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『ビーキーパー』短評

FM COCOLO CIAO 765 毎週火曜、朝8時台半ばのCIAO CINEMA 1月21日放送分
映画『ビーキーパー』短評のDJ'sカット版です。

アメリカの片田舎で老婦人から土地を借りて淡々と仕事をする屈強な男性養蜂家アダム・クレイ。ある日、彼の恩人でもあるその老婦人が、フィッシング詐欺に引っかかって全財産をだまし取られたことを苦に、自ら命を絶ってしまいます。これが養蜂家クレイの逆鱗に触れ、彼は古巣の秘密組織の力を借りて詐欺の実行犯とその黒幕への復讐に動き出します。すると途端に蜂の巣をつついたような大騒ぎに発展。養蜂家クレイは目的を遂げることができるのか。
 
監督は、『ワイルド・スピード』などの脚本家としてキャリアをスタートし、『エンド・オブ・ウォッチ』『サボタージュ』『スーサイド・スクワッド』などを代表作とするデヴィッド・エアー。脚本は、『フェイク シティ ある男のルール』以来、久々のデヴィッド・エアーとのタッグとなるカート・ウィマー。養蜂家を演じるのは、ジェイソン・ステイサム。他に、ジェレミー・アイアンズジョシュ・ハッチャーソン、エミ・レイヴァー=ランプマンなどが出演しています
 
僕は先週木曜日の昼、MOVIX京都のドルビーシネマで字幕版を鑑賞してきました。それでは、今週の映画短評、いってみよう。

各種インタビューなんかに目を通していて、なるほどと思ったのが、この映画の脚本が生まれていくきっかけです。それが、物語が動くきっかけとリンクしているんですよ。脚本家のカート・ウィマーは、なんとご自身のおばあさんがやはり詐欺の被害にあって銀行口座をハッキングされた挙げ句の果てに無一文の状態で亡くなってしまったんですって。この作品ではリベンジ・アクション、復讐の物語だって謳われていますが、脚本家カート・ウィマーの怨念、義憤に駆られての執筆だったというのがすごいです。そうやって彼が生み出したのが、ビーキーパーという存在自体秘密裏の組織とそこで長年活躍したけれど今は実際に用法をしながら隠遁生活を送るアダム・クレイという男。話としては、ジェイソン・ステイサム演じる最強の彼に復讐を託してしまえばそれでOKなんですが、脚本の構造として面白いなというのは、詐欺にあって命を落とした女性の娘がFBIで働くバリバリの捜査官で、彼女が騒ぎを起こしていくことになるビーキーパー、アダム・クレイの捜査にも加わっていくことです。これによって語りの上でも視野が広がるし、カメラがクレイに張り付かないおかげで彼の動きは観客に隠せるし、自分の母親のために復讐してくれているクレイを追いかけるという心理的にも道義的にも複雑な状況に巻き込まれていく面白さが生まれるんですよね。性別は違いますが、彼女の存在が脚本家ウィマーの分身でもあるだろうし、観客の感情移入という意味でも重要な存在になっています。

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そして、面白いのがなんといってもビーキーパーという役割とその組織です。CIAはもちろん、FBIとも違うし、ましてや軍隊でもない。どうやら独立した精鋭組織のようで、蜂の比喩で言えば社会や国家をひとつあるいは複数の巣に見立てて、その秩序が乱れそうになった時に、優秀な働き蜂であるアダム・クレイのような男が手段を選ばずに動くわけです。ただ、彼は理由は明らかにされていませんが、もうリタイヤしているんですよね。そんな彼に事情は知らずとも優しく接してくれていた隣人である女性が命を落としたことに憤るという流れですが、話の入口はこんな風に、組織を抜けていた人物がまた動き出すという定番中の定番です。そこにさっき言った工夫、ツイストを加えているのがポイントです。設定としては、『イコライザー』であるとか『ジョン・ウィック』に似ていますから、デンゼル・ワシントンキアヌ・リーブスに加えてジェイソン・ステイサムが『エクスペンダブルズ』から加わってきたという感じですよ。そして、これはうまくすればシリーズ化できるんじゃないかと思いますし、批評家の評価も興行的なものも好調ということですから、実現する可能性大いにありでしょう。そして、僕も評価しているひとりです。

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何が良いのか。これまで触れてきたことに加えて、話のスケールアップの仕方が鮮やかなのでスカッとするやったった感がその分大きいのがひとつあります。ひとりの女性を死に追いやった詐欺事件というのは、もちろん重要なできごとではあるけれど、広い社会レベルで言えば、数ある小さな事件のひとつとしてほどなく忘れ去られてしまいそうなものかもしれません。そこに復讐を仕掛けるという動機から始まったものが、もう倍々ゲームで規模が大きくなっていって、その諸悪の根源にまさかのアンタッチャブルがあったという驚き。そして、日本でも多発するこうした詐欺事件の悪質さと犯人グループが構築するシステムの複雑さというのがものすごくリアリティーのあるものになっているから、本当にこんなのやっつけられるべきという勧善懲悪の良さが無理なく発揮されていること。しかも、劇中で言及される働き蜂の習性、本当に問題がある場合には働き蜂が女王蜂に食って掛かることがあるのだという習性が物語とリンクしてくる痛快さがあります。やり方は非常に問題なんですけどね。

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そして、もうひとつ作品の面白さを支えるのがジェイソン・ステイサムという役者の存在です。アダム・クレイというビーキーパーは、はっきり言いますが人類最強レベルなんで、基本的には見ていても「負けるかも」なんてヒヤヒヤはありません。このあたりは、デヴィッド・エアー監督のヒーローものに対する考え方が反映されています。エアー監督は、悩んだり負けそうになるヒーローが嫌いなんですって。ヒーローたるもの、無敵であれという考え方。だから、クレイもそうです。でも、それは面白いのか。面白いんです。彼がどう勝ち進むのかという手法や方法にわくわくするからですね。もちろん銃火器も使うんですが、身の回りの道具を活用したり、潜入する建物の構造を利用したり、車やエレベーターのそんな使い方がありましたかっていうアイデアに見応えがある。後半に行くに従って、あんた誰でも彼でも見境なく攻撃し過ぎだろうってのもありますが、そこはアクションというジャンルの御愛嬌。その上で、最後の最後に、観客である僕たち一般人が肩入れして見ていた例の老婆の娘と向き合うわけです。いくら復讐心があっても法律という社会のルールや枠組みに違反してはダメだという彼女の言葉に対して、「その法律が間違っていたり機能しない場合にはどうするんだ」という対応が出てくる。それこそがビーキーパーの出る幕なんだという鮮やかな流れに脱帽です。ジェイソン・ステイサム、ここに来て彼の良さが最も出せる当たり役になるんじゃないでしょうか。続編も期待しています。

さ〜て、次回2025年1月28日(火)に評する作品を決めるべく、スタジオにある映画神社のおみくじを引いて今回僕が引き当てたのは、『サンセット・サンライズ』です。岸善幸監督、宮藤官九郎脚本、菅田将暉主演という座組でしっかり注目を集めているヒューマン・コメディ。笑いの中に社会を見通すような視点が入っているとか。さぁ、あなたも鑑賞したら、あるいは既にご覧になっているようなら、いつでも結構ですので、Xで #まちゃお765 を付けてのポスト、お願いしますね。待ってま〜す!



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