早尾貴紀(はやおたかのり)著「イスラエルについて知っておきたい30のこと」平凡社 刊を読み終えた。
著者は社会思想史の専門家でイスラエル・ヘブライ大学客員研究員として2002~04迄東エルサレムに在住し、西岸地区、ガザ地区、イスラエル国内でフィールドワークを行ったとある。
この経歴や本の題名からイスラエルの紹介が主たる目的かと思って借り出したのだが、予想は全く違ってユダヤ人の過去の歴史から紐解き、イスラエル建国から現在のアラブ人・パレスチナとの紛争軋轢に至る道は、イスラエルとその背後にある欧米側に非があることを論じたものである。
2023年10月ガザ地区のハマスに属する兵士が越境してイスラエルに侵入、市民を殺傷し人質を拉致した。この後イスラエルは報復としてハマス掃討を謳った軍事作戦をガザ地区で展開している。
私は当初テロに対する人質救出・軍事作戦だと好意的に見ていたが、子供を含む民間人の犠牲の多さや意図的に飢餓状態が作り出されているようなニュース映像に、幾らなんでも度が過ぎていると思っていた。
現役時代仕事でイスラエルに行く機会があったり、ハイテク産業が盛んで成長著しいニュースに接したり、イスラエル建国を題材にした映画「栄光への脱出」という映画を見たり、第二次大戦のユダヤ人ホロコーストの知識などから、これまで私自身イスラエルに好意的な見方をしていた。
ガザ地区のニュースとこの本を読み終えて得られた知見から確かにアラブ側、パレスチナ側からの視点が欠けていたと思う部分があり、もう一度客観的に自分の頭でよく考えなければと思った次第である。
この本に書かれている色々な論点のなかで、自分の頭で考える上で大切と思える数点を挙げておくと、
・よく知られているように「シオニズム」とはユダヤ教聖書のなかで「シオン」と呼ばれるエルサレムの地にユダヤ人の国をつくるという思想とそれを実現しようとする運動で、その先にイスラエル建国がある。しかしそこには古くからの住民がいて排除されることになる。
・「古代に離散したユダヤ民族が約束の地に帰還する」という主張は歴史的事実からすると疑問がある。古代王国のユダヤの民と近代のシオニズムを担ったヨーロッパのユダヤ人は異なる系統にある。
・シオニズムはユダヤ教と同一ではなく、パレスチナ問題を宗教対立と捉えないこと。
・ヨーロッパからすると、ユダヤ人がパレスチナに国をつくれば自国にいるユダヤ人をそこに送り出すことが出来、パレスチナにヨーロッパのユダヤ人が入植して国家を持てば、建国後も協力関係を維持し、利害を共有する国をアラブ地域の真ん中につくることが出来てヨーロッパ文明を守る防壁になる。
・イスラエルとハマスの「停戦」は一般的な国家間戦争の停戦とは異なりイスラエルによる一方的なガザ地区でのジェノサイドの「一時停止」にすぎない。ガザ地区の占領も封鎖も変わらず、やはり占領下のヨルダン川西岸地区で続いているイスラエル軍の侵攻と入植者による襲撃・収奪も止まることがない。
◉今日の一句
須磨浦に寒海苔刈るやもぐり舟





「イスラエルについて知っておきたい30のこと」
