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ハナマル書評通信簿 島森路子

毎日新聞 2000.12.3 評者・島森路子
 松浦理英子『裏バージョン』(筑摩書房)

*1

 言わずもがなのことだが、本欄はブンガクに好意的ではない。というか、いまどきブンガクなんてそのままじゃ(苦笑)モンでしかない、というのが基本的認識である。なのに、ああ、なのになのに、世の書評欄は、そんなブンガクが未だ健在だと必死に信じ込もうとしてござる。なぜ、なぜなの、それって?

 今日も今日とて、勘違いでしかないブンガク妄想を鼻高々に垂れ流す迷惑な書評がひとつ。松浦理英子というのは昨今のオンナの作家では、ひとまず安全牌のひとりらしい。少し前、単細胞フェミの代表、小倉千加子を実に底意地悪くつぶしにかかったケンカで名前を売ったが、その他、チンチンが足の親指にくっつくヨタ話で評価された御仁。で、新作が筑摩から出たもんで、それを島森路子がヨイショする。わかりやすいよなあ。まわりにたむろする編集者だのいけすかないツラが、即座にズラッと思い浮かぶってもんだ。

 どうやらオムニバス形式の短編それぞれの末尾に、ゴチック体で別のコメントが加えられた形の作品らしい。つまりは作者による自己ツッコミが作品世界を読む端から突き崩し、てな試みで、最後にはこの批評者と作者との大喧嘩になって、さて、物語の真の主人公は誰、という趣向。何のことはない、ブンガク世間にだけ向いたひとりよがりを、さももったいぶってやってるってだけのことじゃん。

 こんなチンケな試みまでも「二人の女のそのバトルを外側で読むもう一人の読者である私たちは、そこに作者自身の私小説めいた臭いを嗅ぎ、けれどもそれも、すべては彼女の想像の産物のようにも見え、さらにはそのすべてが、巧妙にたくまれただまし絵と思えなくもないけれど、読後に残る行き場のない哀切感だけは痛々しいほどリアルである」なあんて、千鳥足のヨイショをしなきゃならないなんて、島森サン、いまどきまだ広告をネタに世渡りしつつ、ブンガクまわりにまで色目作ってエサを拾うそのお姿、なかなか趣き深いものがありますです。

*1:書影は小学館版になっているのは、何かわけありで版元が変更されたのか?文庫版は文春文庫だし。 www.chikumashobo.co.jp




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