1. 『亜人の末姫皇女はいかにして王座を簒奪したか』
人間と亜人の一大戦争を、その戦争にかかわったさまざまな人物をとおして描いたファンタジー戦記。英雄的な死に様を見せた竜騎兵。伝説的な猫人の暗殺者。飛空艇を作った発明家。砂漠の悪徳商人。人間たちを聖戦に駆り立てた神官。亜人たちを煽動する雄弁な皇女。どいつもこいつもクセの強い、あまり善人とは言いがたい連中の一生が、列伝のようなかたちで綴られていきます。まさに「歴史」を読んだ、という気分にさせられる傑作でした。
2. 『スペースオーク』
新世代のなろう系スペオペ。遺伝子改造された人間がオークやらエルフやらと呼ばれている遠未来の宇宙を舞台に、かつての「地球人」の記憶を刷り込まれたオークの主人公が頭角を現していくストーリー。脳筋すぎてさまざまな問題を抱えるオーク社会の描き方が面白くて、SF的にも読み応えがありつつ、美しいオークの女王さまや姫さまなどのヒロイン陣も魅力的で、「スペオペ」としてのケレン味もたっぷり味わえました。
3. 『わらしべ長者と猫と姫』
いわゆる「現代ダンジョンもの」なんですが、主人公のスキルが「宇宙のどこかの誰かと品物を交換できる」というもので、そこから喋る猫や宇宙アイドルなんかがやってきて、宇宙の進んだ技術を活用したビジネスを起業して、巨大人型ロボットを作ったり、さらには宇宙海賊だとかのスペオペ要素も絡んでくるという、なんというか、90年代の落ちものラブコメ的な「ごった煮」感がとても楽しい作品でした。
4. 『貞操逆転世界のたばこ事情』
京都のクズ男子大学生と、それに寄ってくるダメ女たちを描いた底辺キャンパスライフもの。ただ、そこに「貞操逆転」のスパイスを振りかけることで、読者に「この世界の主人公は『男のバカ話にも付き合ってくれるタバコの似合うお姉さん』みたいなものか」という意識が刷り込まれ、なんなら主人公が本当にそういうお姉さんに思えてくるというバグを味わえるんですね。いわば実質的なTS百合ハーレムなんですよこれは。素晴らしい。
5. 『よって、初恋は証明された。』
進学校を舞台にした理系青春ミステリ。主人公はいかにも理屈っぽい陰キャだけど、ヒロインは明るく優しい人気者。理系キャラでこのヒロインみたいな性格ってちょっと珍しいな、と思っていたら、それがちゃんと本編に絡んでくるんですよね。何の気なしに流したところをきっちり消化してくれたというか、「こんなもんだろ」で済ませないあたりが丁寧な作品だと感じます。青春の苦悩が反映された謎解きも好みでした。
6. 『第七魔王子ジルバギアスの魔王傾国記』
五巻目にして主人公ジルバギアスの初陣が描かれたわけですが、これまでの蓄積を燃やし尽くしたような激動の展開と言いますか、ここまでやるのかという感想でした。何重にも絡みついたジレンマから決して主人公を解放しない、決して「なあなあ」にしないという思いが伝わってきて、本当に素晴らしかったです。
7. 『全員覚悟ガンギマリなエロゲーの邪教徒モブに転生してしまった件』
洗脳・拷問・人体実験など何でもありの「邪教」の構成員に転生した主人公が、それを内側から滅ぼすために教団に忠実な信徒のふりをする、という筋立ては『ジルバギアス』に近いんですよね。しかし本作の主人公は、特殊な能力も、特別な地位もない。ただのモブでしかない主人公が、化け物じみた幹部たちをどうやって倒すのか。本当に「覚悟ガンギマリ」なのは主人公だったという話です。
8. 『フルメタル・パニック! Family』
言わずもがなの名作の続編。結婚した宗介とかなめが、二人の子供とともに追手と戦いながら、住居を転々としていくホームコメディ。かつての短編シリーズに近い作りですが、あそこまでギャグに振っているわけでもなく、ある意味では大人になったというか、落ち着いたコメディになっています。「大人になってしまった」という哀愁すら漂っている。でもそれは決して悪いことじゃない。というほろ苦い味が良いですね。
9. 『冒険者酒場の料理人』
そのままでは食べられない迷宮の素材をあれこれと工夫して食べられるようにしていく異世界料理ファンタジー。『異世界刀匠の魔剣製作ぐらし』あたりと同じく一つのコンセプトを巧みに転がしていく手腕が見事。硬すぎる魚だのすぐ腐る肉だのを分析し、実験し、その調理法を解き明かしていくあたりはミステリ的な面白さもある。さらには子育て要素や恋愛要素もあって、それで描かれるキャラクターも魅力的でしたね。