新年、幸田文『木』をようやく読了。
映画『PERFECT DAYS』の中で主人公平山が読んでいたのをみて興味を持った本。
木にまつわるエッセイ集であるが、他の本の合間にちびちび読んでいたら数ヶ月かかってしまい、ついに年越し。
『木のきもの』という表題のエッセイがとりわけ良くて。
杉はたて縞のきものを着ている。
そんな一文から始まる。
樹木を覚える手がかりとして、きものとして見立てる方法を思いつく幸田氏。
木の肌の様子を見れば、松は厚い着物で、いちょうの着物はしぼ立っている、すずかけは織物ではなく染め物、しかもかなり高級な。
はげる木のひめしゃらは布地でいうなら羽二重で無地の着物。
ひめしゃらの幹はツルツルで触ると冷たいこと、羽二重は高田郁の小説『あきない世傳 金と銀』 の中に出てきた着物生地。木の肌の様子と着物生地の知識が少しでもあると読むのが楽しいひとときになった。
他にも大工に嫌われる楠、フサザクラ、ポプラなど聞き覚えのある樹木の名前が出てくるとことさら嬉しいのであった。
ポプラは阿波踊りのように、しなよく振りよく、よく踊るものだという記述を見て、幼い頃のポプラの記憶が蘇った。
わたしの通っていた保育園に植えられていたポプラの木。
ポプラというのは生育が早く、その昔はマッチ棒の軸に利用されていたそうで割とあちこちに植えられていたそう。生育が早い分、寿命が短いので最近は街路樹に植えられることはなくなっているみたいだが。
記憶を辿ると保育園のポプラは街路樹ではなく、園と他の私有地の境界を示すために何本か植えられたものだったと思う。
保育園のお昼寝の時間、わたしは他の子のようにスヤスヤと眠ることができず、横になったまま起きていることが多かった。
そのときのポプラの葉音が印象に残っている。風にそよぎ、サラサラ、サラサラ、サラサラと。
"ポプラはよく踊る"という幸田氏の言葉にそれを思い出した。
改めて『ポプラ』を検索してみたら、わずかな風でもよく揺れてさらさらと音が鳴るため「山を鳴らす木』として和名はヤマナラシと名付けられていることを知った。
保育園のポプラは園舎からは園庭を挟み離れていたのに、なぜあんなに音が聞こえたのだろう?
50年以上前のことだもの。車の往来も少なく、静かだったんでしょうね。
以前からもっと樹木のことを知りたいなぁと漠然と思っていましたが、この本をきっかけに今年の目標にしたいと思います。

近所のクロガネモチ。

木に絡まる蔦にはフユヅタとナツヅタがありますが、紅葉するのはナツヅタの方なんですって。
