これは「あらたま・いくおのAdvent Calendar 2025」24日目のエントリです。キヨシだけに24日にやらせて頂きます。
昨日はすてぃおさんの相談されやすいマネージャーが最強|すてぃおでした。そういえばワインと鍋、行ったことないのだった。
あらたまさんもいくおさんもインターネット上で一方的に知っている状態で本人達とお会いしたことはないのですが、良いこと言ってるな〜といつも思ってみてます。なお我々3人には「Agendに載っている」という共通点があるのでフジイさんを囲む会をやると良さそうと思った。
さて、マネージャーになると税金が発生しますな、というのは先日書いたので、これはこれで読んで頂けると良い。今回はその先のキャリアの話。
仕事の報酬は仕事
仕事の報酬は仕事という言説があり、読みようによってはやりがいを与えるのだからそれで満足しろ、に聞こえるし、その結果として搾取の免罪符にもなりえる。なので仕事の報酬は仕事!とApple Watchに怒られるほどにデカい声で打ち出す経営者を見るとギョッとすると思う。
仕事の報酬は仕事なんだよな。
— そーだい@初代ALF (@soudai1025) 2025年11月18日
結局成長するには自分の背丈よりも大きい仕事をするのが一番成長する。
ただ、キャリアを現実的に前に進めていく文脈で考えると、これは精神論的なものではなくて、裁量が配られる仕組みの説明に近いことがわかる。次のより良い仕事(= 今よりも大きい裁量や難易度、インパクトを与えられる範囲)を連れてくるのは、だいたい今の仕事の成果が営業した結果舞い込んできたものであり、これはほぼ構造と言える。
で、経営陣として裁量をどう配るかの意思決定はだいたい同じ形になる。この人に任せたら、期待する成果が出る確率はどれくらいか。もし失敗したときの損失はどの程度で、取り返しはつくか。そのリスクを、今このタイミングで負う価値があるか。ここに尽きる。
だから裁量は信頼でもあるのだが、同時にリスクテイクの配分でもある。任せる側は最初からデカいヤマを任せない。たいてい小さく試すところから始めるし、そこが一番フェアでもある。
裁量がないとケイパビリティを証明できない問題
で、ここでダルい循環が発生する。より大きな裁量を得るには、それを扱えるケイパビリティを証明する必要があるのに、ケイパビリティを証明するには何らかの裁量が必要となる。この、裁量がないと証明できない問題が「仕事の報酬は仕事」の肝だと思っている。
これはレベル上げと一緒で、開幕大きい裁量を求めるのではなく、先に小さな裁量を取りにいく。今の仕事で成果を出して再現性を見せる。その成果を材料にして、一段上の小さな裁量を得る。そこでやり切って、さらに大きい裁量へ進む。役職や金銭的な報酬や影響範囲は、裁量を得たことによる市場価値向上の後にくっついてくることが多い。当たり前っぽいのだが、まあCTOになりたがる人が多いみたいな話題に近いやつで、CxOなりVPoXなりのタイトルを得たいという気持ちが先行しすぎると分不相応のaskをしてくる人という認識をされる。
望ましくない仕事が来たとき
とはいえ、降ってきた仕事がいつも望ましいものとは限らない。自分にとって全然興味がない領域だったり、正直乗り気じゃない仕事を掴まされることもある。やりたくないからやらねえ!で押し返せるならまあそれで良いのだが、角が立たないようなコミュニケーションを取ってしまった結果押し切られてしまうこともあると思う。やりたくない仕事は、どうあってもやりたくないことが多く、そこで激しくデモチするリスクもある。
だから曖昧に抱えて消耗するくらいであれば受ける・受けないを何らかの基準をもって判断した方がいい。
- その経験がその後の選択肢を増やすものかどうか
- 小さくても自分の判断で決められる範囲が増えるか
- 成果が見える形で残り、次の裁量の根拠になるか
- 永続的に背負うのか、期間限定で切れるのか
- これが一番重要で、これが重い仕事は後から効いてくる
もし受けるなら気合いで乗り切るのは不可能なので、自分をどうモチベートするかを自分で把握しておく必要がある。最低限受ける前に「これは何の練習台にするのか」を決めておく。意思決定速度なのか、巻き込みなのか、あるいは経営陣の考え方をエミュレートするのか。次に「ゴールは何か」を明確にする。プロジェクトであれば、いつまでにどの状態まで持っていくのか。新規事業であれば、どの仮説をどういうリソースで検証し、Go/No-Goの判断をどこで下すのか。
特に新規事業は0→1までをスコープに入れられることが多いので、期間で言えば年単位になりがちである。なので、事業共感性がない状態で引き受けると、自身がしんどい状態でチームメンバーのマネジメントまで求められる期間が長くなる。このあたりはちゃんと見極めるか、肝を据えるかを自分の中で決めておく必要がある。
ガードレールで期待値調整をする
ここまで書いておいてなんだが、言うても小さな裁量は思っているより低リスクで手に入る。そして裁量=自己責任100%ではない。多くの場合、失敗責任の比重は裁量を与えた側の方が大きい。なので、任せる側もなるべくリスクが大きくならないようにしている。チェックポイントを設定する。影響範囲を限定する。可逆にする。使えるリソースに上限をつけるっていうのもありそう。こういうガードレールを設けることを考えている。
ある側面においてはこのガードレールというのは期待値でもあるので、期待値調整という意味で一緒にガードレール作りを上司とするのも一つのやり方だと思う。
再投資の原資
結局のところ「仕事の報酬は仕事」は金よりやりがいの話ではなく、裁量が裁量を呼び込む構造を作るという話だと思っている。今の仕事で成果を出して根拠を作る。その根拠で小さな裁量を取りにいく。裁量の中でやり切って、次の裁量へ進む。
ちなみに私はリンケージに入社してから80日くらいで予期せず取締役になったわけですが、まあこれも報酬として会社経営という仕事が舞い込んできたな、と思っている。そして、報酬としての仕事を自分で意思決定して自分でリスクを取るという構造になっており、なるほど、実はこれまでのキャリアはチュートリアルだったのか……と毎日思いながら暮らしています。
金銭報酬や労働条件といった衛生要因は大前提としてある。ただ、自分のありたい姿を実現していくにあたって再投資を繰り返すための原資になるのは何か。それが「次の仕事」であり、だから仕事の報酬は仕事、という話でしたー。