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『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』短評

FM COCOLO CIAO 765 毎週月曜、11時台半ばのCIAO CINEMA 1月5日放送分
映画『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』短評のDJ'sカット版です。

その昔アーチェリーの韓国代表としてメダリストにもなった中年サラリーマンのジンボン。商社で働いているんですが、会社員としてはうだつが上がりません。リストラ候補ナンバーワンの座にあったんですが、上司から「アマゾンの奥地で弓の名手を見つけ出し、アーチェリーの世界大会でメダルを取らせる」という前代未聞のミッションを命じられます。それで、その国の首脳を喜ばせ、金の採掘事業を会社で請け負うという算段なんですね。いざ、ジンボン、アマゾンへ!

エクストリーム・ジョブ(字幕版)

僕もCIAOで2020年に短評した韓国のコメディに『エクストリーム・ジョブ』ってのがありまして、思い出すだに楽しかったんですが、この「大命中!」は脚本が同じペ・セヨン。ジンボンを演じたリュ・スンリョンとアマゾンの奥地でのクセの強すぎる通訳に扮したチン・ソンギュがそれぞれ『エクストリーム・ジョブ』から再共演しています。監督は、編集マンとして数々のヒット作に関わってきたキム・チャンジュです。
 
僕は先週月曜夕方にTジョイ京都で鑑賞してきました。それでは、今週の映画短評、いってみよう。

[c] 2024 BARUNSON E&A, ROD PICTURES, CJ ENM ALL RIGHTS RESERVED
あの手この手で、コメディです。清々しいほどに、コメディです。ほぼ全編を通して、作り手たちは貪欲に笑いを狙ってきます。とにかく数を打ってくるタイプなので、それがどれぐらい当たるか、打率によって、その観客のこの作品への評価が変動するということになります。「そこまでいっちゃう?」という大げさなものから、効果音を付け足す細かいものまで。韓国のローカルネタから、人類普遍的に笑っちゃうようなドタバタ、あるいはカルチャーギャップもの、ひいては作品を横断するようなメタ的なものまで、笑いの百貨店です。笑わせ方も、見た目が面白い画面の構築、俳優の身体的な動きに台詞回しなど、思いつく限り入れてきたという満漢全席です。なんて言うと、面白いんだろうけどウザそうとか、逆に疲れそうと思ってしまうかもしれません。ま、否定はしません。ただ、そこは、あの僕のすっかり唸ってしまった痛快作『エクストリーム・ジョブ』の脚本家の仕事ですから、ひとつひとつの笑いがつながるような、点と点を線にしつつ物語にメリハリを与え、引き締める効果も果たしています。

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具体的に挙げると、まず冒頭です。ジンボンはいきなりヘリに乗っていて、アマゾン上空にいます。何の説明もない。一応はVIP待遇なようで「監督!」なんておだてられているうちに、天候が急変して、ヘリに雷が落ちて、操縦不能となる中、ジンボンだけがいろいろあって、パラシュートもなしにジャングルへと落下します。つかみはOKどころか、いくらなんでも、これはやり過ぎ狙い過ぎだろうと思っていたら、ジンボンがガバっと目を覚ます。場所はソウルの務める会社のオフィス。なんだ、夢だったというパターンか。正直、なんだか安っぽいなと思いながら、ジンボンは上司に怒られ、「そんなリストラ候補金メダル級の元メダリストにミッションがあるぞ」と今回のアマゾン行きを命じられる… あれ? さっきのは夢だったってことだったのに、結局ジンボンは? で、しばらく韓国での彼の仕事や家庭内での四面楚歌っぷりが伝えられた後、彼はそのミッションにかけるしかないってタイミングで、どうなるかと言うと、結局、あのヘリからひとり墜落事故の続きでした。って、あれ、生きてたん? んな、アホな! と観客にツッコませているんですね。そして、この技法は、めったに使われないフラッシュ・バックの逆、フラッシュ・フォワードじゃないか。つまり、夢オチと見せかけておいて、実は現実だったという高度な語りのテクニックとやっていることのくだらなさが不自然に同居するという面白さを初手から打ってくるわけです。これはなかなかすごいことですよ。考えたら、邦題の「MEは何しにアマゾンへ?」という日本のバラエティ番組の安直なパロディーになっているわけですが、主人公の否応なしにアマゾンへ放り込まれたシチュエーションを端的に示すというか、パロディーとして笑いで補強する副題になっているのも気に入っています。ちなみに、『アマゾン活名水』というオリジナルタイトルも、冒頭のソウルのシーンで出てきます。「活名水」は、ジンボンがかつてテレビCMに出ていた胃腸薬の名前で、これは実在するというか、あの扇子のマークって韓国で最も古い登録商標、つまりは知らない人はいないレベルのものなんですって。日本だと、なんだろう、キャベジンとか、ラッパのマーク的な感じの知名度ですかね。攻めてるなぁ。というか、製薬会社もOKしているのが笑えます。こういうメタ的な笑いという意味では、ジンボンが冒頭で上司から脅しをかけられるところにも仕掛けがあります。「会社をクビになって小さなチキン屋でも始めるか?」みたいなことを言われるんですよ。ここでチキン屋を出しているのは、間違いなく、同じキャスト・脚本家チームの『エクストリーム・ジョブ』の舞台がチキン屋だからです。細かいなぁ。

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メインとなるのは、アマゾンの先住民たちとの交流から生まれるカルチャー・ギャップの笑いです。僕は、正直、ここが一番心配でした。目先の笑いを取りに行く余り、一線を越えて原住民をバカにしまうのではないかってことです。僕マチャオによく似た奴もいるくらいだから、頼むからそんな失礼なことはよしてくれよと思っていたら、そんな心配は大命中どころか、大外れでした。やっぱり、ちゃんとしてます。アーチェリーの世界大会が終わってから自分たちの村に戻った先住民3人が家族や仲間に韓国での体験を報告するところでは、「肉が食べたいなら自分で狩ればいいのに、わざわざ金という紙切れを苦労して手に入れて、しかもそれで死んだ動物の肉の切れっ端と交換するんだ。変わってるだろ」なんて言わせるわけです。僕たちが当たり前に暮らす経済システムに対して批評的な視点を置いているし、いつの間にか生身の人間を置き去りにしている資本主義とそれがもたらす欲望剥き出しの無責任な自然破壊に一矢報いる展開はさすが。そして、僕たちのいる日本ではそこまで知られていないアーチェリーという競技の面白さをも伝えてくれるなんて、すごいもんですよ。

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繰り出される笑いの種類によって、人によっては胃もたれする時間もあるやもしれませんが、オリジナルタイトルには胃腸薬も入っているから大丈夫。大衆娯楽作として、僕はこれはかなり上出来で的を射たものになっていると思います。向こうでのヒットも頷けるってなもんです。
この曲は映画で使われているわけではないんですが、88年のソウル・オリンピックを思い出してみようと公式テーマソングを選びました。聞くとしっかり、あのオリンピックが思い出されるのが不思議。ちなみに、この時、韓国は個人団体合わせて7つもアーチェリーのメダルを取っています。

さ〜て、次回は、1月12日(月)ではないんです。12日は長尺のホリデースペシャルが放送されるということで、CIAO 765はお休み。てことで、次回は19日に評する作品を決めるべく、スタジオにある映画神社で初詣だとおみくじを引いて今回僕が引き当てたのは、1月9日公開の『愛がきこえる』です。韓国から中国へという流れとなりましたね。ろう者の父親とコーダの娘の物語。近年は『Coda コーダ あいのうた』『ぼくが生きてる、ふたつの世界』など、ろう者とろう者を親に持つ耳の聞こえる子どもの関係を扱った傑作が生まれていますね。中国のはどうだろう。久々の中国映画、楽しみです。さぁ、あなたも鑑賞したら、あるいは既にご覧になっているようなら、いつでも結構ですので、Xで #まちゃお765 を付けてのポスト、お願いしますね。待ってま〜す!



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