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2025年上半期に読んだ本ベスト10

2025年の上半期に読んだ本のなかから、良かったものを10冊選びました。フィクションとノンフィクションをそれぞれ5冊です。この半年では、長めの作品をじっくり読むことができたかなと思います。

「物語の力」が人を救う

 

フィクション

松家仁之『火山のふもとで』(新潮文庫

火山のふもとで(新潮文庫)

上半期はこれを読めたのがとてもよかった。薦めていた人たちに感謝したい。別の著作も気になるところ。感想はこちらに。

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R・F・クァン『バベル オックスフォード翻訳家革命秘史』(訳・古沢嘉通東京創元社

バベル オックスフォード翻訳家革命秘史 上 (海外文学セレクション)バベル オックスフォード翻訳家革命秘史 下 (海外文学セレクション)

19世紀、大英帝国のオックスフォードにバベルと呼ばれる塔がある。ここでは翻訳家が魔法を研究し、社会インフラとして運用されている。それは利便性をもたらす一方で格差の根源にもなっている、という設定。主人公ロビンは中国からバベルの世界へと移され、仲間と共に厳しい修行を日々を送る。やがてこの世界のしくみに違和感をもちはじめ、革命へと動き出す。魔法の設定とスリリングな展開が魅力的だった。

 

アンソニー・ドーア『メモリー・ウォール』(訳・岩本正恵、新潮クレストブックス)

メモリー・ウォール (Shinchosha CREST BOOKS)

密度の高い短編集。すごいものを読んだという感覚があるのだけど、どうすごいのかをうまく言えない。動作を丁寧に描くことで、心情が勝手に伝わってくるような感じがする。しかし描写に過剰さはなく、文から文へのジャンプを絶妙に決めつづけている印象がある。不妊治療をする夫婦を描いた「生殖せよ、発生せよ」がベスト。また読むはず。

 

増田俊也『七帝柔道記』(角川文庫)

七帝柔道記 (角川文庫)

七帝柔道というオリンピックとは違うルールの柔道を志し、北大に入った主人公・増田俊也。七帝柔道に捧げた2年を描く自伝的青春小説。練習量がすべてを決定すると信じ、ひたすら練習に打ち込む。つらすぎて、なぜやめないのかと思うくらい。実際やめる人も多く、主人公もふと我に返る瞬間がある。しかし、やめない。なんでそんなになってまで、すべてを賭けられるのだろうという眩しさとともに、ぐんぐん引きこまれた。
 

レイラ・ララミ『ムーア人による報告』(訳・木原善彦白水社エクスリブリス)

ムーア人による報告 (エクス・リブリス)

1528年にフロリダへ上陸したカスティーリャ王国の探検隊。その生き残りは4人しかおらず、そのうちの1人である黒人奴隷が語る探検の報告。残りの3人による報告は実在するらしい。フロリダに上陸してから原住民との衝突やサバイバルの日々と、生まれてから奴隷となり探検に参加するまでの回想。あまりにも壮絶で目をそむけたくなる。後半、物語を語ることのもつ力が恐ろしいほど感じられる。

 

ノンフィクション

村上春樹アンダーグラウンド』(講談社文庫)

アンダーグラウンド (講談社文庫)

いつか読みたいと思って早数年。事件から30年になってようやく読めた。1995年3月20日地下鉄サリン事件。あの朝に何が起きていたのか、被害者と関係者60名以上にインタビューをし、700ページにもなる語りとして文章にしている。エッセンスを抽象化してとりだすのではなく、あくまで一人一人の言葉として粘り強く読ませるのが素晴らしい。メディアには加害者の物語があふれるなかで、そうではない物語をつくること。

 

ウェイド・デイヴィス『沈黙の山嶺 第一次世界大戦とマロリーのエヴェレスト』(訳・秋元由紀、白水社

沈黙の山嶺(上):第一次世界大戦とマロリーのエヴェレスト (現代史アーカイブス・第1期)沈黙の山嶺(下):第一次世界大戦とマロリーのエヴェレスト (現代史アーカイブス・第1期)

およそ100年前、初のエヴェレスト遠征隊が初登頂に挑戦した。彼らの足跡と戦争体験を見事に織り合わせた作品。白水社の現代史アーカイヴスの1作目ということで、このシリーズは読んでいきたい。感想はこちらに。

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窪田新之助対馬の海に沈む』(集英社

対馬の海に沈む (集英社学芸単行本)

対馬で車とともに海に沈んだ男がいた。彼はJAで働き、抜きんでた営業成績をおさめていた。なぜ死んだのか。巨額の横領事件がからんでいることはわかっている。1人のせいにさせられているが、どうもおかしいというのが著者の視点で、取材により手口と背景が明らかにしていく。きびしいノルマと人間のしがらみ。最後は思わぬ方向へと進んでいった。

 

近藤滋『波紋と螺旋とフィボナッチ』(角川ソフィア文庫

波紋と螺旋とフィボナッチ (角川ソフィア文庫)

巻貝のかたちやシマウマやキリンの模様など、生物が生み出すパターンのしくみを解説する本。シンプルな法則といくつかのパラメータから、複雑なパターンがでてくる。数理モデルや実験の考え方がおもしろい。あと著者の研究エピソードが忘れられない。魚の縞模様の謎を解くために、大学での仕事とは別に、100万円ほどかけて自宅に設置した水槽で魚を飼育する。1年をかけた観察で仮説の検証を行い、その結果でNatureに掲載される。上司でのちにノーベル賞をとる某教授に怒られたことまで含めておもしろい。
 

 

立花隆『青春漂流』(講談社文庫)

青春漂流 (講談社文庫 た 7-9)

20代、30代の様々な職業の11人を取材したドキュメント。家具職人、ナイフ職人、猿回し、精肉、動物カメラマン、自転車のフレームビルダー、鷹匠、ソムリエ、コック、染織家、レコーディングミキサー。それぞれの職業や生き方を知ることができる。彼らの修行時代のエピソードが中心。当時は未来の保証があったわけではない。それでもなにかに打ち込んで大胆に生きた「謎の空白期間」は、その人だけの船出を準備する。
 

以上の10冊です。

読みたい本は日々増えていますが、タイミングがきたときには逃さずに読んでいきたいです。

 

前回分はこちら。

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