本郷和人著「権力の日本史」文春新書刊 を読み終えた。
著者は日本中世史の専門家で雑誌やTV等にも時折登場したり色々な著作もあり、私も鎌倉時代、以後の武士の世を決定付けた争乱「承久の乱(じょうきゅうの乱)」などでお世話になっている。
この本は著者が日本史を研究するなかで日本の権力構造に興味をもち、誰が実権を握っているのか、誰の云うことに従っているのか、実質の決定は誰が行っているのか、その背景や根拠は何なのかを解明し日本の形がどのようにして生まれて来たかを理解説明しようとしている。
著者はこの解明に当たり日本の権力を歴史的に担ってきた、天皇・皇族、貴族(公家)、武士、僧侶各々の世界での史料を紐解き権力の動きを探って行く事になる。
その結果を踏まえ、全体を通して著者が日本の権力の特徴として挙げていることは以下のようなポイントになる。
・近代社会は勿論のこと、中国や西洋などの歴史を見ても地位が権力の源であるが、日本では地位より人が優先されるケースがある。
・日本の権力構造を見ると地位(公の役職)とは別の「家」の序列がある。ひとつは皇族、貴族、武士、庶民と云った階級としての家の序列があり、この内部例えば貴族なら貴族、武士なら武士で家を単位とした序列がある。
・もうひとつの序列は家の内部にあり、「家」のトップ「家長」の座を継ぐことが権力の継承になりいわゆる「世襲」の原理が働く。
・権力のリアルは人を従わせる力であり、軍事、経済、知力などが重要な要素となるが、実際の場面では世襲と才能(能力主義)が重要な二軸になり構成される。
・明治維新を「世襲と才能」の観点で考えると、今まで世襲に重きを置いて約1000年を歩んで来たものが、一転して才能を根拠として登用される日本史上最大の変革である。
・富国強兵、文明開化をしなければ日本が植民地になるという危機感からその手段として才能の重視が実現する。明治の元勲、大久保利通、伊藤博文、山縣有朋など子供の為に財産は残しても政治的なえこひいきや将来に便宜を図るような振る舞いはしていない。
🔘上記に関連し少し余談になるが、私は山口県の生まれなので少し身びいきなところもあるが、明治維新を担った薩・長藩閥政府は富国強兵、産業振興を進めるに当たり、例えば官営八幡製鉄所、富岡製糸場、北海道開拓使などのように我田引水のようなことはなく、客観的に最適地を選定していてその事を私は密かに誇りにしている。
🔘今日の一句
摂播の境越え来る春の月
私の生まれ故郷の村ではどこの家にも南天が植わっていた記憶がある。




「権力の日本史」
