本郷和人著「北条氏の時代」文春新書 刊を読み終えた。
著者はマスコミに登場することも多い鎌倉時代を中心とした日本中世史の専門家で、この本はこれまで研究してきた鎌倉時代論の集大成とも云える内容としている。
云うまでもなく北条氏とは鎌倉幕府150年の殆どを執権として切り回し以後室町時代、安土桃山時代、江戸時代と続く武士の世の先駈けを成した一族である。
しかし著者が「謎の一族」という通り、元々名もなき一介の武士の一族が、政権を奪い日本を動かし最後は族滅したのはなぜか、時政、義時に始まり最後の高時に終わる歴代の北条家当主のリーダーシップから読み解こうとしたものである。
この本の末尾に源頼朝が鎌倉に入り鎌倉幕府が誕生(1180)してから後醍醐天皇の呼び掛けに応じた倒幕軍により鎌倉が陥落して北条氏が滅亡(1333)する迄の年表が付されている。
これを見ると「承久の乱」、「元寇」、「正中の変」などの対外戦争や朝廷との争いは別にして、幕府体制内の人の死に直結した争乱である「事件」「乱」「合戦」「騒動」と名付けられたものが実に16回も起きている。
戦いを職とした武士が、初めて最高権力を手にした時代の実相を端的に表しているように思えてならないが、北条氏はこの食うか食われるかの世界をサバイバルし続け鎌倉幕府のリーダーとなっていったのである。
著者は、北条家のリーダー達の多くは必ずしも生まれながらトップの座を約束されていた訳でなく、例えば嫡男とみなされていた存在は別にいたような環境のなかで、その実力を示すことによりリーダーとして認められて行ったと説いている。
またその実力は時代を追跡していくなかで以下の3つで説明出来るとしている。
・実力(武力、陰謀力)
・人脈力(婚姻、家族や一族の力、人材登用)
・根回し力(武士達の世論を読む力)
鎌倉幕府は関東武士たちのための政権でありそこで重要となったのは如何に多くの味方を集めるかであり、一時的にイニシアティブを握っても武士達の支持を得られなくなるとあっという間に失脚してしまう事例をこの本のなかで幾つも見せつけられることになる。
◉今日の一句
奈良修二会五体投地の音痛し
◉施設の庭、ヒヤシンス




「北条氏の時代」
