先週から司法関連の不祥事が相次いで報じられており、企業法務に携わる者としては、なかなか示唆に富む一週間となった。
1.退職代行「モームリ」代表者逮捕
まず大きく報道されたのが、退職代行サービス「モームリ」を運営する株式会社アルバトロスの代表者らが、弁護士法違反(非弁活動)の疑いで逮捕されたニュース。今回の焦点は、単なる「意思の伝達」を超えた法的交渉に踏み込んでいた可能性が高い点にある。
まず、弁護士法の条文を整理しておきたい。
第27条(非弁護士との提携の禁止)
弁護士は、第72条乃至第74条の規定に違反する者から事件の周旋を受け、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。第77条(非弁護士との提携等の罪)
次の各号のいずれかに該当する者は、2年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処する。
①第27条(第30条の21において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
②第28条(第30条の21において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
③第72条の規定に違反した者
④第73条の規定に違反した者
弁護法第72条によれば、弁護士法人ではない退職代行サービス会社ができることは、顧客からの依頼を受けて会社に退職の意思を伝達するのみで、残業代請求や有給休暇等の法的交渉を行うことはできない。仮にこれらの案件を弁護士に紹介しても、弁護士サイドから紹介手数料を受け取ることもNG(法第72条)。一方、アルバトロスから斡旋を受けた弁護士は別名義に偽装した紹介料を同社に支払っていたというが、これは弁護士法第27条に抵触する可能性が高い。

現在、国内には多くの退職代行サービスを手掛ける会社が存在すると言われているが、今回の報道を受けて、玉石混合の業界再編は避けられないだろう。私自身は退職代行サービスにお世話になったことはなく、会社を辞める際には退職届を提出して、引継ぎや周囲のあいさつをきちんと行って会社を去っている。やはりそれが最低限の礼儀だと思うからだ。しかし、こうしたサービスが隆盛を極める背景には、自力で辞めると言い出せないほど追い込まれた労働環境があることも事実なのだろう。
あと、退職代行サービス会社が本人に代わって退職の意思を会社に機械的に伝えるだけならば、弁護士法には抵触しない。それだけにとどまらず、退職日の交渉や残業代の請求など法的な取り扱いが生じると「法律事務」になってしまう。ちなみに、本人が代理人などを利用せずに残業代を請求するテクニックとしては、所轄の労働基準監督署に申告して臨検指導で会社側に支払わせる方法がある。要するに国家権力を活用することだが、無料で利用できるものの、それなりの時間と手間(証拠集めとか)を要する。
2.「地面師」の世界が現実に。司法書士が詐欺に加担した衝撃
もう一つ気になったのが、不動産詐欺事件に現役の司法書士が関与していたという報道。Netflixのドラマ『地面師たち』が記憶に新しい中、現役の司法書士が「リアル地面師」の一員として逮捕されたという。
ドラマでは司法書士は「騙される側(あるいは厳格な本人確認を行う側)」として描かれていたが、今回の事件では加害者側に。具体的な手口は、真の所有者の本人確認情報を偽造し、仲間の会社に名義を変更。その後、善意の第三者に転売して巨額の利益を得ていたという。
不動産取引の安全を守る「最後の砦」である司法書士が、自らその信頼を悪用した罪は重い。背景には、事務所の売上不振があったと報じられている。人口減少やデジタル化の波、あるいは激しい価格競争によって、「安泰な資格」という神話が崩れつつある一例なのかもしれない。しかし、いかなる経営難があろうとも、国家資格者が犯罪の片棒を担ぐのは一線を越えすぎ。企業法務としても、「資格があるから安心」という前提を一度捨て、よりシビアな相手方確認が求められる時代になったのだと痛感させられる。

3.結びに代えて
今回の二つの事件に共通しているのは、「法律の隙間を突くビジネス」と「資格の悪用」。便利さの裏側にある法的なリスクをどう見極めるか。そして、専門家への信頼をどう維持し、確認していくか。企業法務担当者としての目利きの重要性を改めて考えさせられるニュースだった。