NHKBS プレミアムシネマでたて続けに黒澤明監督、三船敏郎主演のモノクロ映画が放送され、長い間録画していたがようやく観ることになった。
黒澤明監督の映画は相当な数観たつもりになっていたが、この二つの映画は何れも初めての出会いで、戦後日本が歩んできた道のりの一断面が背景になっていて、世界の巨匠といわれるようになる監督の上り坂の途中を観たような気にさせられた。
①昭和24年(1949)「野良犬」
個人的な事ながら昭和24年といえば私の生まれた年であり、この映画を観ながらまだ戦後の混乱が残っていたのだと個人的感慨に浸ってしまった。
携帯していた拳銃を掏られた刑事(三船敏郎)が、責任を感じ必死に取り戻そうとする過程を泥臭く描いているが、その拳銃で殺人事件や先輩刑事(志村喬)への殺人未遂が起こり、追い詰められながらも何とか執念で犯人を検挙する。
刑事と殺人犯(木村功)は復員兵で、復員の途中共に全財産の入ったリュックを盗まれた経歴があり、一方はこのような犯罪を防ぐ警察を志し、もう一方は自暴自棄となり犯罪の道へ進んでしまうことが映画のなかで語られ、どうやらこれがこの映画の主題のひとつのようである。
闇市や初期のプロ野球、流行歌など戦後の風俗が丁寧に描かれている。出演者は画面を観て殆ど個人名がわかったが、唯一わからなかったのは殺人犯と関わるダンサー役で、気になって冒頭の出演者紹介字幕を見直すと、若き日の淡路恵子さんだと初めてわかり正直云って驚いた。
②昭和35年(1960)「悪い奴ほどよく眠る」
公務員である父親を自殺に追い込んだ黒幕や開発公団の上層部に復讐を果たすため、公団副総裁(森雅之)の娘(香川京子)婿となり、友人(加藤武)と共に計画的に実行していく人物(三船敏郎)が主人公の復讐劇、社会派と云うべきサスペンスである。
映画の冒頭、東宝株式会社の名前と併せ「黒澤プロダクション」作品と云う字幕が出るが、これが黒澤プロの第一回作品らしく、この辺りから黒澤監督の世界への飛躍が始まるのだろう。
この映画のストーリーが秀逸なのはこの復讐劇が途中まで成功するかのように進行しながら、最後に主人公や組織の末端人物は殺され、黒幕や上層部が安泰に終わってしまうところにあり、題名もここから来ているらしい。
昭和35年といえば、昭和30年頃から始まった日本の高度経済成長が軌道に乗ると共に、安保闘争が高揚、作家・松本清張が「日本の黒い霧」を発表した年でもあり、成長の蔭の矛盾や汚職、すなわち黒い霧が表面化しようとしていた時期に当たる。
当時の状況下、この映画の結末は製作者が何を意図しているのか考えさせられる。
🔘今日の二句
朝歩き土筆に憶ふ幼き日
美祢線の復旧遠し亦の春
🔘施設の庭、チューリップ




