森山光太郎著「草莽の臣」早川書房 刊を読み終えた。
ここ10年位小説の類は読まず研究書や解説、ドキュメンタリーを中心に本を読んで来たが、この小説本はたまたま図書館で「今日返却された本」が置かれている棚で出会い、故郷の大先輩・吉田松陰が唱えた「草莽崛起(そうもうくっき)・在野の人が立ち上がる」の言葉に牽かれて手に取ってしまった。
借り出す前のめくり読みで、この本の主人公が幕末の長州藩士・益田右衛門佐親施(ますだうえもんのすけちかのぶ)と古くからの益田一族であり、萩藩毛利氏の永代家老・益田家は山口県下では知る人ぞ知る存在だがとても全国区とは云えないなかで取り上げられていることに驚いてしまった。
益田右衛門佐は幕末の長州藩家老職のひとりとして元治元年(1864)長州藩兵が京へ攻め上ったいわゆる「禁門の変」の指揮を執り、戦後幕府の長州征伐の折他の2人と共に責任を問われ切腹させられた。
益田氏は現在の島根県益田市域に威を振るった国人領主で元は藤原氏の出自である。戦国時代以降毛利氏に臣従、関ヶ原の戦いの後長門国へ移り須佐(すさ・萩市)13000石を領した。
この本は益田右衛門佐を主人公狂言回しにしつつ、
①先祖の藤原氏・中臣鎌足が活躍した古代・乙巳の変(いっしのへん)~大化の改新~白村江の戦い~壬申の乱。
②先祖の益田兼久が執権・北条時宗の意を受けて活躍する鎌倉時代・蒙古襲来。
③先祖の益田元祥(もとよし)が活躍する豊臣秀吉の桃山時代・朝鮮出兵・唐入り。
④右衛門佐自身の幕末・黒船来航~禁門の変。
の一連の国の危機を通じ益田一族の危機回避の為の活躍を小説仕立てにしたものである。
それだけに、例えば右衛門佐が新選組の土方歳三と通じていたなど荒唐無稽な部分も随所にあるエンターテイメント色が濃い作品になっている。
事実を探求したい側のものにとってはもの足らない部分もあるが、材料を探して紡ぐ物語の構想力は大したものと思われる。
あまり知名度が高いとは云えない故郷に関連する人物や氏族を取り上げて貰い感謝しているがそれはさておき、個人的には作者が何故益田一族や右衛門佐を小説の材料に選んだのかに興味がある。
🔘今日の一句
青芝に憩う母子の似た笑顔
🔘健康公園のヤマボウシ(山法師)









「草莽の臣」
