、ヒグマを(着ぐるみの “作り物感” を誤魔化し辛い)日中にも登場させたばかりか、その顔をこれでもかとアップにしていたのも、着ぐるみの造形にそれだけ自信があったから……というより、その驚異的なディテールを「これどうよ!?」と見せつけたかったからなのかもしれない。 

また、本作は季節が冬のためヒグマの息が白くなっているのだけれど、これはおそらくゴジラのような「熱線を吐く怪獣」が口から煙を吐くそれを意識した演出なのだろうし、タイトルインの「後光に吼えるヒグマ」は疑いようもなく『ゴジラVSデストロイア』のラストシーン。 

黒くてマッシブ、凶悪な面構えの最強生物で、結果的に悪を殲滅したりはするけど人類とは決して相容れない。やっぱり、本作の作り手はヒグマを「俺ゴジラ」として描こうとしているのかもしれない。ホントに???

 

ゴジラVSデストロイア

  • 辰巳 琢郎
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一方、本作はその「文脈」においても怪獣映画を感じさせてくれる。 

というのも、前述の通り「私たちの抱えるインモラルな衝動を叶えてくれること」が怪獣特撮の醍醐味の一つ。漠然とした破壊衝動や政治的な建造物の破壊などその例は多々あるけれど、こと今回は熊なのでそのような「大規模な破壊」は難しい。そこで本作は「インモラルな衝動を後腐れなく晴らしてくれる、等身大の破壊行為」をヒグマに行ってもらうべく、ある生贄を用意した。それが「闇バイトの元締め」たちだ。 

社会問題になっている闇バイトは「手を出す方にも責任がある」と言われることがある。しかし、そのような闇バイトに手を出してしまう子どもには(それこそ、本作の小山内のように)深刻な理由を抱えた者も少なくない。恵まれているならば基本的には闇バイトになんて辿り着かないし、そもそも諸悪の根源は「人を利用して悪事を働く元締めたち」なのだ。 

本作は、そんな闇バイトの元締めを餌として用意することで、気兼ねなくヒグマの大暴れを堪能することができるし、ヒグマを単なるヒーローとして終わらせず、最終的にしっかり「人類とは相容れない存在」として息を呑む決着戦まで描いてくれる。このように『ゴジラ』などで見られる王道をしっかり押さえている点も、本作を「怪獣映画」として楽しめる大きな理由と言えるだろう。

 

 

怪獣特撮の難点は、その巨大さ故にミニチュアやCGでビル街や山岳地帯……つまりは「怪獣が暴れる舞台」を用意しなければならないこと。 

しかし、ヒグマのような実在の動物であれば巨大怪獣でなくても「格が落ちる」ことがないし、スリラーとしての文脈も乗ってくるというオマケ付き。そう考えると、このヒグマ!!は怪獣特撮映画におけるある種の革命児とさえ言えるかもしれない。 

……が、熊をメインで扱ってしまったために本作が「逆風」に曝されてしまっているのもまた事実。ホームページには「本作の社会的背景について」という注意書きが掲載されているなど細心の注意が払われているし、製作陣がそのような問題を軽視したものでないのは明らかだが、昨今の情勢を鑑みて本作に二の足を踏んでしまう方も少なくないのではないだろうか。 

『ヒグマ!!』の製作が始まったのは2023年。作り手にとって現実のヒグマ被害がここまで拡大してしまうのは想定外だったのだろうし、本作はそのような不運に潰されるにはあまりに惜しい作品だ。特に、この映画が怪獣特撮映画を愛する方々に届かずに終わってしまうのは大きな「損失」に違いない。特撮ファンの自分がこの記事を投稿することが、少しでも逆風に立ち向かう『ヒグマ!!』の支えとなることを祈るばかりだ。




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