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『ランド・オブ・バッド』短評

FM COCOLO CIAO 765 毎週月曜、11時台半ばのCIAO CINEMA 9月1日放送分
映画『ランド・オブ・バッド』短評のDJ'sカット版です。

フィリピンとマレーシアの間に位置するスールー海イスラム過激派が跋扈する緑豊かな島で、米軍特殊部隊デルタ・フォースが、拉致されたCIAのエージェントを救出する極秘任務を決行します。精鋭が揃う部隊の中で、唯一実践経験がほとんどないキニーは、空からの後方支援チームとの連絡係として同行することになりました。目的地に着くやいなや、部隊は反政府ゲリラに遭遇。激しい戦闘のうえ、地上部隊は壊滅寸前。戦地で孤立したキニーは、無人戦闘機をアメリカ本土から操縦するベテラン・オペレーターのリーパーとのやり取りを頼りに脱出を図るのですが…
 
監督と共同脚本を担当し、製作にもクレジットされているのは、『シグナル』というSF作品で注目を集めたウィリアム・ユーバンク。リーパーをラッセル・クロウ、キニーをリアム・ヘムズワースが演じる他、デルタ・フォースの隊員のひとりとして、リアムの実の兄であるルーク・ヘムズワースも出演しています。
 
僕は先週水曜日の夜、イオンシネマ茨木で鑑賞してきましたよ。それでは、今週の映画短評、いってみよう。

湾岸戦争の頃から戦闘がリアルタイムに近い形でテレビでも報道されるようになり、GPSによる正確な位置特定やインターネット・衛星電話などの通信技術の発達により、攻撃の遠隔化が進んだことで、近年ではドローンや無人戦闘機が駆使されていることは周知の通りです。テレビだけでなく、SNSを通じても戦場の様子が僕たちの日常に飛び込んでくることも当たり前になっていますね。この映画は、地獄と言い換えられる「ランド・オブ・バッド」と日常生活が同時進行で進み、そのめまいがするほどの強烈なコントラストを描き出していきます。

© 2025 JTAC Productions LLC. All Rights Reserved.
今回のミッションである拉致されたエージェントの救出。反政府ゲリラが拠点としているジャングルの中の基地へと、特殊部隊の現場チーム4名は向かいます。ヘリから島の海岸へパラシュートで降下したら、今度は徒歩で道なき道を移動する。そこで今作のテーマでもあるテクノロジーと戦争について、彼らは議論をします。唯一実践経験の乏しいキニーは、連絡係として、技術が戦闘行為の合理化を進め、究極的には戦争そのものを無力化してくれるという考えの持ち主なのに対して、デルタ・フォースで経験を積んできた残りの3名は、戦争は実際に武器を駆使して人間が人間の命を奪うものであり、いくら技術が進歩しようと、戦争はなくならないし、人間の残忍さは変わらないと喝破します。目標地点にたどり着くと、キニーはその先輩たちから言われるんです。「ランド・オブ・バッドへようこそ」。映画のタイトルは既に島への上陸の際に文字で出てくるんですが、このセリフが言わば二度目にして本当のタイトルが提示されるんです。そこからは、本当に地獄絵図が始まります。双眼鏡、ライフルのスコープごしの映像を巧みに織り交ぜながら、敵地に乗り込もうとする4人の行動が極度の緊張感とともに画面を支配していくのですが、ここまでなら、戦争映画でちょくちょく見る潜入作戦なんですよ。本作は、「もうひとつの現場」が同時に描かれるのがユニークなんです。それは、モニター越しに戦場を監視し、キニーと連絡を取り合いながら、要請を受けて無人機からのミサイル攻撃を展開したり、特殊部隊のナビゲーションを行うアメリカ・ラスベガスにある米軍基地です。

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ラッセル・クロウ演じるリーパーは、まるで会社に出勤するように車で基地に入り、コントロール・ルームを通じて飛行機を操作して特殊部隊とやり取りをする時にはその部屋もまるで戦地という緊張感に包まれるのですが、壁一枚隔てた軍人たちの控え室ではみんな一緒にバスケの試合をTVで観て楽しんでいます。リーパーも、任務の合間にゴルフの練習をしたり、出産間近の妻の心配をしたりという状況。その日の仕事が終われば、別のメンバーと交代して、帰りにスーパーに寄って帰宅する。この対比がすごいんですよね。戦争映画でここまでの緊張と緩和が揺れ動くのはなかなか見たことないです。ランド・オブ・バッドとオーディナリー・ライフ。でも、それは地獄と天国、戦争と平和という風に明確に分けられるものではありません。ラッセル・クロウ演じるリーパーたちにとっては、日常に戦争が入り込んでいるし、キニーは命からがらのジャングルにいても、リーパーと地元のピザ屋の話をして和むような時があって自分の本来の暮らしに接続しています。

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戦争においては、ひとりひとりの兵士は数字として歯車として扱われがちだし、何か作戦を遂行するにあたり、誰かの怪我や死を割り切っていかないといけない局面があるのは事実でしょう。それは、ジャングルで武器を持つ兵士もそうだし、ベガスでエナジードリンク片手に画面を見つめる軍人もそうです。彼らはまるで企業戦士のように見えてくる。でも、この作品では、そういう割り切りなんてできるわけないだろうという人間臭い判断や行動を取るキャラクターや局面が何度か出てきます。合理性が支配するシステムを、バグのようにして人間の御しがたい感情という不合理が破るような。それこそ、現代の戦争を描くこの興味深い作品の魅力でありカタルシスであり、溜飲の下がるところです。敵を抹殺することでガッツポーズを取る映画になっていないのが、僕がこの作品を評価する軸です。イスラム過激派が敵として設定はされているものの、彼らが絶対悪で米軍が善なのかという価値判断はうまくかわしています。これはあくまで娯楽映画として戦争を描く上で賢明であると同時に、観客がのうのうと映画館でポップコーン片手に映画を観て日常生活を送っている一方で、たとえばガザではウクライナでは何が起きているのか。そこに想いを馳せる動機づけにもなるでしょう。それから、日本の観客にとっては、今作で過激派がアジトとするジャングルの中のダムが、第二次大戦中に日本軍が建設したものであると劇中で知らされることで、僕たちの今の日常が過去の戦争の果てにあり、片や悲劇がまだ続いているということも意識させられることでしょう。そんな良作なのに、多くのシネコンではたった2週間で上映が終わるなんて… 僕はそこに今の日本の映画産業のバランスの悪さを痛感しながら、その日唯一僕が観ることができたイオンシネマ茨木の1日たった1回の夜の上映が終わり、そこから1時間半ほどかけて自宅に戻ったのでありました…
サントラには、カントリーが何曲か使われています。それは、戦場とラスベガスの対比に一役買ったり、この曲のように「テキサスへ帰る」、つまりはアメリカに戻るのはたやすいことではないという物語の補強にもなっていました。

さ〜て、次回ですが、9月8日(月)は僕が休暇を取りますので、9月15日(月)に評する作品を決めるべく、スタジオにある映画神社のおみくじを引いて今回僕が引き当てたのは、『ヒックとドラゴン』です。「実写映画化!」という謳い文句を見て、「実写映画か?」となることも多い昨今ですが、この作品の場合はどんな出来栄えだろう? さぁ、あなたも鑑賞したら、あるいは既にご覧になっているようなら、いつでも結構ですので、Xで #まちゃお765 を付けてのポスト、お願いしますね。待ってま〜す!



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