1月25日(土)
結局ギリギリの時間に職場に到着。イベント運営的な仕事の日だったが、ドタバタと準備を進めて何とかした。何とかなった。だが、何とかなっただけである。事前に手配できることは先に済ませておくべきだった。反省。
イベントを終え、大急ぎで親族の食事会へ。毎年の恒例行事だが、良いレストランで食事できる機会なので楽しみにしている。
1時間ほど遅れての参加になったが、そのおかげでコース料理がテンポよく出てきてくれて嬉しかった。バカっぽく思われそうで嫌だが、コース料理を食べていると、早くメインを出してくれと思ってしまう。ゆったりとした食事を楽しめるだけの余裕は私の胃袋にない。
立て続けに前菜、スープ、パン、パスタを食べ、皆に追いついた。それから少ししてメインディッシュが届く。今回は鹿肉のロースト。臭みが全くない、旨味が詰まった赤身肉だった。鹿肉自体初めて食べたのだが、これが相当に上等なものであることはわかった。添えられたチョコレートとベリーのソースも相性がいい。意外と主張は強くなく、甘み苦み酸味で肉の味を底上げする役目だ。
その美味しさに感動しながら、私は山梨県に住んでいたときのことを思い出した。
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その日はとにかく仕事がうまくいかなかった。明日には絶対に出荷しないとヤバい製品で不良が出て、すぐに再生産しなければならなくなり、しかしそのための機械すら壊れてしまった。
急遽技術者を連れて現場に向かう。外に出るとすでに真っ暗だった。現場は事務所から20分ほど峠道を登ったところにある。何とかその場でできる補修をして事務所に戻るも、すぐにまた壊れたと連絡が入る。本当に膝から崩れ落ちてしまった。今日中に生産の目途が立たなかった場合、とんでもない事態になる。技術者に頼み込みもう一度現場に向かい、応急処置を重ねた結果、何とか動作を確認。夜も遅く、今から生産しても数が上がらないので、あとは明日に託して帰るしかない。
あまりに私がヘロヘロだったため、帰りは技術者に運転を交代してもらった。疲労と不安で頭がぼうっとしている。すると発進してすぐ、峠道を下りはじめるところで。
野生の鹿に遭遇した。
角はゴツゴツと雄々しく、体は隆々と大きいが、どこかしなやかさも感じさせる。細い道の真ん中を跨ぐように佇み、顔だけをこちらに向けている。その顔は非常に整っており、野生の荒々しさというより、どこか気品を感じさせた。ヘッドライトに照らされ、こちらを認識している様子だが、堂々として動く気配は全くない。
美しかった。真っ暗闇に光り輝く、こちらを凛と見つめるその姿は、涙が出そうなほど美しい光景だった。神の使いと言われるのも納得だ。それほどにあの鹿には神々しさを感じた。疲労と不安と驚きと感動が混ざった訳のわからない感情のまま、私はただ呆然と見とれていた。山梨出身の技術者は面倒くさそうにクラクションを鳴らした。