FM COCOLO CIAO 765 毎週火曜、朝8時台半ばのCIAO CINEMA 1月7日放送分
映画『モアナと伝説の海2』短評のDJ'sカット版です。

2016年に公開されて大ヒットを記録し、今も愛されている『モアナと伝説の海』の続編です。故郷の島を救い出し、禁じられていた海への航海が許されるようになってから3年。モアナは19歳になっていました。ある日、「かつて人々は海でつながっていたものの、人間を憎む神によって引き裂かれてしまった。海の果てにある島にたどり着けば呪いが解け、世界は再びひとつになる」という伝説を知り、モアナは島の仲間や風と海を司る半神半人のマウイとともに、新たな冒険の旅に繰り出します。
監督は、サモア人の血を引き、前作に参加するためにディズニー・アニメーションに入社したという経歴を持つデイヴ・デリック・ジュニアや、やはりサモア系のデイナ・ルドゥー・ミラー、そして、『ミラベルと魔法だらけの家』のオープニング曲の映像でアニー賞を獲得したジェイソン・ハンドの3人が務めました。前作の監督たち、ロン・クレメンツ、ジョン・マスカーという大御所のふたりから薫陶を受けて世代交代をした状況です。声は英語版、日本語版、ともに前作から主要キャストは続投という感じで、モアナはハワイ出身のアウリー・クラバーリョ、屋比久知奈(やびくともな)が、マウイはドウェイン・ジョンソン、尾上松也がそれぞれ演じています。
僕は先週火曜日の午後、MOVIX京都で吹替版を鑑賞してきました。それでは、今週の映画短評、いってみよう。
いきなり全然違う話をするようですが、僕は去年の夏休みを沖縄で過ごした時に、美ら海水族館で有名な海洋博公園で、海洋文化館を訪問したんです。そこでの展示がとても興味深くて、思いつきで入ったから時間が足りなかったくらいで、今度はあそこを目指して出かけてゆっくりじっくり学びたいくらいの充実度でした。沖縄、南西諸島というのは、近代以降の琉球王朝に続く歴史文化にスポットが当たりがちだし、それももっともなんですが、この海洋文化館では、日本や中国との関わりではなく、環太平洋の文化、特にポリネシアとの関わりの中に南西諸島を位置づけているのがユニークだったんです。それこそ、モアナの世界に登場するような船、衣服、そしてタトゥーの文化についても詳しく展示されていました。もっと近かったら、モアナ2を見る前後にあそこを訪問したいところです。それほどに、ポリネシアの島々を人間がどう移動し、どんな交流がなされ、どう影響し合ってきたのか、一般に日本では知られていないんですよね。それはアメリカでもそうでしょう。だからこそ、前作では、ディズニー初のポリネシアのプリンセスが登場して、半分神で半分人のマウイとの交流も取ってつけたような恋愛要素は排除することでバディ感を強調してっていうのがとても新鮮だったわけです。で、一応は1で完結していたんですが、あれはポリネシアのひとつの島の話だったわけで、広い海で繰り広げられるはずの交流というのは描けていなかったんですよね。なので、ディズニーとしては、もちろん、商業的なもくろみもありつつ、ディズニープラスで配信するシリーズとして続編企画をスタートさせたのが今作のおこりです。

そう思ってみると、なんか名残があるような気がしてくるんですよ、また。観れば誰もが認める海のアニメ表現はまたとんでもないレベルに細かくて美しいし、ミュージカル要素も多いから映像・音響ともに優れた映画館で味わう良さは認めますけれど、僕としては正直なところ、配信シリーズ企画をまとめて1本の劇場用長編という続編にしたことが果たして良かったのかと今でも思っています。そして、それこそが僕の今作における脚本上の不満点なんです。制作陣は、企画を始めるにあたり、ポリネシアの神話について、そして歴史について、入念な調査をしたんですね。今回の設定である、あの海ではその昔は人間同士、島同士の交流が盛んだったにも関わらず、それを疎ましく思った神の呪いによって島々が文字通り分断されている状態というのは、本当にあったんです。もちろん、神がどうのというのは神話レベルのことですが、歴史的にもなぜか交流が途絶えた時期というのが1000年という結構長いスパンであったそうです。サモアとかトンガでのことなんですが、そこからまた移動や交流が再開したというきっかけに土器があるというのも、今作を観れば、なるほどそのまんまやないかというのがわかります。モアナが外海へ出て土器を持ち帰るのが物語のスタート。これはうちの島にはない。ということは、誰かが島の向こう、遠い海の向こうにいるのだという好奇心と、なぜ交流が絶たれてしまっているのか、その分断を乗り越えてみたいというのが、今回のモアナの冒険の動機なんです。これは、僕はかなり整理して今喋っているので、なんとなくわかっていただけると思います。加えて、この10年ほどというのは世界的に分断がキーワードになってしまっているわけですから、それを克服する人間の物語はディズニーの打ち出すメッセージとしても頷けるわけです。

ただし、なんですよ。こうした前提が実際のモアナのあの島の世界に落とし込まれた途端に、僕に言わせれば相当に飲み込みづらくなってしまっているんです。まず、時代設定がモアナってぼんやりしているじゃないですか。現代ではなさそうだけど、じゃ、いつ頃なんだっけ? 3年前のモアナの冒険以来、なんか島の人々は充実している様子なんだけど、なぜモアナは、好奇心が抑えられないのはよくわかるとしても、命をかけてまで冒険に出向くのか、そのあたりの動機づけがピンとこない。神々と人間の関係というのも、どうも抽象的でわかりづらくて、結局のところ、旅の目的と手段が今ひとつ伝わりきらないまま旅に出てしまうため、途中からの様々な魅力あるはずのアクションシーンも、これってなんのために何をしているシーンなんだっけと混乱するんです。しかも、決死の旅に連れて行く仲間として、新キャラも登場するんだけど、たとえばこういう映画では珍しい年老いた農夫なんて面白いし、船の長旅において野菜の欠乏というのはビタミンの偏りを防ぐうえで相当大事だから重要なのも納得なんだけど、せっかくのこうしたキャラたちがことごとくモアナと再会したマウイのコンビの活躍の影に隠れて、ほとんどドタバタ劇のスパイス程度にしかなっていないのがもったいないんです。だから、結論として言っちゃえば、僕はですね、配信シリーズとして観たかった。もっと各エピソードを丁寧に、なんなら歴史的文化的な背景を教えてくれるミニ解説なんかもおまけて付けて描いていけば、誰もが楽しめるし学べる作品になったはずです。長編の続編というフォーマットには正直向いていなかったし、まとめ上げるには時間不足の突貫工事っぷりがわかってしまう脚本でした。僕はモアナというキャラ、好きなだけに、そこがもったいないと感じましたね。
迫力のあるコーラスワークと独特のリズム。音楽映画でもあるモアナ2から、日本版の主題歌をオンエアしました。
さ〜て、次回2025年1月14日(火)に評する作品を決めるべく、スタジオにある映画神社のおみくじを引いて今回僕が引き当てたのは、『I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ』です。これ、2003年という時代設定が絶妙で、時はレンタルDVDの全盛期。僕もどれだけお世話になったことか。その頃、カナダではどうだったのかを描く青春物語。さぁ、あなたも鑑賞したら、あるいは既にご覧になっているようなら、いつでも結構ですので、Xで #まちゃお765 を付けてのポスト、お願いしますね。待ってま〜す!
