矢島渚男(やじまなぎさお)著「虚子点描」紅書房刊 を読み終えた。
著者は2024年文化功労者に選ばれた俳人で、多くの著書や句集も出されているとのことだが俳句初心者の私にとっては初めての出会いである。
この本が対象にしている高浜虚子(たかはまきょし)は近代俳句の祖とも云うべき正岡子規の流れを引き継ぐ2人の内のひとりで河東碧梧桐(かわひがしへきごとう)と並び称される。
子規の死後この二人は紆余曲折を経た後、虚子は季題と定型を基本とする雑誌「ホトトギス」に依って伝統的な俳句を究め、碧梧桐は形式よりも新しさを追求し五七五からも解き放たれた自由律へと突き進み尾崎放哉や山頭火が生まれる源流になる。
この本は著者自身の俳句誌に、虚子の2万を超える膨大な句のなかから好きな句や気になる句を季節に従い1句ずつ取り上げ、毎号1ページの短文を加えて連載されたものが元になっている。
その多くは秀句鑑賞といえるものだが著者の立場で辛辣に評価し直されたものもある。また明治大正昭和の三代を生きた人物として伝記的な要素や時代背景的なことにも話が及んでもいる。
私自身は俳句の初心者で「坂の上の雲」から得た「高浜虚子は正岡子規の臨終に立ち合い以下の句を詠んだ」くらいしか知識がなかったが、後れ馳せながらこの本のお蔭で俳壇の巨星のひとりであることをその多くの俳句と共に知ることが出来た。
子規逝くや十七日の月明に
数えて見るとこの本に取りあげられている句は全部で308句ある。中には作者の記憶がないまま句のみ記憶に残っている
桐一葉日当たりながら落ちにけり
去年今年貫く棒の如きもの
春風や闘志いだきて丘に立つ
のような句もあるが、今まで知らなかった句で私が最も素晴らしいと思えたのは以下の句であり、著者もその短文のなかで「虚子を読んでいて、心底すごい、と感ずるのは、たとえばこんな句である」と書いていて僭越ながら全く同感である。
もの置けばそこに生れぬ秋の蔭
◉今日の一句
朝凪に沖の瀬集う漁り船
◉施設の庭、忘れ草と思うのだが少し自信がない。





「虚子点描」
