犬養道子著「歴史随想パッチワーク」中央公論新社刊を読み終えた。
云うまでもないと思うが、著者は五・一五事件で青年将校等に暗殺された犬養毅首相の孫で、評論家として数々の著作を成すと共に生涯をかけて難民救済活動に従事、平成29年(2017)に亡くなられた。
著者の名前は知っていたがその著作を読むのは初めてである。
パッチとは「つぎはぎ」のことで「まえがき」を読むと著者は母親からパッチワークで大事なことは「善い糸」だと教えられ、この本に挙げられている17の色も形も様々なストーリー・ヒストリーが出来上がったのは、地球を抱く「北緯30度線」という「善い糸」が前もって手に有ったからだと書かれている。
北緯30度線を見るため、私もしまってあった地球儀を取り出して来たが、この線は鹿児島県南方の海上を東西に伸び、東方は太平洋を横切り「新大陸」をかすめ通り再び海へ入るすなわち新しい文明地へ出会う線となる。
一方西へ向かうと上海をスタート地として古代文明や文化を貫く線になる。
17の章の中には現時点だけみるとその糸となる30度線に触れていないものもあるが、ストーリーの中で何らかの縁が生じていることが説明される。
著者は戦後ヨーロッパに渡り聖書の研究に没頭された時期があったようで、正直言って聖書やキリスト教に関わる部分などは手に余る。
然し各章に出てくる難民や女性、虐げられて来た人々に関する記述は著者が永年活動された分野だけに迫力や説得力がある。
また第15章の『「歴史認識」とは何か』は「朝鮮」「中国」「上海・南京1941年」と三つに区分された長い章で、日本の近代史を相手国の立場も充分理解して論じたもので、日本人として読み通すのが辛い部分も有るが、その内容論旨については頷けるものが多い。
🔘この本に書かれている文明を貫く「北緯30度線」を、地球儀を引き出して1周させ、凡その位置関係を確認出来たことで新たな知見になった気がする。
🔘今日の一句
煮凝(にこご)りや鰈の卵ちりばめて
🔘介護棟屋上庭園の寒風に震えるパンジー





「歴史随想パッチワーク」
