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戦闘民族

昨年末にアクセプトになった原稿が公開の運びとなる。タイトルは「Sexual conflict underlying external female genital mutilation in spiders: assessing whether females benefit from multiple matings」(クモの交尾器破壊と性的対立:メスの複数回交尾に利益があるか確かめる)というもので、交尾器破壊という現象は私とドイツのチームが何例も報告しているわけだけど、メスにとって破壊が適応度上のコストになっているかははっきりしていなかったのでそれを調べた、という話だな。オスが交尾時にメスの交尾器を破壊して再交尾能力を奪うという行動は、オスにとっては父性確保の上で大きなメリットになるわけだけど、だからと言って両性の間に利害の対立があるかどうかはわからない。で、対立があるかどうかは交尾器破壊という現象の進化を考える上で重要な要因なのだな。で、交尾器破壊がメスに与えるコストとして一つ考えられるのが破壊のダメージでメスの生理的状態が悪化するというもので、もう一つが生涯で一回しか交尾できなくなることが産卵数などに影響するというもの。で、多くの動物でメスが複数回交尾することで繁殖上利益を得ていることがわかっているので、今回はそれを調べるわけ。で、これへのアプローチとしてスッと考えられるのが、メスの交尾回数を操作してやって一回交尾のメスと例えば2回交尾のメスとで産卵数を比較してやることなのだけど、この研究の対象種であるギンメッキゴミグモでは9割以上の交尾で交尾器が破壊されちゃうので、メスを複数回こうびさせるのが難しい、という障害があったのね。そこでちょっとしたトリックを使ったのが一つのポイント。実はこのクモの場合、一回の交尾が右からと左からとの2回の精子受け渡しイベントから構成されていて、その2回が終わって初めて交尾器が破壊されることがわかっている。トリックはこの性質を利用して、交尾を始めたペアが一回精子を受け渡したところで交尾を中断させ、オスを2個体目に交換するということをしたのね。で、2個体目が右でも左でも良いけど1個体目と同じ側から精子を渡すと交尾器が破壊されなくて、そうすると2個体目が2回精子を渡すことができる。メスから見ると都合3回精子をもらえるので、1.5回の交尾をしたことになる。で、これと通常の1オスから2回精子をもらったメスと、もう一つ2オスから左右一回ずつ精子をもらったメス、1オスから1回だけ精子をもらったメスを作って、S宮さんに飼育してもらって死ぬまでに何回産卵したか、一回あたり何個卵を産んだかを数えてもらったというわけ。結果としては、1.5回交尾したメスは他より生涯産んだ卵数が他より多くって、やっぱりメスは交尾器を破壊されて交尾回数が制限されることで損してるじゃん、ということになった。ちなみに1回しか精子をもらわなかったメスも2回もらったメスより一回当たりの卵数が多くって、これは上の話とそぐわないのだけど、よく考えてみたら、1回しか精子をもらわなかったメスは交尾器が破壊されていないのだから、これはひょっとして破壊そのものにも何かデメリットがあるのかもね、という結果でもあるという。つうわけで、ギンメッキゴミグモではオスとメスで利害が対立しているよ。だから、このクモのメスが交尾器破壊を受け入れているように見えるのは、別にコストがかかっていないからではなくて、メスにコストがかかってもオス側の利益が大きいからからだと考えられる、という話。で、この原稿、久しぶりに王立協会から出してもらえたし(50過ぎてからは、もう出せないだろうなあと思ってたのでちょっと嬉しい)、国際学会バンバン行くつもりで計画してもらった科研費がコロナ禍の影響でそこそこ残っていたのでそこからドカンとお金を出してOAにしたのね(といっても王立協会のOA費は比較的安め)。お金払ってOAにしたのは初めてなの。で、初めてと言えば、原稿を最初に送った時にエディターリジェクトされて、でもその理由が「お前ちゃんとこの話のポイント理解してないやろ」ってものだったので、文句を言ったら認めてもらって再投稿になったこともあるのね。やっぱあまりに不条理だと思ったら主張すべきですね。世界への信頼感を少し取り戻したよ。で、1回目の査読のコメントは大変あっさりしたもので、マイナーリビジョンじゃん、って思ってウキウキ言われたこと全部従って改訂稿を投げたら、2回目の査読で最初の人と別のところに行って、またこの人がこちらの言ってることを誤読してリジェクト意見をつけてきたみたいで、リジェクトになったのだけど、流石に編集も再投稿可として扱ってくれたのね。それで今度は反論だけしてもう一度投げてやっとアクセプトになったという。今回は戦ったよ!っていうか戦ってなんぼだよ!!

 

Nakata, K., & Shigemiya, Y. (2025). Sexual conflict underlying external female genital mutilation in spiders: assessing whether females benefit from multiple matings. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences, 292(2039), 20242722. https://doi.org/doi:10.1098/rspb.2024.2722 




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