北岡伸一著「世界地図を読み直す・協力と均衡の地政学」新潮選書 を読み終えた。
著者の北岡伸一氏は日本政治外交史の専門家で国連大使や国際協力機構(JICA)理事長などを歴任している。
2025年4月11日のこのブログで「危機の外交岡本行夫自伝」の本を読んだことを書いた際に、この本の冒頭で「刊行に寄せて 岡本さんの思い出」と題した北岡氏が書いた文章を紹介したことがある。
北岡氏は過去JICA理事長で出張した国が50ヵ国、学者として訪問した国などを加えるとこれまで訪問した国の総数は108ヵ国に達するとのことである。
この本はその訪問した国の人々がその歴史的地理的条件のなかでいかに努力しているか、日本をどう見ているかについての考察で満ちており著者はその意味で21世紀の日本にとっての世界地図であると自負している。
ただ通常と異なるのはアメリカ、中国、韓国など日本外交の主要相手国が間接的にしか取り上げられておらず、ロシアと近隣諸国、アフリカ、南太平洋諸国、中南米、中央アジアの国々が対象となっている点にある。
これは著者が二国間関係の利害調整と云うこれまでの外交を離れ、日本の立脚点「日本はどこに立ち何を目指すのか」を定めることがこれからの外交に必要だとの認識から来ていて、馴染み深い近隣諸国から距離を置き、やや遠くから日本を眺めるとどういうことが言えるのか、そこから日本の立脚点を考察しようとするのがこの本の狙いのようである。
例えばミャンマー、東ティモール、ザンビアを歩けば中国の世界戦略が見えて来て、日本がどうすべきかが国際協力と勢力均衡の視点から浮かびあがって来ると云う具合である。
その意図とは別に私個人としてこの本を評価したいのは、読み終えて今まであまり馴染みがなかった国々の歴史的背景や現在の立場が地理的環境と合わせてかなり理解が前進したと思えることにある。
例えばエジプト人が日本人のことを強く意識し始めたのは日露戦争の時でナショナリズムが高揚、かつて国連事務総長だったエジプト人・ブトロス・ブトロス・ガリ氏は日本に来る度に東郷神社と乃木神社にお詣り知るのを習慣にしていたと云う話は初耳で響くものがある。
この本の「おわり」にも書かれているが外交の基本はあくまで経済力と軍事力だがその二つに制約があるなかで、日本が世界の信頼を維持していくには「非西洋から率先して近代化して来た歴史」「西洋とは異なる途上国へのアプローチ」「東西文明の架け橋」といったことがキーになるようである。
🔘今日の一句
汽水域南風(はえ)が潮の香引き剥がす
🔘色々なところに顔を出すムラサキカタバミ(紫方喰)
施設の庭の片隅






「世界地図を読み直す・協力と均衡の地政学」
