NHKBSで放送された映画「砂の器」を長い間録画したままだったが漸く再生して観終わった。
云うまでもなく松本清張の社会派推理小説が原作で、私もご多分に漏れず一時期清張作品の虜になった口で、この「砂の器」ももちろん若い頃に読んだことがある。
映画は1974年制作で監督が名高い野村芳太郎、特に画面を見て知ったのだが脚本が橋本忍、山田洋次と書かれていて、これは本物の映画だとストーリーを観るまでもなく確信した。
東京蒲田の操車場で殺人死体が発見され、丹波哲郎、森田健作演ずる刑事達が捜査を始めるが身元が分からず捜査は難航する。
被害者が話したズーズー弁、鉄道雑誌に記された列車から白シャツの裁断したものを車外に蒔く女性、映画館にあった掲示写真、被害者が元巡査であった経歴とその際の村の記録などから、刑事の執念やこだわりで事件の背景や犯人が徐々に浮かびあがって来る。
犯人は今まさに頂点を極めようとしている加藤剛演じる音楽家、彼の這い上がろうとしている原点に父親のハンセン病があり、当時の深刻な偏見から、それが世間に知られることを恐れて、被害者に恩義がありながらも犯行に及んだことが明らかになる。
音楽家の子供時代父親(加藤嘉)と一緒に故郷を捨て各地を放浪し喜捨を乞うて歩き、迫害を受けたり父子の情愛が溢れるシーンは、子役(春田和秀)の真に迫った演技と目の力も相俟って涙が止まらず、とても画面を見ていられなかった。
この父と子の放浪シーンは文字の原作を超えた映像ならではのもので、私の記憶に刻まれた気がする。
この「砂の器」の謎解きのネタのひとつが被害者が話していたと証言される、(東北地方以外で唯一ズーズー弁と似た音韻で話される)奥出雲(島根県)地方の方言であり、この地方の亀嵩(かめだけ)が被害者と加害者を結ぶ接点となる。
以下余談ながら、この奥出雲は「たたら製鉄」「算盤作り」などが有名だが、私の故郷・山口県厚狭にも縁がある土地である。
中世この地方に勢力を張った三澤氏は安土桃山時代に毛利氏に臣従、一時期厚狭を所領としたことがあり、このブログに2023年7月7日を皮切りに5回に分けて「戦国武将 三澤氏物語①~⑤」を書いた。
◉今日の一句
鳥帰る離郷久しき吾の空を
◉施設の庭の隅、今年も見ることが出来たサルスベリの木の下の蕗の薹、もうボチボチと思い2~3日毎に覗いていて漸く出会えた。



