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『ファーストキス 1ST KISS』短評

FM COCOLO CIAO 765 毎週火曜、朝8時台半ばのCIAO CINEMA 2月18日放送分
映画『ファーストキス 1ST KISS』短評のDJ'sカット版です。

結婚から15年。子どもはおらず、倦怠期を迎えていた夫婦。もう離婚しようというタイミングで、夫の駈(かける)が事故で亡くなってしまいます。残された妻カンナは、仕事に打ち込んで割り切れない気持ちをやりすごしていましたが、ある夜、突然タイムトラベルしてしまいます。戻った過去は、夫の駈に出会う直前。そこでカンナはまた駈に恋をします。でも、そのままでは、結局15年後に彼を失ってしまう。カンナはタイムトラベルを繰り返しながら、駈が死なない方法を考えます。
 
坂元裕二のオリジナル脚本を『ラストマイル』塚原あゆ子が監督しました。主人公のカンナを演じたのは松たか子。夫の駈はアイドルグループSixTONES松村北斗が担当。他にも、リリー・フランキー吉岡里帆、森七菜などが出演しています
 
僕は先週木曜日の午後、TOHOシネマズくずはモールで鑑賞してきました。それでは、今週の映画短評、いってみよう。

思い出したのは、僕の大好きな映画『アバウト・タイム 愛おしい時間について』です。あれは、タイムトラベルができる家計に生まれた主人公がその能力に気づいたところから、その技術をなんとか恋愛に活かせないかと奮闘する物語でした。今作における坂元裕二脚本が奮っているのは、結婚してから15年という絶賛倦怠期のふたりを主人公に据えたことです。カケルが亡くなったのは、完全に行き詰まったふたりが離婚届を出そうとしていた日。妻のカンナは事故の一報を受けてから、それは大変だったことでしょう。マンションで家庭内別居状態だったんですが、彼のテリトリーだった部屋に遺影を置いて線香があげられるような状態にはしているものの、「せめて離婚届を出してからにしてよ」って言うほどに冷めていたわけですね。自分の気持ちとやるせなさに折り合いをつけるためにも、デザイナーとして今は演劇の仕事に携わっているので、夢中で仕事に打ち込んでいる。それにより、家も明らかに掃除整頓が追いつかなくなっていて、とっ散らかっています。そんなタイミングで、本人の思惑ではなく、ただただ偶然にタイムトラベルしてしまうというシチュエーションがユニークだなと思います。時をかける中年女性です。とこだ、ここは? 暑い。さっきまで真冬の夜だったのに、陽光眩しい夏で場所は富士山の見える自然たっぷりな町のリゾートホテルのそば。あ、ここは私がカケルに初めてあった、あの日、あの時、あの場所だ。であれば、カケルが… いた。まだ29歳のカケルが、いた。ということになるわけですが、ここから意外なことに、そしてこの作品の大きな魅力でもあるんですが、どっぷりロマンティックなるわけでもなく、とても軽やかなスクリューボール・コメディのような手触りにシフトしていきます。タイムトラベルは、期間限定ではあるけれど、どうやら何度でも繰り返すことができるらしいと悟ったカンナは、自分の納得のいくまで過去の改変に向けて波乱万丈のトライアルを続けていくのを楽しむという流れです。

(c)2025「1ST KISS」製作委員会
少なくとも、結婚までして、曲がりなりにも15年の苦楽をともにした間柄ですから、文字通り命がかかっているわけですから、なんとかならないかと彼女が必死になるのはわかるんですが、僕はカンナの気持ちの切り替わるところ、つまり冷めまくっていた夫に対して、再び熱を帯びていく変化については、正直なところ映画としてうまく描けているとは思いませんでした。スクリューボール・コメディになっていくその前に、僕はカンナがはっきりカケルに改めて惚れる、惚れ直すという心の動きが手に取るようにはわからなかったんです。それよりも、ドタバタの喜劇に切り替わっていく方が強く意識されてしまって、物語の流れが否応なくそうなっているのはわかるものの、そこの心理描写はもっとあるべきではないかと感じました。坂元裕二脚本は印象的なセリフでグイグイ物語を引っ張るだけに、映画的な演出として恋に落ちること、あったはずの恋の始まるときめきをはっきり仕掛けとして用意すべきだったということです。それぐらい、あまりにもスムーズだったということですね。

(c)2025「1ST KISS」製作委員会
なんてことも思ったものの、そこさえクリアしていけば、そこはもう坂本脚本のうまさが活きていて、餃子にしても靴下にしても、春のパン祭が開催されているかのような朝食描写も、とにかく見事に回収されていくのがお見事というのは認めざるを得ないです。何より、この時代に恋って素敵だなと素直に思えるような、ほとんどカケルとカンナふたりのみに焦点が当たったような恋愛劇を展開しているのは貴重だなと思います。ボタンはかけちがえる可能性はそりゃたくさんあるけれど、好きな相手と生活をともにすること、相手の喜びを自分のもののように素直に喜べることを描くドラマって少なくなっているような気がするもので。確かに、恋愛は相手の良いところを見つけていくことで、結婚生活は相手の欠点をあげつらっていくことかもしれない。でも、それを見せ玉にしつつ、結婚生活を充実したものにしようと人は努力次第でできるんだという可能性にかけた物語であることに、僕は感動しました。ファンタジックにも見えるけれど、それを言えば、そもそもがタイムトラベルをベースにしたファンタジーなわけで、ドキュメントではないんです。結果的に、僕は『アバウト・タイム 愛おしい時間』同様、恋愛のすばらしさを物語に託す意図と意義を評価します。リリー・フランキー演じる学者の立ち居振る舞いであるとか、娘の吉岡里帆が学会についてきていて、カケルの進路に口出しをするなんて流れは、舞台となった2009年の時点でありえないだろうとか、カケルのあの手紙がえらく長いとか、結局改変できることとできないことの違いがよくわからないモヤッとするところがあるとか、いろいろ思いもしたけれど、そんなのは先述した恋愛劇の意図を汲めば取るに足りないことです。主役ふたりの好演も好感度が高く、オリジナルの邦画作品として十分に評価できる1本でした。
 
そして、また優河の主題歌が素敵だったんですよね。何度も繰り返し努力を重ねたカンナのことを思い出しながら、それを繰り返し訪れる朝に重ねた程よい歌詞のバランスにも感心します。

さ〜て、次回2025年2月25日(火)に評する作品を決めるべく、スタジオにある映画神社のおみくじを引いて今回僕が引き当てたのは、『野生の島のロズ』です。アメリカのピーター・ブラウンによる児童文学「野生のロボット」シリーズを原作に、ドリームワークスがアニメ化した作品ですね。ロボットと自然。「プログラムを超えて生きる」とキャッチコピーにはあります。AIの進展が予想以上のスピードに感じられる昨今ですから、観ながら考えることも多そうです。さぁ、あなたも鑑賞したら、あるいは既にご覧になっているようなら、いつでも結構ですので、Xで #まちゃお765 を付けてのポスト、お願いしますね。待ってま〜す!



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