安田公男著「チンギス・カンの駆けた道」文芸社刊を読み終えた。
巻末のプロフィールを見ると著者は私より3歳年長で私と同じサラリーマン人生を送られ、その間もモンゴルやチンギス・カンに関心を持ち続け、更に定年後出来た時間でモンゴル研究に打ち込み、それらの成果としてこの本を書かれたようである。
「おわりに」を読むとモンゴルやチンギス・カンに興味を持つようになったきっかけは作家・井上靖の「蒼き狼」を読んだことからと書かれている。実は私もこのチンギス・カンと云う名を記憶したのがこの「蒼き狼」で、若い頃の一時期井上靖の作品をひと通り読むなかで出会った懐かしさが募る作品である。
今更云うまでもないが、12世紀~13世紀チンギス・カンはテムジンと云う名でモンゴルの一部族に生まれて遊牧民族を統一、一代で北部中国からロシア、ウクライナまでその支配領域を広げた。
また孫の時代には東西アジアを従えたうえで、ヨーロッパにまで遠征軍を送り込み、ユーラシア大陸の東西を同一民族で抑え、世界人口の半分以上を統治することになり真の意味での世界史の成立と云われることになる。
著者は基本の史書「元朝秘史」「集史」「元史」などを比較検討しながら読み込み、疑問点や矛盾点に自らの見解を提示する。
特にチンギス・カンやその軍団が行動した場所のかなりの部分の地名が後年大きく変わっていることから分かり難かった個別の地理的な史実を、著者独自の方法として衛星画像を探索して新たな提案を成していて、それが表題の「駆けた道」に繋がっている。
本文中にその成果である24枚の地図が挟まれていて、文章を読みつつこの地図に返りまた文章に戻ることを繰り返すことになる。
先日天皇皇后両陛下はモンゴルを初めて公式訪問され、最大級の歓迎を受けられると共に同国のスポーツの祭典・ナーダムに臨席され、花形競技の競馬も観戦された。
このモンゴル少年が騎乗する長距離競馬は、モンゴル軍が機動力を発揮してユーラシアを駆け抜けた様を充分に彷彿させてくれる競技で、マスコミがモンゴルを扱う際は必ずと云って良いほど紹介される伝統の競技である。
何れにせよモンゴルとチンギス・カンに関する知識を上書きしてくれた書である。
◉今日の一句
雲の峰紀伊の山脈(やまなみ)従へて







「チンギス・カンの駆けた道」
