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『片思い世界』短評

FM COCOLO CIAO 765 毎週月曜、11時台半ばのCIAO CINEMA 4月14日放送分
映画『片思い世界』短評のDJ'sカット版です。

東京の古い一軒家で一緒に暮らす3人の女性たち。美咲、優花、さくら。20代前半の3人は、仕事に大学にバイトにとそれぞれ精を出しながら、楽しく穏やかに日々を重ねています。そんな中、美咲には、通勤で乗るバスで見かける気になる人がいるということがわかり、優花とさくらは告白を勧めるのですが、美咲は「そんなことできるわけない」と消極的です。
 
脚本は、少し前に『ファーストキス 1ST KISS』も評したばかりの坂元裕二。そして、監督はその坂元裕二『花束みたいな恋をした』でタッグを組んだ土井裕泰です。主人公の3人の女性を広瀬すず杉咲花、清原果耶が演じたほか、横浜流星田口トモロヲ西田尚美なども出演しています。
 
僕はおととい土曜日の朝にTOHOシネマズ二条で鑑賞してきました。それでは、今週の映画短評、いってみよう。

さっきのストーリー紹介を自分で書いていて、これはどう読んだって恋愛映画だよなって思いましたよね。若い女性の話で、バスで見かけるだけの気になる男性がいて、ルームシェアしている他のふたりから、「コクっちゃいなよ」、「アタックあるのみ」、みたいなことを言われて、当の本人は「そんなのできるわけないじゃん」という反応を示す。世界中で繰り返し語られてきた青春映画の定石じゃないですか。そして、またバスに乗る。妹分のハキハキした女の子がバスに乗り込んで、「どれどれ」とその気になる青年を検分すると「私はむしろあいつアホ毛が気になるわ。整えりゃいいのに」と言うばかりか、大胆にもスマホを覗き見て「あいつ、アホ毛のくせに彼女がいるっぽいよ」と報告する。これって、ラブコメの流れじゃないですか。しかも、誤解を恐れずに言ってしまえば、ドタバタした安っぽいラブコメにすら見える冒頭です。でも、僕はこうも思いながら見ていました。実写の映画だから、そりゃリアルに作られてはいるんだけれど、なんか違和感が拭えない。現実っぽいんだけれど、どうも3人の女性の暮らしが地に足ついていない感じがするというか、現実から少し遊離している感じがする。

(C)2025「片思い世界」製作委員会
そして、しばらくすると、ここではネタバレを避けるために触れませんが、映画のプロローグで描かれた3人の女性が12年前に参加していた合唱団の場面とリンクする驚きの事実が表面化してきます。なるほど、僕の感じた違和感の正体はこれだったのか。そして、タイトルの「片思い」という言葉の意味が、恋愛の枠を超えて、もっと広く深いものへと発展していくことになります。3人それぞれにそれぞれの片思いが登場し、それらが噛み合うことで、僕たち観客が生きるうえで絶対に無視できない、生きることと死ぬことそのものについても思い巡らせるような展開をしていく。これは、かなり鮮やかでした。

(C)2025「片思い世界」製作委員会
脚本の坂元裕二は、公式パンフレットでのインタビューでこんな発言をしています。「いまの日本の映像業界はアニメ作品に支えられて成立していますよね。実写作品はアニメが描いているものから逃げずに、ちゃんと向き合うことを意識して作らないといけないんじゃないかって思ったんですよね。多くのアニメには目的意識の強い設定と物語があって、実写もそこを明確にしないとアニメと向き合うことにはならない。『静かな日常を描くものではなく、世界に抗う物語でなければいけない』」。
 
坂元裕二は誰もが知るように連ドラの名手としてキャリアを築いてきましたが、ここにきてオリジナル脚本で映画業界にどんどん貢献していますね。なるほど、確かにどの物語にも、細かい展開を積み上げて補強していく連ドラではできない、映画の尺と予算とスケールでこそ活きるような設定なり仕掛けがほどこされている印象です。今作でも短評でそこに触れてはいけないレベルでの大仕掛けだし、それが作劇上の遊びにとどまらず、作品のテーマと分かちがたく結びついて、忘れがたい感動を呼ぶところまで機能するというのは、さすがと言わざるを得ません。

(C)2025「片思い世界」製作委員会
ただし、『ファーストキス 1ST KISS』もそうだったように、大胆かつファンタジックな設定を採用することで生じてしまう物語上、そして映像上の軋みが散見されることもまた事実です。たとえば、優花の母親との再会が重要なモチーフになっていきますが、そんなのもっと前に起きていてしかるべきだろうし、それはあの典馬という男性にしたってそうです。彼女たちの移動手段の設定もわかるっちゃわかるんだけど、「じゃあ、こういう場合はどうなんだろう」って考えてしまうことがノイズになることは否めないなと思いました。
 
あと、これは僕個人が受けた印象かもしれないですが、あのとある罪を犯したキャラクターの扱いとか、優花の母親がとった行動については、かなり問題含みなのに、その後があっさりしすぎていて、かなり強引に見えるし、そこに物語としての都合が垣間見えて倫理上どうだろうかと疑問も大いに残りました。

(C)2025「片思い世界」製作委員会
一方、映像面では、目を見張る表現がありましたよ。美咲と気になる人がバスの後ろの方に乗っているところでトンネルに入るところなんて、トンネルに象徴的な意味を持たせていましたし、優花の母親の車が海の近くのだだっ広い駐車場に停車している時の切実な場面では、あの車の少し開いたドアに母親の表情が映っていて人間の二面性を表していてお見事でした。
 
といった具合に、僕としてもシャッポを脱いだり、またそのシャッポを被り直したりと忙しいところはありましたが、こうした坂元裕二の意欲的な仕掛けとそれをブーストする土井裕泰の演出が相まって、鑑賞者の人生観や死生観、そして生きていて社会に対して多かれ少なかれ感じる疎外感や生きる意味について問い直させる力作であるという評価はしておきたいところです。事前にいろいろ調べるようなことはせず、ポンと映画館に飛び込んでノンストップで楽しむべき作品です。
劇伴はムーンライダーズ鈴木慶一で、バンドは劇中で出演して演奏も披露していて、なかなか楽しいです。リアリティーがあるようでないようでというバランスが物語にもぴったりでした。
 
ラジオでオンエアしたのは、主人公たちが参加していた合唱団のレパートリー『声は風』。合唱曲のアレンジをポップスに寄せ、この曲でデビューを飾ったグループFYURAのバージョンでした。

さ〜て、次回、4月21日(月)に評する作品を決めるべく、スタジオにある映画神社のおみくじを引いて今回僕が引き当てたのは、『BETTER MAN/ベター・マン』です。ロビー・ウィリアムズの半生をミュージカル映画化ということなわけですが、それにしても、なぜお猿さんなんだろうか。同じく、ファレル・ウィリアムスは、なぜ伝記映画がLEGOなんだろうか。面白いと思いつつ疑問も持っていただけに、とりあえず前者の謎を明かしに行ってまいります。さぁ、あなたも鑑賞したら、あるいは既にご覧になっているようなら、いつでも結構ですので、Xで #まちゃお765 を付けてのポスト、お願いしますね。待ってま〜す!



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