1.図書館にて過去を振り返る
盆休みのあいだ、妻と神戸のエヴァ展を訪れたり、家族旅行に出かけたりと、にぎやかな時間を過ごした。けれどもその合間、ひとり静かに本屋や図書館を巡るのもまた、私にとっては大切な休日の過ごし方。そんな折、地元の図書館で手に取ったのがこの二冊だった。
- 作者: 中田行彦
- 出版社/メーカー: 実務教育出版
- 発売日: 2015/01/28
- メディア: 単行本
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- 作者: 日本経済新聞社
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2016/02/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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出版年(2015年、2016年)を見れば、いずれも同社の経営不振が世間を大きく騒がせていた頃に世に出た本である。
かつて「目の付け所がシャープでしょ」のCMで一世を風靡し、液晶テレビAQUOSで日本中を席巻していた、あのシャープの凋落を描いた本だ。わずか10年ほど前の、あの頃の勢いは、まるで遠い夢のよう。「液晶一本足打法」→「巨額の設備投資」→「海外勢の低価格攻勢」→「業績急落」→「リストラ」──。かつて栄華を誇った企業が、どうしてそこまで追い詰められていったのか。冷徹に記録された事実を前にすると、産業界の栄枯盛衰の速さに、ただただ圧倒される。
2010年頃までのシャープは、まさに時代の寵児だった。亀山工場モデルをブランド化し、「AQUOS」を掲げて液晶テレビを世に送り出す姿は、勢いそのものであった。しかし、やがて2016年、台湾の鴻海精密工業に買収される。あの急転直下の結末を、当時いったい誰が予想できただろうか。
2.二つの応募、そして不採用
ここでふと、私自身の昔話を思い出す。
実はかつて転職活動をしていた頃、私はシャープの法務部門に応募したことがあった。しかし結果はあっけなく不採用。肩を落としたのを覚えている。けれども、その後の同社の苦境をニュースで耳にするたび、心境は複雑であった。もしあの時、採用されていたら──リストラ候補の一人として名前を連ねていたかもしれないのだ。
同じ時期に応募した三洋電機の法務部も不採用で終わった(大手企業の法務部門は、すでに組織的に完成されており、人材的には充実しているが、「良い人がいれば採用する」というスタイルで通年採用している)。こちらも当時は悔しかったが、結果としては同社もまた経営破綻の道をたどり、最終的にパナソニックに吸収される。まるで、結婚を断られた数年後に「彼女の本性」を知って胸を撫で下ろすような感覚、といえば伝わるだろうか。

3.「人生万事塞翁が馬」を痛感する
こうして今振り返ると、「不採用」という出来事すら、私にとっては幸運だったのだと実感する。人生は一寸先がどうなるか分からない。だからこそ「塞翁が馬」という古いことわざは、いまなお胸に響く。
現代はVUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)と呼ばれる不確実性の時代。5年後、10年後に会社や自分がどんな姿をしているか、誰にも予想できない。それでも、私たち現役世代は70歳、あるいは75歳まで働き続けなければならない運命にある。その間にAIやロボットが次々と仕事を奪っていくのだから、なおさら安穏とはしていられない。
では、どう生きるか。
結局のところ、アンテナを広く張り、時代の変化に応じて自らを磨き続けるしかない。私にとって読書は、そのための最良の自己投資。コストパフォーマンスに優れた、未来への備えだ。ブログの右欄に読書記録(ブクログ)を公開しているのも、その一端である。
ちなみに、私の親はバブル好景気の恩恵を受けつつ、年金も受給してなんとか「逃げ切り」に成功している。かたや私のように若い世代は、不景気しか経験していない上に、社会負担も重たいという「親世代と比べると明らかに不公平な条件下での人生ゲーム」を強いられている。そして、ゲームである以上、参加者全員に「勝ち負け」は確実に存在するが、不平不満を言っても状況は好転するわけではない。ならば、腹をくくってプレイヤーとしての器量を示すしかない。
4.悲劇と喜劇
図書館の書架には、もう一冊、奇妙な本が並んでいた。
- 作者: 北田秀人
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2010/08/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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出版は2010年、シャープが絶好調だった時代の賛美本で、同社のオンリーワン経営をほめたたえる(=ヨイショしまくる)内容となっている(笑)。先ほど読んだ「凋落」の物語とは対照的に、未来への希望に満ちた内容が綴られている。だが、冒頭で紹介した二冊を読み終えたあとにこの本を開くと、その落差があまりにも大きく、何かのブラックジョークにしか思えなかった。

栄光と没落は、ほんのわずかな時間の差で入れ替わる。図書館の一角で、そのことを改めて噛みしめた暑い夏の日であった・・・。
