FM COCOLO CIAO 765 毎週火曜、朝8時台半ばのCIAO CINEMA 12月31日放送分
映画『ヘヴィ・トリップII/俺たち北欧メタル危機一発!』短評のDJ'sカット版です。

フィンランドの田舎で人知れず腕を磨いてきたメタルバンドが、ノルウェーのメタルフェスに出演することを目指して繰り広げた珍道中を描いた5年前の作品『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』の続編です。ノルウェーで逮捕されて服役中のバンド「インペイルド・レクタム」メンバー4人。ある日面会にやって来た音楽業界の大物が、ドイツの巨大なメタルフェス「ヴァッケン・オープン・エア」に出演しないかと持ちかけます。これがメンバーの中に徐々に亀裂と軋轢を生み、バンドはやがて存続の危機に陥ります。
監督と脚本は、ユッカ・ビドゥグレンとユーソ・ラーディオのコンビで、前作と変わりません。劇中の音楽も前作同様、地元のメタルバンドが手がけた他、キャストもヨハンネス・ホロパイネン、マックス・オバスカなど続投。大きな変化と言えば、日本からBABYMETAL、スウェーデンからYEAR OF THE GOATなど、実在のバンドや音楽が物語世界に入り込んでいることです。
僕は先週木曜日の夕方、MOVIX京都で鑑賞してきました。それでは、今週の映画短評、いってみよう。
この物語の魅力は、はっきりしています。フィンランドの片田舎で、美しい自然には恵まれているけれど、これといった競争力のある産業があるわけでもない土地で、だいたいが顔見知りという限られた人間関係の中、はっきり言ってうだつの上がらない4人の若者が、自分の好きなものにのみ情熱を傾けてきた。その情熱の対象がメタルという音楽ジャンルだったから、バンドを組んでコピーに明け暮れてきた。ろくにライブを観たこともなければ、オリジナルを作るわけでもない。正直言って、モテない4人です。社交的でもないし、他に趣味もないのでメタル以外に誰かとシェアできる話題もないということもあって、いつも内向きで冴えない現実から逃避するようにして演奏に歌に打ち込んでいる。髪の毛はやたら長いし、音楽と無関係な職場ではしっかり浮いているしで、村人からは嘲笑の的になっている状況。それでも腐らず、メタルを愛する仲間を大切にしながら、とにかく練習に明け暮れているので、技術だけは無駄に高いレベルに達している。バンド名もない。未来もない。夢もない。そんな彼らに、ひょんなことからチャンスが舞い込んだことで、4人は夢を持ち、オリジナル曲を作り、インペイルド・レクタム「直腸陥没」というしっかりメタルマナーにのっとったメタル的にイカしたバンド名をひねり出したことで、人生が一変するかもしれない。って、喋っていても面白い。要するに、ギャップの面白さなんです。美しすぎる大自然と、まったくアコースティックでない音楽。夢なんて持っていなかった4人が急に色めき出してしまう。すると、地元でも話題になって、周囲の目も変わってくる。すべては、こうしたフリとその回収で成立している映画です。メタルという特殊なジャンルなだけに小ネタには事欠かないから、セリフも演奏もすべてが笑いに変わっていく。なにって、はっきりとギャップが楽しいんですね。フィンランドからノルウェーのメタルフェスに乗り込んでいくという、この辺境な雰囲気も楽しいです。村のライバルがフィンランドの歌謡曲ってところも音楽的にギャップがありすぎてゲラゲラ笑っちゃう。そう、フィンランド映画の系譜で言えば、同じく音楽使いの巧みなアキ・カウリスマキのオフビートなコメディーの雰囲気もあって、特にフリがきいてきて爆発する後半の畳み掛けときたら、腸がよじれるほど笑えて、4人の無鉄砲さと突き抜けっぷりにもう拍手を送ってしまう。いやぁ、すばらしいです。

ってのが、これ、すべて前作、一作目『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル』について言えることです。ところが、今作は、その良さがほとんどすべて失われて、笑いの多くは空振りに終わり、ネタのひとつひとつはちょこちょこ笑えるものの、全体として迷走していると言わざるを得ない状況になってしまっています。これ、今回の製作のきっかけにまず原因があると思うんですよ、僕は。監督のインタビューを読んでいると、前作の評判が世界のあちこちで良かったんだけれども、とりわけドイツでの盛り上がりが相当だったようなんです。なるほど、ドイツはジャーマン・メタルを例に出すまでもなく、ユニークなメタルが盛んな土地でもあるし頷けるなと思った監督は、それだったら今度はドイツのヴァッケンという実在のフェスをバンドが目指すという流れにすれば話が続けられるじゃないかと、彼らのゴールを先に決めて逆算して作っていったところがあるみたいなんですね。でも、前作の続きとなると、4人はノルウェーの刑務所に入っているし、そこからどうやってドイツへ行くんだということになります。そこで得意の突然その道の専門家がやって来るという、前作同様の降って湧いたチャンスを用意することになるんですが、その結果、物語的にはかなり無理が生じてしまっています。そもそも、前作のフェスのマネージャーというのは彼らを引き抜きにフィンランドへやって来たわけじゃない偶然性が面白かったのに、今回は狙い撃ちの必然なんですね。なおかつ、ノルウェーを起点にしたことで、前作のフィンランドの片田舎とのギャップという良さがほぼほぼ失われてしまうというのが残念で仕方ない。練習のシーンもなくて、脱獄からの追いつ追われつと、音楽業界の裏話的なネタに終止した結果、ストーリーラインはただただ荒唐無稽なことになってしまい、無理やりねじ込んだ細かいネタで場をもたせるということになっています。そのネタは、BABYMETALにしても、重低音過ぎて普段の会話が成り立たないボーカリストのいるレジェンドバンドにしても、いかがわしいロック博物館にしても面白いんだけど、所詮は目先の笑いにとどまってしまっているんですよね。だから、全体としてバンドがどこへ向かうのかというのが定まらないままになっているのがもったいないったらありゃしない。

なんて腐してしまいましたが、僕はあの4人が愛おしいことには変わりないですよ。とりあえず1は僕は積極的に擁護するほどに好きだし、2にしたってダメだと思いつつもバカすぎるなと失笑しつつも好きなシーンはそりゃあります。たとえば、出だしの無駄に美しくて迫力のある大海原の映像なんて、まだ何も始まっていないのに笑っちゃったし、前半の刑務所内のシーンは見どころがいっぱいだったと思います。その意味で、ありがとうインペイルド・レクトムと言いたいです。年末にこんなくだらなくて音楽愛に満ち溢れたお前たちに会えて良かったぜ!
そして、もちろん、主題歌をものすごい迫力でオンエアいたしました。
さ〜て、次回2025年1月7日(火)に評する作品を決めるべく、スタジオにある映画神社のおみくじを引いて今回僕が引き当てたのは、『モアナと伝説の海2』です。モアナと来ました。僕は前作もラジオで短評しました。結構好きなんですよね。ただ、今回はもともとTVシリーズ用に作っていたものを突貫工事で劇場用に切り替えたと聞いていて、それが吉と出るか凶と出るか、確認してきます。さぁ、あなたも鑑賞したら、あるいは既にご覧になっているようなら、いつでも結構ですので、Xで #まちゃお765 を付けてのポスト、お願いしますね。待ってま〜す!
