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『ChaO』短評

FM COCOLO CIAO 765 毎週月曜、11時台半ばのCIAO CINEMA 8月25日放送分
映画『ChaO』短評のDJ'sカット版です。

舞台は大きな港を擁する都市。造船会社に務めるサラリーマンのステファンは、ある日突然、人魚の王国の姫チャオに求婚されます。「ふたりの結婚は、人間と人魚の友好関係を結ぶことになるのではないか」と、世間の耳目を集めます。社長を含めた周囲の後押しとチャオの猛烈アタックに流され、実際に結婚することになったステファンは、蓋をしていた記憶の中に、ふたりの出会いがあったことを思い出していきます。
 
ステファンとチャオの声は鈴鹿央士と山田杏奈が務めたほか、山里亮太シシド・カフカ土屋アンナ、くっきー!などが声優陣にクレジットされています。監督は、これが初メガホンとなる青木康浩。プロデュースは、STUDIO4℃の田中栄子。今年も6月に開かれたフランスのアヌシー国際アニメーション映画祭では、審査員賞を獲得しました。
 
僕は先週金曜日の朝、MOVIX京都で鑑賞してきましたよ。それでは、今週の映画短評、いってみよう。

すべてが過剰なアニメです。企画のスタートは、9年前。『マインド・ゲーム』や『鉄コン筋クリート』『漁港の肉子ちゃん』など、国内外から高い評価を受け続けるSTUDIO4℃の田中栄子社長が、アンデルセンの『人魚姫』をモチーフにしたボーイ・ミーツ・ガールもののプロットを手に、青木監督を呼び出したことでプロジェクトが動き出しました。田中プロデューサーの意気込みは相当なもので、「アニメ表現に残された可能性を探りながら、世界に発信できるまったく新しいオリジナル作品を創ること」。受けて立った青木監督をはじめ、キャラクターデザインと総作画監督を務めた小島大和、美術監督の滝口比呂志ら精鋭たちは、作画枚数10万以上という異常なまでのエネルギーで、この作品を完成させました。以下、具体的にその過剰さを挙げていきます。

© 2025「ChaO」製作委員会
上海でロケハンしたという美術造詣は、その描きこみが過剰です。電線、洗濯もの、窓の影、看板、水しぶき、街路樹の葉っぱの陰影などなど。手描きのぬくもりや粗さとデジタルのツルッとした質感が同居していて、それがまた舞台となる大都会の古い町並みと高層ビル、レトロと近未来の混在と一致しています。キャラクターは、頭や身体のパーツがバラバラで遠近感がおかしくなりそうなんだけれど、この映画の中ではそれがひとりひとりの個性として不思議なバランスで成立しています。セリフもろくにないようなキャラクターにまで忘れられない独自性が宿っていて過剰です。音楽は、シーンごとに切り替えるのではなく、シーンを平気でまたいでいくため、映画全体に奇妙なドライブ感を与えていて過剰です。たとえばインドネシアの伝統的な楽器ガムランシンセサイザーと混ぜてみたり、1曲の中でテンポをコロコロ変えてみたりと、これまた過剰です。シーンの切り替えが相当早いのに、その中に本筋とは関係ないギャグがかなりの確率で盛り込まれていて、少なくともその場では脈絡がないように感じられ、過剰です。そもそもの語りの構造も、雑誌記者が主人公の現在のステファンに取材で話しを聞きに行くという枠組みの中で、現在のステファンが過去を回想し、その回想の中で過去のステファンがさらにまた過去の少年期を回想するという入れ子構造になっていて、過剰です。

© 2025「ChaO」製作委員会
青木監督は、アヌシー国際アニメーション映画祭で観客にこんな発言をしたそうです。「『混ぜるな危険』という成分がありますが、この作品はごちゃ混ぜです」。これは言い得て妙だと思います。僕が鑑賞中や鑑賞後に振り返りながら連想した作品も、ごちゃ混ぜでした。Dr.スランプ、アラジン、美女と野獣、リトル・マーメイド、スター・ウォーズ、ポニョ、うる星やつら鏡の国のアリス少林サッカーバッファロー'66などなど。いろんな要素が雑味・えぐ味込みでドッキングされたバロックなアニメです。実験的というか、もはや実験映画そのものと言って良いかもしれません。異文化共生というテーマがはっきり出た先進的な物語でありながら、ひたむきに男性ステファンに尽くす女性チャオのような、古典的というよりも時代遅れな純愛ラブコメにもなっていて歪です。実は脚本のクレジットがないんです。青木監督、田中プロデューサーのふたりを軸に、スタッフたちが一緒になって編み出したのでクレジットできないということなのでしょうが、正直なところ、ストーリーが一番の弱みになっていると言わざるを得ません。よってたかってアニメ映画の可能性を追求しまくった結果として、ストーリーが置いてけぼりを食った印象なんですね。調理法も技術も器も盛り付けも凝りに凝ったのに薄味の料理ができてしまった感じがします。そういう評価をしたうえで、僕はこう言いたい。見る人を選ぶ作品でありながら、ぜひ大勢に観てたまげた思いをしてもらいたい。STUDIO4℃の気概に満ちたこのショーケース的実験作が、また次なる傑作につながることを映画ファンとして願っています。
主題歌は、20年ほど前に青木監督がとあるプロジェクトで一緒になった倖田來未の書き下ろしです。曲のタイトルも、ChaO!

さ〜て、次回、9月1日(月)に評する作品を決めるべく、スタジオにある映画神社のおみくじを引いて今回僕が引き当てたのは、『ランド・オブ・バッド』です。アメリカ海軍が全面協力したという、48時間の仲間の救出劇。指示するベテラン・オペレーターのラッセル・クロウに、孤立した新人軍曹のリアム・ヘムズワースという座組ですね。観客が最前線に放り込まれるような作品ということで、こりゃ、手に汗握りそうです。さぁ、あなたも鑑賞したら、あるいは既にご覧になっているようなら、いつでも結構ですので、Xで #まちゃお765 を付けてのポスト、お願いしますね。待ってま〜す!



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