米情報機関トップ、ジョー・ケント氏が、イランとの戦争に反対して辞任した。 彼は、イランの脅威に関してトランプ大統領を誤解させたのはイスラエルとマスコミだったと批判している。
https://www.cnn.co.jp/usa/35245179.html
「イランが米国に対する差し迫った脅威であり、今攻撃すれば勝利への明らかな道が開ける」 という単純な筋書きでトランプ大統領を欺いたのだと、ケント氏は、勇気をもって述べている。
アメリカやイスラエルの権力機構の裏側には、大統領をどう踊らせるかのシナリオを書く「黒幕」たちが確実に存在するのだろう。彼らは関税問題や戦争において、「こうすれば、こうなる」という極めて単純なプロットを提示し、背後から糸を引く。しかし現実には、事態はそれほど単純には進まず、想定外の悪影響が瞬く間に波及する。
だから、トランプ大統領は、慌てて方向修正を試みる。
トランプ氏が不動産ビジネスで成功したのも、幹部から上がってきた案件を「単純思考」で即断即決してきたからではないか。こうした経営手法は、時代の風向きが上昇局面にあるときは爆発的な力を発揮するが、ひとたび風向きが変われば大失敗を招く。彼が大統領という権力の座に就けたのも、個人の能力というよりは、彼を担ぐことで利益を得る勢力が結託し、巧みな情報工作で国民の心を掴んだ結果と言える。
今回の戦争においても情報戦は続いており、国民は欺かれ続けている。だが、かつての関税問題がそうであったように、経済の実態が国民生活を直撃し始めれば、トランプ氏は再び慌てふためくことになるだろう。現代社会は、個人の想定を遥かに超えたスピードで「負の連鎖」が起きる構造になっているからだ。
かつて昭和の時代にもオイルショックなどの混乱はあった。しかし、現代のように原油先物価格が短期間でこれほど急激に乱高下するのは、今の時代特有の現象だ。昨年の「トランプ関税」で企業の実態を無視して株価が暴落した際や、今年アンソロピック社のAI「Claude」が発表された際、ソフトウェア企業の株価が一斉に沈んだのも同質の現象である。
プログラミング業界では以前からノーコード開発が推進されていたが、市場の反応にそんな裏事情は関係ない。今の株式・先物市場には、特定の情報に対して「人間の判断」よりも早く、即時に反応するアルゴリズムが組み込まれている。ネガティブな情報が出た瞬間、システムが連動して一挙に価格を押し下げる。そこには、人間にじっくりと考えさせる「暇」など存在しないのだ。
トランプ氏の言動が二転三転するのは、本人の気質もさることながら、「こうすれば、こうなる」という従来のシミュレーションが通用しないほど、現代の構造そのものが複雑化・高速化しているからかもしれない。
私たち一般人も、こうした構造を理解しておかなければ、目の前の現象にただ振り回されることになる。この構造への認識が薄い人は、投資ブームに乗って安易にNISAなどに手を出すのは危うい。この構造下での行動は、想定外のリターンをもたらす可能性もゼロではないが、それ以上に破滅的なリスクを孕んでいるからだ。
日本が取るべき道は、この構造の外側に立つことである。そのためには、「こうすれば、こうなる」という単純思考を超越しなければならない。
「今は『こうすれば、こうなる』と単純に考えて動く人が圧倒的に多い。ならば、その結果として次にどのような問題が起きるか」
そう一歩先を予測する「思考のクッション」を持つことが重要だ。そこに絶対的な正解はないかもしれない。しかし、考えようとする姿勢そのものが、パニックに巻き込まれないための「間合い」を生む。
現在、多くの人が戦争の早期終結を願っている。それは人として当然の願いだが、そこで思考を止めてしまえば、単純思考の枠から抜け出すことはできない。この戦争を引き起こしたメカニズムが、次にどんな負の連鎖を生むのか。それを問い続けること。
もちろん、いくら考えても正しい答えは見つからないかもしれない。それでも考え続けることで、次に何かが起きた時、「ああ、こういうことか」と、事態の本質をとらえやすくなるだろう。それが、パニックに陥らない間合いにつながる。
単純思考が集団パニックへと転化することが最も恐ろしい事態であることは、歴史が証明している。
中世の魔女狩りやファシズム、学園紛争の内ゲバなど、単純思考が招いた集団パニックの悲劇は枚挙に暇がない。
現代という高速化した社会において、私たちが最も恐れるべきは、思考を停止した先の「連鎖的なパニック」なのだと思う。
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