身の周りのことを「この世の中」とか「社会では」とかわかったようにまとめてしまわずに、何が起きているのかを見る方が先だ。
棚と向かい合い、本を取ってページをめくり、表紙を戻してまたしまうこと方が、読む時間よりも長いのではないだろうか。その一連の動作は、読むことよりずっと前から自分の中に息づいていると思う。
いつまでもあった受付カウンター前の、飛沫防止のパーテーションが一枚なくなっただけで、こちらとの距離が急に近くなったと感じる。たかが一ミリもないフィルムにあった自分から相手へのけん制に気づく。ないのがあたりまえだったのが、あるのがあたりまえになってそちらに慣れてしまっている。