著者は近頃マスコミにも時折登場する中国中心の東洋史・近代アジア史の専門家で、私も清朝末期から辛亥革命期にかけての政治家の評伝「李鴻章(りこうしょう)」や「袁世凱(えんせいがい)」などの著作を読ませて貰ったことがある。
書名表題が少し刺激的だが、内容的には至極まともで中国史上の色々な意味で悪評高い著名な人物12名を選び、過去の中国の史書に書かれていることの中へ分け入り、背後に隠れた客観的実像に迫ろうとするものである。
中国歴史書の手本とされる「史記」を始め中国の史書の中核を成すのは「紀伝体」「列伝」と呼ばれる人物評伝であり当然人物評価がついて周るが、それは目前の価値判断に左右され著しく偏ることが多く、「悪党」とされた人物の史料を客観的に読み直し、何故悪評が必要だったかを考えることで中国史全体の見直しに繋げようとするのが著者の意図である。
一般的に帝国とは以下の二つの意味を持つが、そこからみて「中華帝国」は中国史を最も端的に表す言葉であり現代にも繋がると著者は考えていて、この本のなかで「中華帝国」の歩みを考えることで世界観の見直しにも繋げたいと書いている。
・国民国家の範囲を超える統合支配
・皇帝が君臨支配する
350ページに亘る大部であり個々の人物に触れる余裕はないが、見出しに使われている6つの時代と12の人物を書き出せば以下の通りで、悪といっても前向きに生きた結果としてのものや退嬰的な結果なのかをはじめ、中国史のなかで膨大で多様な物語があることが理解出来、期せずして中国史の学びになっている。
・唐の太宗ー名君はつくられる
・安禄山ー「逆臣」か「聖人」か
②カオスの帝国ーー五代
・馮道ー無節操の時代
・後周の世宗(柴栄)ー最後の仏敵
③最強の最小帝国ーー宋
・王安石ー「拗ね者宰相」
・朱子ー封建主義を招いた「道学者先生」
④再生した帝国・変貌する帝国ーー明
・永楽帝ー甥殺しの簒奪者
・万暦帝ー亡国の暗君
⑤挫折する近代ーー明
・王陽明ー「異端者」の風景
⑥甦る近代の変革ーー清末 民国
・康有為ー不易の思想家
・梁啓超ー「彷徨模索」した知識人
🔘今日の一句
万緑や紺・青・藍に碧・翠(みどり)
🔘健康公園のソメイヨシノの実、黄緑から紅くなり最後は赤紫から黒く熟して来る。熟すのを狙って野鳥が食べに来る。





野鳥が啄んだ痕

雀が啄んでいる

「悪党たちの中華帝国」
