【新刊】アフター・リアリズム 全体主義・転向・反革命 | 書肆 子午線
私の怠惰で、ずいぶん時間がかかってしまったが、ようやく新刊『アフター・リアリズム 全体主義・転向・反革命』(書肆子午線)を出版することができた。一読してお分かりいただけると思うが、このような時代にこのような本を出すことができたのは、ひとえに本書に関わってくださった方々のお力添えによる。謹んでお礼を申し上げたい。
かつてニーチェは、言葉に真理があるならば、こんなに言葉が多いはずがなかろうというようなことを言った。今なら、こんなにSNSのアカウントやYouTubeのチャンネルがあるならば、と言うだろうか。真理ではない言葉が、したがって増殖するのは、言葉が欲望だからであろう(承認欲求も含む)。
あとがきにも記したが、本書は言葉に不信しかない人に読まれたい。他者と通じ合う、分り合う、分かってくれているはず、理解しているはず…。もはや、そんなことが、全く信じられない人にこそ読んでほしい。言葉は死だ。あえて言葉の表象機能の失調とは言わない。十全なる機能を本来性とする疎外論にしかならないからだ。本書のテーマである「転向」者とは、言葉に不信しかない者のことである。
もちろん、本書を読んでも、不信が回復することはない。本書に生産性はない。だが、言葉は死だ、不信しかないと言っている者が、だったら沈黙すればよいのに、なぜか文学などをやっている――。その意味不明な滑稽さや馬鹿馬鹿しさにある逆説を、各々の文脈で勝手に「誤解」して感じ取ってもらえるような「事故」があれば、何ともうれしいかぎりだ。
最後に、わずかながら、本書を待っていてくださった方々に。そのなかには、故人も含まれる。皆さんの存在と死とが、諦めそうになっていたいくつもの夜を越える力となった(アルモドバルの新作『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』の、生者と死者とに平等に雪が降るシーンには深く心動かされた)。心からの感謝を伝えたい。
(中島一夫)