住んでいる施設の映画会で2019年のイギリス・フランス・ベルギー合作映画「家族を想うとき」を鑑賞した。
全く先入観なしに観てあとで知ったのだが、2019年のカンヌ映画祭に出品された作品で、監督のケン・ローチ氏はかつてカンヌの最高賞・パルム・ドールを2回受賞しイギリスでは巨匠という位置付けらしい。
イギリス・イングランド北東部にあるニューカッスルという町で暮らす4人、父、母、高校生の長男、小学生(高学年)の長女、家族の物語で、申し訳ないが各々を演じている俳優は全て私は初めての出会いである。
父親が今までの職を失い、友だちの紹介で個人事業主・フランチャイズ契約の宅配ドライバーとして働き始める。
初期投資で車が必要で、訪問介護士として働く妻の車を売り、妻はバスで各家庭を廻ることを余儀なくされ長時間労働に、子供達は元々2人共優秀だったものの、両親の不在時間が長く寂しい想いから、例えば長男は警察沙汰を起こしたり長女にはオネショが出たりする。
罰金制や歩合制に縛られた父親の長時間労働に伴ういさかいは、今まで互いに信頼し合って来た家族に大きな亀裂をもたらし、その最中父親が仕事中に暴漢3人組に襲われ、荷物を奪われたうえ大怪我をさせられる事件が起きる。
その後の展開が分からないまま唐突に映画は終るのだが、きっとその後は観るものが考えて欲しいという意図なのだろう。
原題は「Sorry We Missed You」とあり、「済みません、ご不在でした」との意味で、父親が仕事で配達先に残す不在連絡を意味している。
労働組合などで保護されない英国の一部労働者の家族にまで影響を及ぼす実態を描いているのだが、日本の宅配業界も大同小異と想像がつくだけに、まして時折宅配にお世話になる個人としても胸に刺さり、観終わって少々考え込んでしまった。
便利になったり成長する光の部分があると、その裏には影や裏方の存在があることをまざまざと示してくれる映画である。
少なくとも宅配が来ることが分かっているときは今まで通り在宅せねばと強く思ってしまった。
◉今日の一句
船旅の揺れ連れ帰り冬に入る
◉健康公園のピラカンサ(トキワサンザシ)


