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『野生の島のロズ』短評

FM COCOLO CIAO 765 毎週火曜、朝8時台半ばのCIAO CINEMA 2月25日放送分
映画『野生の島のロズ』短評のDJ'sカット版です。

絶海の無人島に流れ着いたアシストロボットのロズ。都市生活者のサポートをプログラムされた彼女は、依頼者を探して島をさまよううちに、動物たちの習性や言葉を習得し、徐々に島に適応していきます。ある日、雁の卵を見つけて孵化させたロズには、生まれた雛鳥と触れ合っているうちに、ロボットとしての変化の兆しが見られるようになります。狐のチャッカリやオポッサムのピンクシッポなど、島の動物に助けてもらいながら、ロズはキラリと名付けた子育てという仕事をまっとうしようと奮闘します。

野生のロボット ヒックとドラゴン (字幕版)

原作は、アメリカの作家ピーター・ブラウンによる児童文学「野生のロボット」シリーズ。ドリームワークス・アニメーションによる制作で、監督は『リロ&スティッチ』や『ヒックとドラゴン』のクリス・サンダースが務めました。日本語吹き替え版のキャストは、ロボットのロズを綾瀬はるかが演じた他、柄本佑鈴木福いとうまい子らが参加しています。アニー賞では長編作品賞、監督賞など9部門を獲得していまして、発表が近づいている第97回アカデミー賞では長編アニメーション賞や作曲賞、音響賞にノミネートしています。
 
僕は先週金曜日の昼、TOHOシネマズ梅田で鑑賞してきました。それでは、今週の映画短評、いってみよう。

子育ての物語であり、血縁に限らない家族や共同体の話、そしてAIの話でもあります。それぞれにはよくありそうな話のパーツをうまく組み立てたロボット主役の映画なんですが、まず冒頭、舞台となる無人島にロボットが流れ着くところ。配送の途中でトラブルがあったのか、もちろん本来あるべき場所じゃないところに流れ着いてしまったロボットの目線で始まるのが面白いんです。波が洗う岩場の景色がどうも上下左右と少し歪んていまして、広角レンズを通り越して魚眼レンズに近い画面です。なんだろう、これはと思ったら、ショットが切り替わって、今度はロボットが映し出されます。そこで、アッと気づくんです。ロボットの丸いカメラ内臓の目から見た世界だったんです。ロボットから見た世界と。自然の側から見たロボット。なるほど、これから展開する映画のふたつの視点をさりげなく示す導入になっていて期待させられました。断崖絶壁に大きな波が打ち寄せて危ないからと、ロボットはその崖を登ろうとするとうまくいかない。見ると、カニが横歩きで崖を登っているのを真似て一緒に上まで到達。ロボットの適応能力の高さを示すシーンであると同時に、「ありがとう」とカニに伝えようとしたところで、その小さなカニはどこからともなく飛んできた鳥にあっという間に捕食されてしまってびっくり。ここは食物連鎖が容赦なく支配する野生の島であることも示していました。いきなりクリス・サンダース監督の無駄のない見事なストーリーテリングが発揮されています。

Ⓒ2024 DREAMWORKS ANIMATION LLC.
そして、いわゆる3DCGばきばきというよりは、絵画的な筆のタッチが反映されたような、動く絵画とでも言うような自然描写とロボットのツルリとした人工物との対比がすばらしくて、こんな描き分けができてしまうアニメーションの最先端がこれほど堪能できるなんてとワクワクさせる技術に興奮します。そんな絵が序盤はとどまることを知らないドタバタの活劇的なダイナミックなアクションとともに楽しめるもんだから、忙しいわ楽しいわ忙しいわ。しかも、ただドタバタしているだけじゃなくて、アクションごとにキャラクターも出していくし、島の特性も示すし、ロボットの機能も続々と登場するという具合に、しっかり話を進めていくんですから、脚本もうまければ、演出も見事に無駄がない。もう完璧でしょうというレベルで息つく暇がないほどです。このあたりは、もはや誰も否定できないんじゃないですかね。ものすごいものがあります。詳しく触れないけれど、森の環境音や多くの動物の鳴き声が一斉に聞こえる音まわりの設計も申し分ないですよ。映画館の醍醐味が味わえます。

Ⓒ2024 DREAMWORKS ANIMATION LLC.
こうした現状最高峰の技術の粋を集めて語られるストーリーは、王道でありながら、攻めた部分もあって、その組み合わせがユニークでした。ロボットは、序盤の島の自然探索の中で、動物たちから見知らぬ謎の生きものとして爪弾きにされて結構散々な目にあいます。そこでロボットはひょんなことから雁の卵を孵化させるんですね。想像通り、ひなは最初に目にしたものを親と思うわけで、親のいないその子を育てていきます。人間のサポートを使命としたロボットが、子育てという仕事を授かるわけです。そこからの子育ては、嫌われ者の狐や子だくさんのオポッサムたちに助けてもらいながら、動物の世界に置き換えつつ子育てあるあるを見せていく一連のシーンは、経験のある方はその苦労と喜びを必ずや喚起されるだろうし、そうでない方も自分を育ててくれた人のことを考えるに違いないところなんですが、驚くのが、思った以上に巣立ちのシーンが早くやって来ることで、むしろそこからの渡り鳥たる雁の行方と、野生の王国に残ったロボットと他の動物たち、さらにはここが秀逸なんですが、当然ながらどこかにいるロボットの製造者たる人間たちの「姿ではなく気配」がないまぜになっていくところに、この物語の興味深さがあります。主人公ロズを回収しようと別のロボットたちが島にやって来るシーンにいたり、僕はハッとしました。あんなに最初は人工物にしか見えなかったロズが、身体に苔を生やしたり汚れたりして、もはや自然に溶け込まんとしていることにです。ここでも、この作品の画作りの巧みさに唸らされます。かくしてロズはプログラムにきっちり即するばかりか、自らの意志でもって自分の行動を決めていく自我と呼ぶべきものを獲得していきます。それは、この種の物語がはらむロボットのモラルハザードというよりも、人間が忘れかけているようなヒューマニズムに訴えるところがあって、涙腺を刺激されます。

Ⓒ2024 DREAMWORKS ANIMATION LLC.
と同時に、僕は実はここまでを半信半疑で観ていたということも告白しなければなりません。あれだけ厳しい野生の掟があったじゃないか、と。狩る狩られる、食う食われるの関係があって成立する食物連鎖の中で、ロズが動物たちの言語を習得したっていう設定は飲み込みづらいだろうとか、いくら島全体の危機が訪れたところで、ロズがノアの方舟よろしくみんなを一箇所に集めて誘っていく神みたいな行動はちょっととか、だいたい性別を超越した存在のはずのロズが子育てを始めたらママになるってなんだよとか、思っていたんですが、それこそ神話のようにしてこの映画の中では「物語」というものの存在意義が提示されるところがありまして、そこで僕は腑に落ちたんです。なるほど、これは世界がバラバラになった生き馬の目を抜く現代に産み落とされた神話なのだと。そう考えた時に、あの動物たちにここで描かれていない人間の姿が重なって見えたし、AIロボットとの明るい方の未来というのも描かれていることがわかってくる。これはちょっとすごい映画体験でした。これだけではまったく語りきれていないですが、あなたにもぜひ観てほしい堂々のアニメーションです。
 
映画のために書き下ろされたこの曲は、キラリが飛ぶことを覚え、群れに加わっていくシーンを盛り上げていました。

さ〜て、次回2025年3月4日(火)に評する作品を決めるべく、スタジオにある映画神社のおみくじを引いて今回僕が引き当てたのは、『ブルータリスト』です。アカデミー賞に絡む作品だけに、この時期に観るというのはベストタイミング! ではあるんですが、これはスケジュールをしっかり組む、というか、組み直さないと。だって、休憩込みで4時間弱ありますからね。体調管理もしつつ臨みます! さぁ、あなたも鑑賞したら、あるいは既にご覧になっているようなら、いつでも結構ですので、Xで #まちゃお765 を付けてのポスト、お願いしますね。待ってま〜す!



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