小川 雄(おがわゆう)著「徳川海上権力論」講談社選書メチエ を読み終えた。

私は生まれ故郷が長門国・山口県なのでどうしても毛利びいきが根底にあり、潜在敵国とも云うべき徳川氏についてはこれまであまり関心を持たずに来た気がする。
そんななか徳川と名の付いた本をわざわざ本屋さんに注文してまで読む気になったのは、私の知る歴史家・平山優氏と同・磯田道史氏の書評が、別々の新聞の読書欄にほぼ時を同じくして掲載され、何れも好意的な評価がされていたことによる。
中世の海賊や水軍と呼ばれた集団については瀬戸内の村上水軍、四国の河野水軍、伊勢の九鬼水軍、東海や関東の北条氏や今川氏の傘下で活躍した水軍などが有名で歴史書や小説にも登場するが、徳川氏の水軍について系統立てて研究されたものを見るのは初めてのような気がする。
著者は膨大な史料をもとに、元々村レベルの小勢力であった徳川氏(松平氏)が中小規模の国衆(くにしゅう)→戦国大名→豊臣大名→将軍として権力の頂点に立つまでの経過の中で、海上軍事の視点でどのように成長を遂げていくのかを解明していく。
この徳川氏の成長過程について研究や解説した書は数限りなくあったが政治、軍事、民政を問わずそのほとんどは陸上を対象としたものである。
しかし考えてみると中近世以前における海上交通は現代とは比較にならないほど陸上交通に比べて重要であり、著者の前例にとらわれない視点は貴重な成果に繋がっている気がする。
また著者が扱っている時代が日本史の区分で云われる中世と近世にまたがるものであり、今までの中世史、近世史で絶ち切られるようなものの見方に対して、海上権力という切り口で新たに長期的な視座に挑戦しているようにも見受けられる。
徳川氏が権力の頂点に君臨した江戸時代は鎖国時代とも云われ、私などはともすれば徳川氏は農本主義で海上や海外への視点に欠けると思って来たが、決してそうでは無く海外をもにらんだ海上交通、海上権力、海上軍事への関心が連綿として続いていたことなど新たな知見になった。
今年読んだ本の中で収穫のひとつである。
🔘今日の二句
霜避けに小笹差し掛け豆の苗
街暗渠(あんきょ)狸親子の秘密基地
🔘初冬の健康公園と隣接の県有林、未だ秋が残る。






