大橋鎭子(おおはししずこ)著『「暮しの手帖」とわたし』暮しの手帖社刊を読み終えた。
表題の通り大橋鎭子さんは、戦後の斬新な生活情報誌・「暮しの手帖」を編集長の花森安治氏と立ち上げ社長兼編集者として活躍した人で、この本は、自叙伝と云うべき部分と「暮しの手帖」が世の中に受け入れられる迄のあれこれとの両方が詰まっている。
奇しくもこの大橋さんをモデルにした高畑充希さん主演の朝ドラ「とと姉ちゃん」が現在NHKで再放送されている。
図書館でたまたま目にしたこの古い本を躊躇なく借り出す気になったのは「とと姉ちゃん」もさることながら、「暮しの手帖」の名前に牽かれたからで私なりの思い入れがある。
私は家電メーカーに就職して若い時分は品質管理関係業務に従事したが、その仕事の一部に「商品テスト」と呼ばれるものがあった。
試作品や完成品を実用試験や過酷な試験をして市場に出しても問題無いかを判断するもので、競合する他社製品がある場合はそれを購入して比較検討する。
当時家電メーカー各社の製品を比較「商品テスト」をして公表している中立的な機関が2~3あり「暮しの手帖」もそのひとつで一般に最も信頼されていたような気がする。
「商品テスト」の結果は公表前に事前にメーカー側に知らせ、誤りがないか公正を期すことが習いとなっていて、必要に応じてメーカーはテスト機関に申し入れるが、頑として見解が揺らがなかったのが「暮しの手帖」で「敵ながら天晴れ」と思っていた。
それを可能にしていたのが「暮しの手帖」の広告の不掲載と云う方針であった。この本に書かれてある初代編集長・花森安治氏の以下2項のそのこだわりの理由は非常に説得力がある。
・編集者として表紙から裏表紙迄全部の頁を自分の手の中に握っていたい。・
・広告を載せることでスポンサーの圧力がかかる、それは絶対に困る。
当時は家電メーカーの成長期で続々と新商品が創出されていたが、ジューサーミキサーもそのひとつで、私はその試作品のテストを担当し初めての商品なので色々なテスト方法を工夫していたが、その中で比較的小さな問題点を発見し協議した。
私も行き掛かり上対策案も考えたが、技術的に対策が極めて難しく、実用的にさほど問題にならないとの総合的な会社判断からそのままの仕様で出荷して、幸い市場からの反応に問題はなかったが、「暮しの手帖」の「商品テスト」ではこの事を短い言葉で的確に問題指摘され、本当に感心した記憶が鮮明に残っている。
「暮しの手帖」はどちらかと云えば女性目線の雑誌と思われるが、上記のようなこともあり個人的に長い間定期購読し海外に赴任するまで続けた。
従ってこの本に書かれてある「暮しの手帖」関連の記述「すてきなあなたに」「戦争中の暮らしの記録」「スポック博士の育児法」等は記憶に残っている言葉である。
大橋鎭子さんは2013年93歳で亡くなられたとのことだが、この本を残されたお蔭で私の古い記憶にも繋がるその開拓者の道程を学ばせて貰った。
🔘今日の一句
子燕は口も裂けよと餌を乞ひ
🔘一昨日は2ヶ月に1度の同年代7名の昼食会で、垂水駅近くの古民家カフェと称する店へ行ってきた。途中商店街を歩いていると道に鳥の糞の痕があり、ひょっとしたらと思いアーケードを探すと鉄骨支柱に燕の巣があるのを見つけた。
4羽の子燕がいてそこへ突然親燕が来て一瞬で餌を与え翔び去ってシャッターチャンスを逃したが、その時の子燕の餌をねだる様子は本能に溢れていて正直呆気にとられてしまった。
この巣の下を毎日数千の人が行き交っていると思うがこの喧騒のなかで子育てする燕のバイタリティーには感心する。
それにしてもツバメの子を見るのは何年ぶりだろうか?少なくとも10年以上になると思うが。
(緑色はアーケードのプラスチック天井)

『「暮らしの手帖」とわたし』
